2日目 落ち込み勇者

「なんか視線が…」

「仕方ない、お前があんなの撃ったからだよ。」

「「地面ごと的を消し飛ばした〜」」

「解せぬ。」



「次は学園の教師と試合やりあってもらう。テキトーにチームを組んでくれ。6、7人くらいだな。」

ふむ、今はキースと姉妹との4人だから、あと2人くらい…

「お?」

魔力眼を飛ばしてみると、勇者ともう1人が端っこの方にいた。

「勇者が完全にやる気無くなってるな。」

それをもう1人が慰めているみたいだ。

「勇者ともう1人を見つけた。その人たちとも組んでいいかな?」

色々聞きたいこともあるし、勇者と知り合っといたほうが後々役に立つかもしれない。

「全然オーケーだぜ。」

「「問題なし〜」」

「ありがとう。」

…行こうか

そう言って勇者たちの元に歩いて行くと、

「爺ちゃんは、俺が勇者の中で最強ともてはやされていても、褒めずに『調子に乗っていると痛い目にあうぞ、世の中には勇者でも勝てないバケモノがたくさんいる』って言ってた…上位魔法使えない嫉妬だと思ってたのに、まさかこんなすぐに『バケモノ』に合っちまうなんて……、」

(勇者様メンタルが豆腐過ぎーー)

「そんなことないよ、きっと魔力使い果たしてでも見栄を張りたかっただけだよ。もしもの時のために魔力を半分くらい残したあなたとはだいぶ違うんだから、気にすることないよ。」

(おい、俺が見栄張りたがりのイキりみたいなこと言ってんなよ)

「でも負けたのは負けだ……どうせ俺なんてちょっと魔法の才能があるだけで天狗になってただけのただの凡人だよ……」

「上位魔法撃てる凡人って一体…」

「どうせ…威力で劣ってる俺のとこにきて一緒に戦ってくれる奴なんてどこにも……」

「勇者なんだからさ、きっとそこそこ強い人でも来てくれるよ。」

「そう……かな?ホントに…」

「ホントだぜ、勇者様!」

「おいキース、いきなりでかい声出すな、びっくりするから。」

「あー、今一番来ちゃダメな方たちが来ちゃいましたっ!?あぁ、ユウキ君の精神が〜!」

「そんなに弱くは……ないよ…」

(めっちゃ消えそうな声なんですけどっ!?もう仕方ないな!)

「なぁ、パーティー組んでくれないか?俺はヴァレンだ。君をただの凡人なんて思わない。立派な勇者様なんだからさ、もっと自信を持てよ。」

「俺なんかと…組む必要ないだろ…俺なんかよりも良くこなせるだろ。」

「俺だって出来ないことだってたくさんある。この威力だって、死にそうなくらい訓練して、やっと手に入れたんだ、前を向いてないと一向に前に進めないぞ?」

「言われなくても……わかってるよ…」

「なら組もう。。」

「必要…?」

「あぁ、俺もキースもラファもラミも、出来ないことがある。それをできるのは勇者様、いやユウキ。お前の力が必要なんだ。俺たちなら余裕で合格できるさ。」

「そうか、必要か…」

…いい響きだな。そう呟いたのを見逃さなかった。幼い頃から『期待』を押し付けられ、自分が圧倒的強者だと強く思っていた彼には、自分よりも強い人が居ると考えなかった故の挫折なのだろう。そんな自分よりも力が上の者からの『必要』の言葉は、自分の存在価値を強者から認められたという彼の自信につながる。

よほど捻くれていなければプラスに捉えて立ち上がってくれるだろうと思ったのだが、良かった。


「あのー、忘れないで欲しいですぅ」

(あ、忘れてた)

「紹介するぜ、俺の専属メイドのシャルルだ。」

「シャルルです、先程は来ちゃダメな方たちと言ってしまって、すみません。」

「構わないよ。」

「そう言ってもらえて幸いです。」

「よし、これでチームはできた。あとは試験官を倒すだけだ!」

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