夢の始まり

星野 あずみ

第1話 悪夢の始まり

私はディーマン国のとある町に生まれた、ごくごく普通の女の子。大好きなママ、大好きなパパと3人で暮らしている。ママはとてもしっかり者でパパは社長。とても幸せな生活をしている。

「ママ!!!この本読んで!」

「もぉー、アイリス夜遅いからこれ読んだらすぐ寝るのよ?分かった?」

「はーい」

私は本を読んでもらっている間に、ウトウトしてしまって結局最後までお話を聞けなかった。

「今日も……」

あれ、ママと一緒に寝たはず…なんでママの声がするの?

「はぁー別にいいだろ?!」

パパの声もする。帰ってきたのかな?私もお話したい。寝起きでおどおどとした足取りで、ドアのすぐ近くまで行くと、

「私はあなたの事を思って、お酒ばっかり飲んで体に悪いって言ってるだけで、飲まないでなんて一言も……」

「そう。それがうぜーって言ってんの!わかんねーの?」

「お酒飲む暇があればアイリスに構ってあげでよ!」

「はぁ?子育ては女の仕事だろ!こっちは仕事帰りで疲れてるんだ。」

「でも……」パパはママを殴った。私は現実なのか夢なのかよく分からなくなった。ただただ、恐怖で足が震える。私のパパとお話したいなんて気持ちはどこかえへ消えてしまった。そう、これは悪い夢。夢なの、大丈夫。私は何も見てない事にしてまた寝る。明日には全てが元通りになると信じて……

「アイリス!学校に遅刻するよ。」

あれ、もぉ朝……なんか、すごく怖い夢を見たような気がする。

「はーい。今から準備する。」

私はあわてながら学校の準備をした。そそくさと、準備を終えた私はリビングへ行った。

「アイリス、ご飯できてるよ!」

「うん。いただきます!」

なんかママのほっぺが腫れてるような……夢じゃない!!!思えばそこらへんにあざがある。今まで気づかなかっただけで、本当はもっと前からあんな事が。いや、今は考えないでおこう。

学校が終わりまた夜がやってくる。昨日の事もあってちょっと怖い。でも、昨日だけだったのかもしれない。パパは酔ってたし、そうだよ!大丈夫!!!私は確かめるために、パパが帰ってくるまで起きていた。そしてパパがやっと帰ってきた。

「おかえりなさい。」

「あー。おい、なんだよその目は?」

「っえ?なんですか?そんな目って……私は別になにも……」

「お前までもそんな目で俺を見るんだな……

やめてくれよ。俺はお前達に見捨てられたら終わりなんだ!!だから、な?」

「見捨てるってなんですか?大丈夫ですよ。」

「いや、信用できない!!!今から3人で山にでも自殺しに行こう!!!」

「なんですか?アイリスの部屋に近ずかないでください!!!」

やばい。こっちに来る。とりあえず、ベッドで寝たふりを……

「アイリス、今からパパとママとアイリスでお山登りをするよ!ほら起きて!」

「あなたはアイリスに近ずかないで!」

「大丈夫。死ぬのなんて怖くないから。」

パパはポケットからカッターナイフを取り出した。さっすがにママは抵抗できなかった。私は寝たふりををしたまま、パパに抱っこされて車に乗せられた。ママも、もちろん乗った。今からきっと山へ向かうのだろう。


山に着いたのだろうか。車が止まった。パパが怖くって眠気どころか、あくびもでない。このまま3人で死ぬのかな?怖い、怖い、怖い……無力で何も出来ない自分が嫌だ。怖くって何かしようなんて考えてもいなかった。そんな人任せの自分が嫌だ。今ならママが背負ってた物がわかる気がする。

「ほら、着いたぞ!今から、そこらへんの木に縄をかけるから!準備ができたら呼ぶから。心の準備をしとけよ!」

「あなた、お話をしましょう?大丈夫、なんでも受けとめますから。」

「話す事なんてない。今やってるから話しかけるなよ。どの木がいいかなぁ!」

ママは何もできなかった。本当にもぉ死ぬのかな。死ぬって怖い。みんな気軽に、お前死ねとか言ってるのに、こんな重みがあるなんて……

今までを振り返って後悔してる場合じゃない!

今からなら何かできるはず。でも今起きても何ができるのかな。いや、前向きに考えよう!

「おい、準備できたぞ!ほら出てこい。」

「あなた、私まだ死にたくない!お願い考え直して!」

「ここまで来て何を言ってる!ほら、先にお前をやってから、アイリスもやろう。最後に俺も追いかけるから。」

「嫌だ。離してちょうだい!」

今起きなかったらきっと後悔する。起きるなら今しかない。大丈夫、何かできるはず!!

「パパ、ママ、ここどこ?なんでママ泣いてるの?大丈夫?」

これで少しは、空気が変われば…

「大丈夫だよ!ママは嬉しいんだよ!みんな一緒になれるからな!」 

「今でも一緒じゃん!どおゆうこと?」

パパは無言で、ただただ涙を流し出した。静かに涙が流れていく。本当にどうしたのだろうか?パパはママを静かに離した。きっとパパも辛かったんだろうな。

「パパ、大丈夫だよ。寂しかったの?辛かったの?分からないけど、私とママならずっと一緒にいるから、ね?」

「アイリス……ごめんな。こんなパパで……」

ママは緊張が解けたのだろうか、腰が抜けてただ座っている。

「ママもパパも私も、家族って助け合えるから家族なんでしょ?これからはママと私でパパを支えるから。」

「ありがとう。さぁ、山登りは今日はこのくらいにして帰るか!!」

よかった。考え直したみたい。これが危機一髪って奴なのかな?まぁ、とにかくやっと寝れる。大丈夫、家族は見えない絆があるから。

「ジュリ、ごめんな。ちょっと疲れてたんだ。許してくれ。ほら、帰ろう。」

パパが優しく手を伸ばして、ママもただうなずいて、手をとりあう。三人で車に乗り家に向かった。私は色々疲れて、車の揺れが気持ち良くって、気づけば家のベッドに寝ていた。

 朝起きると、昨日何もなかったのかと疑うくらい、いつも通りになっていた。これならきっと大丈夫だろう。私もいつも通りに振る舞う。ポワポワしたいつもの感じだ。なんだろう、すごく嬉しい。なんでいつも通りってだけで嬉しいのだろうか。私はこのふわふわとした温かい気持ちで私は学校へ行った。

 「アイリス、もお寝る時間よ!」

今日って日を終えて、大切な物がわかった気がした。学校で遊んで疲れたし眠ろう。

「はーい。おやすみなさい。」

「おやすみ。」

いつも通りって大切だなぁ。すごく幸せだ。明日も明後日もこの先、永遠にあんな事がもお起こりませんようにと、願いながら深い深い眠りについた。

 「アイリス、朝よ!ごはんできてるから!」

もお朝。早いな。さっき寝たばっかりみたいにふわふわしてる。

「はーい」

私は学校の準備をして下に行った。

「はい、ごはんよ!」

「ありが……」

また、新しい傷がママの腕にできてる。これ、夢かな?そうだよね。私、早く起きてと願いながら、自分のほっぺをつねった。痛い。現実の世界だった。なんでまた?わかった、きっとママはどこかで転んだのよ。じゃないと説明がつかないもの。大丈夫。家族は見えない絆があるから、同じ過ちを繰り返さないように支えあえるの!きっと、何もないはず……

 この日から、毎日朝ママの体には傷増えていった。


続く

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