1-6 急なパーティーは部室で
コンビニから部室に戻った時、そこに阿佐谷はいなかった。
しかし、阿佐谷の鞄は部室に残っていたので一時的にどこかに行ったことはわかった。
「煙草でも吸いに行ってんのか?」
まあ、なんにしても絶好の機会である。邪魔者はいない内にとやらである。
「とりあえず、適当に座って」
彼女に声かけて床に散らかっている物を適当に隅にかき集める。
元オカルト研究会の部室にしては日当たりも大変良く、窓際にあるソファーも元はオカルト研究会の物だった。
廃部になったオカルト研究会の部室を譲り受けた際はオカルト研究会の遺物があまりにも多く、少々へきへきしたものだったが、使えそうな物を残して自分たちの部室に改装した際は結構満足したものだった。
そういうわけで、部室備え付けの収納にはいまだに段ボール箱に入れられたオカルト研究会の物品がしまわれている。
案内された彼女が窓際にあるソファーに慎重に座ったのを見届け、俺もその向かいにある椅子に座り、ビニール袋から貰ったチョコと購入したポテチを取り出した。
先程貰ったチョコのパッケージを改めて見てみると、そこには「ドングリチョコレート、期間限定パイナップル味」と書いてあった。
全く想像つかない味の表記に一瞬言葉が詰まるものの、期待に満ちた表情でこちらをみる彼女のを前にしたら困惑の表情は見せられなかった。
ここは勇気を出して食べるしかあるまい。少なくともコンビニで売られているからには最低限の審査は通っていることだろう。
一つ口に入れると、なんともいえない味が口いっぱいに広がったが、同時に癖になる爽やかさも口の中に広がる。
つまり何が言いたいかというと
「…意外と美味い」
そういうことである。
チョコレート独特の甘ったるさはなく、意外と後味スッキリなのが美味しく感じた。甘いのが苦手なひとにも受け入れられるだろう、これは。
「それ、今月の新発売の中でも特にお薦めなんですよ」
そんな俺の様子に彼女は得意げに笑った。
「うん、確かに美味しい。えっと…」
「あ、私高円寺結衣です」
自然な流れで自己紹介された。それにおもわず俺も
「中野といいます」
咄嗟に自己紹介をする。
「えっと…」
「はい」
「なんて呼べばいいかな?」
普通に考えるならば当然苗字呼びだろう。しかし、これを機に女子と仲良くなりたい。大学入るまで女子とは全く縁がなかったそんな俺が、ようやく可愛い俺好みの女子と仲良くなれそうなのだ。ここは一気に攻めてもいいだろう。
俺の問いに高円寺さんは「んー」と可愛らしく視線を上に向けて考える仕草をする。
「別になんでもいいですよ」
「そ、そう」
有難いようで全く有難くない答えである。逆にどうしたらよいのだろうか。
「じゃ…じゃあ、結衣ちゃんでいい?」
うん、我ながらキモい。これはないだろう。
発言直後に自己反省をするが、もう遅いということはわかっている。
しかし、高円寺さんは表情を一切変えずに、何でもないとでもいうように
「いいですよ」
と笑顔で快諾してしまった。
「えっ?いいの?」
思わず聞き返してしまう。
「はい。別に構いませんよ」
「本当にそれでいいの?」
まあ、なんにしても距離は縮まったのか?少しは。少なくともこの時点でただの知り合いという関係は脱している、はず。
マイペースに細い棒状のプレッツエル状のお菓子をカリカリと頬張る結衣に自分が言えたことではないが少々の心配さを感じながらも俺は会話を進めることにしたのだった。
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