第56話
会話を終えた俺は、大剣をデスリッチに刺したままウィンドウを開いて、左手の操作で装備を変更した。すると、大剣は消えないままに新たに長剣が現れる。
『あの大剣は言うならスタンドアローンコンプレックスだ、キミの意識や私の意識、それにこの場を形成するデータの処理があの大剣に集まって、孤立化しているあの大剣の処理が遅くなっている。それは触れているモンスターにも影響を与える楔となる』
「……完全なチートだな」
『そう、完全なチートだよ、なにせキミはチーターなんだからな、処理補助にしろ自己処理機能にしろ、本来この世界の異物になるような要素だ、それ以前にキミという存在が完全にチートなんだが――』
「チーターか……いつだったか、誰かに言われたような気がする」
『覚えていないなら教えようか?』
「……必要ない」
長剣を刺して、次に大剣、片刃長剣、普段なら使わない大刀や刀も次々刺していく。
デスリッチはその殆どが骨であるため、肉ではなく骨を貫通しているのだが、そこはVRゆえに細くても切断されるということはない。
『そろそろだな、それではジャスティス、いざ、さらばだ、幸運を祈っている』
「……幸運――ね」
『あと……私の好みで言うならナナがお勧めだ』
「黙って消えろ」
そして、平行処理が終了し、俺はデスリッチとの距離をとった。
すでに瀕死のデスリッチだが、刺さっている剣のダメージが1しか表示されていない。
おそらくステータスの変更が行われて、VITが異常に上昇したのだろう。加えて、スキルの断続使用で隙がまったくない。
「平行処理無しにどこまでやれるか判らんが」
シャドー抜きの高速戦闘は、処理を自身の脳に頼りきりになる。サイスを掻い潜りアルシャナスで足を2回斬り払い、背後を取る。
「くっ――」
俺の視界に、身体的エマジェンシーを知らせるシグナルが点滅する。HMCが体の異常を感知して知らせているのだろう。そのまま解消されないようなら、強制ログアウト機能が発動し、俺はログアウトしてあの部品によって死を迎える。だがしかし、今は止まれない。
「はぁぁああああああああああ!」
空中で攻撃し、落下しながら回転攻撃する。
そして、地上に降りた瞬間に襲い掛かってきたサイスを避けてスキルを発動する。
LIMIT OVERが表示されずに、デスリッチのHPバーが完全に無くなると、その体はデスロードと同じく、飛散してエフェクトだけを残す。
刺さっていた剣も辺りに散らばって、周囲の背景が黒くエラーを知らせる中、俺は完全に停止した。
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