けものの脇道 ~シュウスケの奮闘~
俺はガタガタと震えながら外の様子を覗いていた。
こんな事なら俺も誰かと一緒に行けば良かった……でも、それじゃメガロが!
俺は頭を掻きむしりながら必死に状況を打開する術を考えていた。
しかし呪縛を解いた一件以来、徐々に戻ってきた恐怖という感情が思考を遮る。
「うぅ、もう何なんだよ……今まであんな修羅場でも恐怖なんて感じなかったのに!」
俺は情けなくも半べそ状態で、事の成り行きを見ているしかできない。
そう思っていた時だった――
「キャァァァァ!」
甲高い悲鳴がして、人型たちが一斉に動き出す。
俺がその先を見ると龍人族の子供が二人、人形たちに追いかけられていた。
小さい角と翼を生やした男の子と女の子……兄弟だろうか?
「な……何で戻って来てるんすか!」
俺はつい、小屋を飛び出しそうになったがその途端に足がすくむ。
そう言えば、俺は前の世界で子供を助けて、死んだんだった。
その結果がこんな厳しい世界に転生させられて、今までずいぶんと酷い目に遭ってきたのだ。
俺が再び外を見ると、人型たちは刃物や爪を振りかざしながら龍人族の子供たちを追っていく。
人型たちは素早く、子供たちは障害物を利用して逃げているが、すぐに追いつかれてしまうだろう。
「ううう……俺は一体どうすればいいんすか!」
俺の頭の中はグルグルと渦巻き、俺は膝をつく。
俺はそもそも、そんなに善人じゃない。
ルイさんみたいに誰かのために損得無しで動いたりできないし、フェルさんやリンみたいに力があるわけでもない!
俺はこの世界に来た時からエリザさんに守られて、今も皆に守られている。
そんな俺が誰かを助けるなんてできる訳が……
――でもっ!
次の瞬間、俺は中にあった斧を持ち、小屋を飛び出していた。
その時、俺は誓ったんだ――
こんな地獄みたいな世界で出会った大切な仲間たちに恥じるような真似は絶対にしない!
そんなことをするような自分なら守ってもらう価値……いや、一緒にいる価値すらなくなってしまう!
そんなのは絶対に嫌だ!
俺は勢いのまま子供たちの前に立ち塞がると、一心不乱に斧を振り回す。
「早く逃げるっす! 自分で言うのもなんだけど、長くは持たないっすよ!」
俺は唖然とする子供たちを促すが、目を逸らした斧が不意に軽くなるのを感じる。
前方に視線を戻すと、斧は持ち手を残してズタズタに切り裂かれていた。
「あ、あれ?」
「お兄ちゃん! 危ない!」
子供の声が聞こえたと思えば、体中に激痛が走る。
「グハァ!」
俺は血が噴き出す身体を押さえながらその場に膝をつく。
「なぜここに異界人がいる? ここは龍人族の村ではないのか?」
痛みに呻く俺に声が掛けられる。
俺がようやく顔を上げると、そこには人型を率いた人間の姿があった。
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