第五話。普通の猫は化け猫になったりしない。
夕方耕助さんに報告をした後、僕はまたお屋敷に戻って来ていた。
今度はちょっとラフな格好で。
庭に簡易テントを張ってその中で待機する。ミケコが現れるのを待つつもり。
もう夏も終わる。夜は寒いかも?
ジーンズにTシャツ、一応長袖のパーカーも持ってきた。
依頼の打ち合わせの時にそう約束をしてたので、戻って来た僕を庭まで案内してくれたみどりさん。
「ミケコちゃんをみたのはどのあたりだったんですか?」
と、聞いてみる。
「あそこの池の向こう側でした。生前と寸分変わらぬ姿でこっちを見ていたので、ミケコ、と呼んでみたのですが……」
ああ、やっぱりこの人はミケコは死んだと思ってるんだな。そう思い。
「そのままふうっと居なくなっていました」
「気のせい、とは思われなかったんですか?」
「化けて出たのかとは思いましたよ」
「化けて、ね。何か思い当たる節でも?」
「もしかしたら探して欲しいのかも知れません。あのこは奥様の側に居たかったでしょうから」
ああ。
居なくなった原因が何かある。みどりさんはそんな風に考えているのかもしれないな。
これ以上は口を噤んでしまったみどりさん。夕飯の支度がと奥へ戻って行ってしまった。
しょうがない。ミケコが現れるのを待つしかないかな。
日が暮れるのが少し早くなったかな。そう思いながら空を見る。
とにかくミケコの姿をこの目で見ないことには判断が出来ない。そう思いここで見張ることにしたのだ。
僕がいたら出てこない、とかいう話だと最悪。
その場合は別のアプローチでいくしかないんだけど。
割と猫には好かれるタチだとは思ってる。
野良猫も僕には姿を見せてくれることもおおい。
ミケコやーい。出てきておくれ。
そう願ってじっと庭を見続けた。
でも。
いったいミケコに何があったんだろう?
化けて出たいようなそんな事件があったのだろうか?
まだ生きているのかもしれないって、そんな可能性も無いではないけど、みどりさんのあのセリフはほんと気になる。
普通の猫は死んだからって化け猫になったりはしないのだから。
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