第6話

【転生モノ】


夕食後、すずさんとソファーでくつろいでいると、


「ねぇねぇ、転生モノって知ってる?」


そう唐突にすずさんは俺に問いかけてきた。


「あー。あぁ、何か最近流行ってるんだってな。

 甥っ子に聞いて…」


つーか、すずさん何そんなに楽しそうなんだろ…


「あたしね…」

「うん。」

「転生したら猫になる!」

「…(な、何言ってんだ、こいつ)」

「それでね、ミケとクロ追い回して、

 あなたに美味しいご飯食べさせてもらうんだー!」

「…え?それって、今と変わってなくね?」

「…」


や、やばい!


「あー!うん、それいいねー!

 すずさん目がクリッとしてるし、

 何か猫っぽい顔してるもんねー!」

「でしょでしょー!だよねー!

 それでぇ…」


そう言うと、いきなりすずさんは

俺の膝を枕にして、ゴロンと寝転がった。


「ねりゅー!」

「…」

「りゅりゅりゅりゅ~」


続けざまにすずさんは顔を左右に振りながら

俺枕に顔をこすってきた。


「りゅ~りゅ~」


りゅ、りゅ!?りゅ、りゅううううううう!?

…だ、と、

や、やばい、…可愛い…

可愛いすぎる!


このまま強引に、すずさんの唇を奪いたい!

ああ!そうした…


「フギャー!!」

「ごっふっ!!」


クロがおもいっきりすずさんの腹めがけて飛び乗ってきた。


「ぷっ!ははははは!

 大丈夫かい?すずさん。」

「う、うぅ…案外重いのね…。」

「普段ちょっかいばかり出しているから、仕返しなのかな?

 ははは!」

「…あ、違う、気づいちゃった。」


そういうとすずさんは上体を起こした。

…さ、さびしい…。

くっそぉ、クロのヤツめぇ…


「あたしがあなたに甘えているから邪魔しにきたのよ。

 嫉妬して。うん、きっとそう。」

「え?」


やべぇ、嫌な予感しかしねぇ…


「はぁ~~~~~~~!!!

 そういうことね。」

「な、なに?どうしたの?」

「うんうん、いいのよ。どうせ、どうせあたしは。」


で、でたー!

すずさんのどうせどうせ自虐…


「…あ、あのぉ、すずさん?」

「…」


ふてってるのかなぁ。

背中向けて可愛いなぁ。


「よぉしよぉし、ほら、膝枕してあげるよ~。

 こっちおいで~。」

「…」

「おいでおい…」


ドスンっ!


「いって!」


勢いよくすずさんは俺の膝を枕にした。


「すずさん、すねてるの?」

「…」

「俺はね、すずさん。」

「…」

「こうしているだけで幸せだぜ。」

「…」

「物が溢れかえって、

 元来あるべき大切な心っていうのかな。

 そういうもんを失ってしまっている人、多いと思うんだ。」

「…」

「挙句、こんなの自分の人生なんかじゃない、リセットしたい、

 何かに生まれ変わりたい。とかね。」

「…」

「それ自体を否定するつもりは無いよ。

 他人の気持ちなんて俺には解らないし。

 それをどうこう俺が言うことも間違っていると思う。」

「…」

「ただね、俺は、生きているだけで、すずさんとこうして二人で

 生きているだけで幸せなんだ。」

「…」

「…ん?」

「…」

「…あ、あれ?すず、さん?」

「…ぐぅ~…」


こいつマジで寝やがった…。


…洗い物したいし、

つーか、案外重いし…って、まぁいっか。


そういえばすずさん、いつか言ってたものな。

甘えられるのはあなただけだって。


しばらく、こうしているか。


俺の膝枕で寝ているすずさんの頭を撫でながら、

俺はとても優しい気持ちになれた。


ねぇすずさん。

猫に生まれ変わったって、

俺は、きっとあなたを見つけるから。


「ぎゃあー!」

「うわぁ!!!!

 何だよ急にぃ!!!」

「あ、ああ、…夢かぁ…」

「…ゆ、夢?」

「…う~ん…あなたがぁ…猫にぃ…なってぇ…」

「ん?」

「…ぐぅ~」


また寝やがった…

まったく、可愛いすぎるぜ。すずさん。


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