HAND‼︎

@ayumu0707

第1話 お前は誰だ。

小さい頃、インフルエンザ予防の注射の時、俺は泣かない子だったそうで、我慢強い子だと褒められていたそうだ。母さんは俺の頭を優しく撫でて笑ってくれた。弟はいつもくっついてきて、よく一緒に遊んでいた。ずっと続けばいい。この幸せを、ずっと噛みしめていたかった。

裾の焦げた服を引きずりながら、ガラスの破片が刺さった腕を破った布で一生懸命支えていた。母さんの手はもう黒く焦げていた。弟と遊んだ場所は焼け野原に。家は無くなっていた。その時何かがプツンと途切れて、支えていた腕から地面にばたりと倒れていった。減りすぎて鳴らなくなった腹をさすりながら目を閉じる。

「お兄ちゃん!早くおやつ食べようよ。」

「早く食べないとお母さんが食べちゃうわよ。」

走馬灯か。とうとうそこまできたか。母さん、待たせてごめん。今いくよ。光、お前だけはちゃんと生きて、幸せな家庭を持つんだ。はぐれてしまってすまない。どうか無事で。


目がさめると俺は病室のベッドのような所で横になっていた。

(てか、天井白すぎないか。大理石の天井みたいだ。)

ハッとなってガラスが刺さっていた腕を見ると綺麗に治っていた。それどころか身体中が痛かったはずなのに、どこも痛く無くなっている。立ち上がっても足は痛くないしちゃんと歩ける。こんな当たり前だったことができるようになってとても嬉しい。当たり前のことにも感謝しなくてはならないな、と今日感じた。

辺りを見渡すと、四百個以上ある全てベットの上に人が眠っていて、まだ目覚めていないみたいだ。俺は急に怖くなって部屋の扉を出た。するとモニターとメガホンがコードで繋がれてある部屋につながっていた。真っ黒だったモニターに光がつき、金髪のお団子を二つ作った女の子が映って俺に微笑んだ。

「目が覚めたのですね。身体中痛かったでしょう。でももう大丈夫です。私たちが治してさしあげました。これからはここで生活してもらうのですから。」

「おい、ここはどこなんだよ。俺ははぐれた弟を探しに行かないといけないんだ。」

「先に説明させていただきます。これは映像ではありません。3Dの映像を生配信しているものです。なので質問をする際はそちらにあるメガホンを使ってご質問なさってください。」

俺は横にあったメガホンを手に取ると言った。

「俺は海野 爽。弟の海野 光を探したいから今すぐここから出さしてくれ。」

「それはできません。なぜなら外は荒れ果てていらっしゃいます。今行けばまた死ににいくようなもの。」

もっともな答えに俺は何もいうことができずにメガホンを口から遠ざけた。

「しかし、既に海野 光様はこちらで鍛錬を受けておられます。」

「なんの鍛錬だ?」

「創造の鍛錬です。」

「そうぞう?」

光は何をしているんだ、こんな所で、心配したんだぞ。嬉しさで涙が出そうだったが、グッとこらえて我慢した。

「創るほうの創造です。私たちは『create』という組織です。ここにいる人たちはみんな創造する力を持っています。例えば岩を作り出す創造。武器を生み出す創造など、たくさんあります。ただしこれらの創造をするには、体に薬品を服用しなければなりません。あなたの体にはもう薬品が服用されています。」

俺は身体中を見たがいつもの自分と変わらない。どういうことだ、一体何が目的なんだ。

「あなた達はその創造する力を使って外の荒れ果ての原因を倒してもらいます。奴らの最高幹部はこの世界をもとに戻す方法を知っている。あなたが失ったものが全て帰ってくる。だから弟様はあなたを探すために、家族を失った憎しみを晴らすために今、鍛錬中です。」

光に会うため。大切な家族を、あの子との別れも…全てもとに戻せるのか。

「分かった。俺もここに入れてくれ。」

「いいですよ。ただし、今これは一次試験です。私が話した言葉には誤りがあります。それを見つけられれば『create』に入れます。さあ、どこでしょう?」

話した言葉の間違い?そんなのどこにあるんだ。外は荒れ果てているの所?いやでも本当に荒れ果ててていたしな。創造の力とかいうやつでなんでもありなはずだ。常識を覆せ。想像しろ、いろんな可能性を。

「分かった。もしここに本当に創造の力というやつがあるなら、お前は絵になれる力というか、そういう視覚的なものなんだと俺は思う。お前は3Dの映像なんかじゃない。生身の人間なはずだ。お前は誰なんだ。」

そういうと女の子はニヤッと笑った。画面から手が出てきてその女の子が出てきた。

「第一試験合格です!私は人体の創造。体を自由に変化させられる。」

「本当にこんな魔法みたいなことがあるんだな。」

「あなたにもこれから創造の力が与えられるんですよ。さぁ、あっちの扉に向かってください。そこに行けばこれからの説明がさらに詳しく聞けますよ。」

女の子が指をさした場所にさっきまで無かった扉ができていた。光と再会するためにも、一刻も早く向かわないといけないな。

「あ、聞き忘れていたけど、お前の名前はなんなんだ?」

「うーん。私は自分の名前があまり好きではないので言いたくないんですよね…なら、案内人と呼んでください。何かあったら、あなたの元へ行きますよ。」

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