切れた親父
ぽわふとん
第1話
私の父は、いい大学を出て大学院を出て、社会的に高い地位の職業に就いていた。
学歴の良さが人生の良さに直結すると信じられていた時代、彼は私に星一徹のようなスパルタ教育をした。
空手の黒帯を持っていた父は、人生で教育こそが人間の価値を決めると信じてやまず、指導者としても男としてもとにかく厳しくて怖かった。
そんな父が人生で一番キレたのは、朝食時、民放テレビの朝の体操のお姉さんの衣装がハイレグのレオタードからもっさりしたハーフパンツに変わった瞬間だった。
彼はキレた。私と妹と母の前でいつまでも食事に手を付けずにキレた。日頃の説教臭い態度が嘘みたいに長々とキレた。
こんなことをして一体誰が喜ぶんだ、ただダサくなっただけじゃないか、文化の後退だ、だから日本はダメになるんだという理性的な語彙を尽くしてひたすらキレた。
切れた親父 ぽわふとん @atabouyo1
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