第41話 性格悪い人は改心しないらしい
ミーリアとしてはこんな人であっても、血のつながった姉ではあるので、救済の機会はあったほうがいいと考えていた。
もし前世の父親がまっとうに働いて、優しくしてくれていたら、どれだけ自分は救われたのだろうかと思う。父親が再起するチャンス――第三者から救いの手が差し伸べられていれば、真人間に戻っていたのでは? という可能性も考えていた。
(一言でいいから謝ってほしかったよね……)
何より、謝罪の言葉を聞きたかった。
ひどいことを言ってごめん。叩いてごめん。たったそれだけの言葉でいいので、言ってほしかった。
一方、クロエは複雑な表情でミーリアとロビンを見ていた。
クロエの中でロビンは、救いようのない女として認定されていた。
目に余る自己中心的な行動と、周囲に迷惑をかけても何も思わない図太さは、まったくもって理解できない。同じ人間なのかも疑っているほどだ。
そして、小さなミーリアを散々いじめてきたことが、一番許せなかった。
それでもミーリアの気持ちの問題があるので、こうして見守っている次第である。クロエは「もう終わりにしましょう」と言いそうになるのを、ぐっと我慢していた。
「誰に向かって言っているの?! 今すぐ魔法を解きなさいッ!」
ロビンが前のめりの姿勢のまま、目だけを動かしてミーリアを睨みつける。
ミーリアは答える代わりに指を動かし、魔法力でロビンの姿勢を直立に変え、かなしばり魔法を解除した。その代わり、ロビンをすっぽりと覆うドーム型の魔法障壁を展開する。透明なので目に見えない。
「ふん……最初から指示に従えばいいのよ」
ロビンは魔法障壁に気づかず、周囲の視線を注視しながら、ドレスのしわを直した。
まだ挽回の余地があると思っているのか「これくらいのことは領地でいつもありましたの」とうそぶいている。
「ミーリア。皆さまにお詫びして、私がロビリアだと言い直しなさい」
「……謝る気はありませんか?」
ミーリアはロビンの言葉を無視して再び問う。
もしかしてと、ほんの少し期待を込めて次女の瞳を見つめた。
だが、ロビンの解答は間髪入れない、あっけないものだった。
「は? なんでこの私が謝らなきゃいけないの」
「……私と、クロエ姉さまと、ジャスミン姉さまに散々嫌がらせをしたからです」
「嫌がらせぇ? バカ言うんじゃないわよ。あんたたちがチビのごく潰しだから私が教育してあげてたんじゃないの。私のおかげであんたたちは食ってこれたのよ。すべて私のおかげ。感謝なさい」
(いや……もう何言ってんの。イミフって感じなんだけど……)
期待をどこまでも裏切り、自己中心的な考え方をするロビンに呆れてしまう。
脳内でどう変換したら、今までの行為が教育になるのだろうか。まったくもって意味がわからなかった。
「皆さま、お聞きください。ミーリアは勘違いをしていたようですわ」
舞台俳優のように両手を広げ、ロビンが主賓席に注目している若い男性陣と高位の貴族たちを見回す。
「従姉を次女ロビンと勘違いするなんて、まったくひどい子だと思いませんこと?」
得意げに質問を投げるが、誰からも返事がない。
「第一、証拠がありませんわ。わたくしは間違いなく従姉のロビリアです。ロビンだと言うならば、その証拠を持ってくるべきでございましょう?」
グリフィス公爵家の席からは冷たい視線が飛ぶ。
ロビンは劣勢だとようやく感じたのか周囲を見回し、貴公子クリスのいるテーブルを見つけて駆け寄ろうとした。
「きゃあ!」
だが、走り出した途端に魔法障壁に阻まれ、ひっくり返って尻餅をついた。
(バカは死んでも治らないって言うけど、性格悪いのも一生直らないっぽい……)
悲しいけど、これが現実か……。
そんなことを思いながらミーリアは横を向いた。
「お姉ちゃん」
謝罪は完全にないと割り切り、クロエへ視線を飛ばす。
クロエが近くにいたメイドに指示を出すと、すぐに一人の男を連れてきた。
男は二十代前半で、ブロンドヘアを長く伸ばしてタキシードを着崩している、軽薄そうな人物であった。
ロビンはその男を見て驚愕した。
「あ、あなたッ……なんでこんなところに……!」
その男はロビンの浮気相手である、とある貴族の子息であった。
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