1-10 代々木潮音の存在

 代々木潮音と知り合いになったのは阿佐谷と知り合ってから間もない日のことだった。

 偶然阿佐谷と潮音が話していた場面に出くわした時に紹介されたのだが、その時は入学以来よく耳にする学内で有名な美女とお知り合いになれてラッキーな程度だった。

 だが、その出会いを後悔をするのにそんなに時間はかからなかった。

 彼女は見た目に反して結構キツイ性格で、特に酒を飲ませた日なんか最悪だった。

 まず基本的に大酒のみである。蟒蛇とはよく言うが、まさしく彼女はそれであり、基本的に酒で潰れることはなく、おまけに酒臭い息で人に絡むのでなおのこと質が悪い。

 彼女にサシ飲みを求めた者は知っている限りでも両手で数えきれないくらいいたが、そいつらの誰もが敗北していった。

 ある者は無一文になり、またある者は逆に自分が酔い潰され、そしてまたある者は潮音の執拗な絡みに堪えられなかった。

 阿佐谷に連れられて潮音と三人で飲んだ時は最悪だった。

 もう飲めないと言っているのに力づくで無理やり飲まされ、折角の巨乳が腕に当たっていたというのに、それに興奮することなく目の前の日本酒一升瓶からどう逃れるのかということしか考えられなかった。今考えると本当にもったいない。

 ちなみに阿佐谷は早々に酔い潰されたのは言うまでもない。

 そんな潮音ではあるが、外見だけは良いので当然メディア研究会を立ち上げる際に勧誘をした。こんな逸材放っておく方がどうかしている。

 こんなに完璧な美少女なのだからカメラ映りは抜群だし、映像を扱うサークルという特性上例え阿佐谷というコネがなくたってチャンスさえあれば勧誘もするだろう。

 もちろん、勧誘が成功すれば潮音を客寄せパンダのような役目を果たせることは明白である。

 ミス海帝が我がサークルに入ったとしたら映像研究会の奴らより一歩リードできると阿佐谷のほくそ笑みに俺も同意である。周囲からみても映像研究会に絡みに行っていると称される俺たちではあるが、ミス海帝が入会すればほんの少しは自信も持ち、良い意味で向上心が湧き少しは奴らの存在を無視することができるであろう。

 まあ、それとこれとは別にムカつく態度の奴をやり込めたいという気持ちに偽りはないのだが。

 しかし、そんな俺たちの企みを見透かしたかのように潮音はたった一言「断る」と言い、俺たちの最初の女子を入れる作戦はあっさりと崩れ去ったのだった。

 人生とはそう簡単に上手くいかないものである。

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