けものの寄り道 ②
けものの寄り道 ~追跡の影~
ルイ達がメガロを伴い湖を出発して2日後――
水がほとんど吹き飛んでしまった大地のくぼみに降り立つ影が1つ。
その影は近くに落ちていた瓶の欠片を見つけると内側を舐める。
「な~るほどね。支部の爆発、村で聞いた話、そして吹き飛んだ湖とこの味……ウェンドの野郎ってばバカな事したもんだね」
影の主は深いため息を吐き、欠片を投げ捨てると首輪に付いている小さな魔方陣に触れる。
「そろそろ連絡が来る頃だと思っていた。それで、どうだったかな?」
「そっちの推測通りってところかな。ウェンドの言ってることの大半は嘘っぱち。あれほど危ないって忠告した霊薬の出来損ないで自滅してんだよ。それにさ、このあたりの環境はかなり汚染されてるみたいだし……これで言い逃れができると思う方がおかしいって」
ケタケタという笑い声が辺りに響く。
しかし、その笑い声とは裏腹に会話の中には怒気が混じる。
「んで? 今回の一件に関わった奴らだけど、どうすればいいのかな?」
笑みが消え、鋭い口調で漏れた問にしばらくの沈黙が起きる。
「出来れば礼がしたいものだ……追えるか?」
「追えないこともないけど……あの新薬、使ってもいいかい?」
この提案に魔方陣の先にいる声は小さなため息を漏らした。
「あれはまだ生物実験が終わっていないものだが?」
「じゃあ実験してやるよ。この身を持ってね」
魔方陣の不安げな声を他所に取り出された小瓶には青緑に輝く液体が詰まっている。
「それにさ、ウェンドと違って俺っちがどんな無茶な実験をしても平気なのは知ってると思うけど?」
「どうせ、止めても無駄なことも知っている。後は勝手にやってくれていい」
魔方陣はその言葉を最後に光を失い、魔方陣から離れた手はそのまま小瓶の栓を開け放つ。
「さぁてと、この新しいかわいこちゃんはどんなお味なのかなぁ?」
影は嬉々として肩を弾ませると小瓶を傾け、一滴も残さずに液体を飲み干した。
舌に広がる多少苦々しい味とドロッとしたのど越しを楽しみつつ効果の程を待つ身体を液体から発せられる魔力が駆け巡る。
「うーん……味はまぁまぁ、のど越しいまいち、駆ける魔力は灼ける程っと」
そんな軽口を叩きながら影は止まっていた枯れ木を離れ、空へと舞い上がる。
「さてと、今回のお遣いはな~んか面白い予感がするねぇ! 待ちきれないってぇのぉ‼」
翼を広げた影はルイ達が去った方向にまっすぐに向かっていく。
この翼が運ぶのは幸運か苦難か……
一方で、ルイ達のけもの道は遂に王都へと至るのであった。
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