第2話 悪夢からの逃亡 上
私は日に日に増えていく、ママの傷を見て見ぬふりをした。あの日から、約1年。そして、逃げ続けて1年。エスカレートする傷を無視するには、さっすがにもぉ限界だ。私は今日こそママとお話をする。私は、自分ならできる、そう言い聞かせながら、話を切り出すタイミングを探していた。
「ねえ、ママ?ちょっといい?」
私の声は少し震えた。緊張していたのだろう。今自分が、初めて緊張しているのだと実感をした。そして、ママの様子を伺った。
「どうしたの、アイリス?」
ママのいつも通りの返事に私はほっとしつつも、勇気を振り絞って震えた声で言った。
「ママ、毎日毎日増えるその傷はなに?大丈夫なの?それ、パパがやってるんだよね?」
ついに私は、現実逃避をやめる事ができた。私はちゃんと向き合えてる。初めて自分に勝った。これが私。逃げ回っていた私はとても醜かった。そして、罪悪感に押しつぶされそうだった。どんな答えがかえってきても、私は受け止める。ママの口が動く。
「アイリス……あのねママね、…………パパにね…………」
ママはそこまで言って、泣き始めた。私はママが泣くなんて、予想外で少し動揺した。でも、私の決意はそう簡単に崩れたりしない。
「ママ、大丈夫だよ。私、ちゃんと聞くから。ゆっくりで大丈夫。どうしたの?」
ママはぽつりぽつりと、言葉を1つ1つゆっくりと、今まで溜め込んでいた物を吐くように言った。
「ママね、パパにいじめられているの。ママは、アイリスに弱い姿を見せたくなくって頑張ってきたんだ。」
私はそこまで聞くと、私は頼りにならないの?私じゃあダメなの?といった、思いで私の胸の中がぐちゃぐちゃになっていった。そして、またママの口が動く。
「ママね、こんな状況はねアイリスによくないと思うの。だから、最近ちょっとずつ荷物をまとめてるの。アイリス、一緒にママの母国に行かない?」
私は急な提案に頭のどこかで、フリーズする音が聞こえた。どおいうことなのか、よくわからない。ここを離れる?それって、ディーマン国を出るって事?頭がついて行かない。
「ママね、サーディー国って所からきたの。ママのおばあちゃん、おじいちゃんがいるから大丈夫よ!だから、一緒にきて!!!これは、アイリスのためでもあるの!」
私は今の生活を捨てる覚悟まではしてない。そんな事急に言われても困る。ママは私の、オドオドした態度で分かったのだろう。
「大丈夫よ。嫌なら嫌って言って。違う方法を一緒に考えましょう?2人でなら乗り越えられる。」
私は2人でならって、言葉が頭の中をぐるぐると回るのを感じた。本当に2人だけになる。それがママの選んだ答えなの?家族には目に見えない絆があるって信じていたのは、私1人だったのか?私は何か返事をしなければ、と思い頑張って口を動かした。
「分かった。でも、頭の中を整理するために時間をちょうだい……」
私はまとまらない自分の考えに嫌気がさした。今の生活は、おじいちゃん、おばあちゃんとも仲良くやってて、表向きはとても仲のいい家族。学校も楽しい。今の生活を手放すのは怖い。でも、ママの気持ちを考えるとパパと1回、距離を置くのはいいのかもしれない。早めに答えをだそう。
その日は、グルグルと頭の中にある物を整理しながら、きずけば眠りについていた。
そして私はいつも通り起きて、学校に行った。
「おはよう!」
私はいつも通りに元気よく挨拶をした。私は当然のように返事がかえってくると思っていた。だが、返事はおろか目すらも皆んな合わせようとしない。そして、1部のカースト上位の人達がコソコソ話し出した。
つづく
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