第42話


「話が脱線しているようだが――」


 ヤトのその言葉に、アメリカンドックの周りだけ食べて中身を銜えるカイトは、素早く租借して飲み込む。


「脱線?なんのことかな?」


 とぼけるカイトに食べかけの元アメリカンドック、今は串刺しのソーセージを突き出された俺はそれを食べてから言う。


「昔話に変わっているだろう、俺とお前が出会った話を俺にしてどうする」

「でも、これでボクが本物のカイトだって確信が持てたよね」


「……確かに、俺の目の前にいる美人な女がカイトだと理解した」

「そうだよ、ボクの顔凄く美人だろ?ボクもこんな子とイチャイチャしたいんだよ」


「……一ついいか?」

「はぁ~なんだいヤト」


「お前は同性愛者でいいんだよな」

「ん~ん……どうだろう?正直まだ分からないかも」


「それは――面倒だな」

「ちょっと、キミが〝面倒くさい〟って言ってどうするんだい」


「仕方ないだろ?もし誰かしらにお前に気があると言われた場合、どう対応したらいいか分からないだろ」


 その言葉にカイトは腹を抱えて笑った。


「キミにそんなことを聞いてくる友達がいるのかい?」

「……(失礼な)……1人ぐらいは――」


「へーそれは是非とも紹介してほしいね」


 その後もカイトは笑顔を絶やさず、楽しみながら俺と神社を回って、それからビージェイたちの新年会に参加するために始まりし街に移動した。



 始まりし街では、正月アイテムの羽子板や凧などで遊ぶプレイヤーも多く、街中は人とNPCで一杯だった。カイトを連れてきたものの、ビージェイたちがどこにいるのか分からずに転移ポートで待ち合わせた。迎えに来たビージェイがカイトを見て、「お前も隅に置けねーな」と言うが俺は頭を傾げる。


 その後、ギルド〝ファミリア〟のホームに入ると、何故かマリシャに捕まることになった。


「久しぶりだね~ヤト~!ね~ね~私さーもうメッセを送るの治ったから……ブロック解除してもいいと思うん・だ・け・ど~ちら様?」


 笑顔なのに声が低いマリシャに、カイトについて何故か詰め寄られる。


「おいおいマリシャちゃん、その子カイトちゃんって言って、ヤトの友だちなんだとさ」


 ビージェイがそう言うと、マリシャはカイトを上から下へ、下から上へ視線を動かしていく。


 そんなマリシャに、カイトが満面の笑みで挨拶をすると、マリシャはカイトを奥の部屋へと連れて行こうとする。女の子同士で話がしたい、と言ったマリシャは挨拶も程ほどに、その場を後にギルドホーム内の個室へカイトを連れ込む。


「女の子同士で何するんだろうな」

「話だって言ってたろ」


 俺がそう返すと、ビージェイはいやらしい笑みを返した。


「にしても、相変わらずソロでやってるみたいだな~、正直心配なんてしてね~けどさ」

「お前の方は最近はソロで、こっそりとなんてのはしてないみたいだなビージェイ」


 ビージェイと出会った時、彼は仲間である今のファミリアのメンバーに内緒で、一人でレベリングとアイテム収集をしていて、明らかに怪しげな石像の中心にある宝箱を開いて、結果その石像たちと戦闘になって死にかけていた。


「あの時ヤトが通りがかってなかったら、おりゃ~死んでたね、うん」

「俺もあの時お前を助けなきゃ、そのあとのストーカー被害には遭っていなかったな、うん」


 俺が助けた結果、ビージェイは俺の後をコソコソと付け回して、「一緒にレベリングしようぜ!」とか、「二人の方が効率いいぜ!」とか、「アレ?ヤトじゃないか!偶然だな~」と言って何かと理由を付けて、その場限りのパーティーを組まされることになった。


 その当時、俺はソロでない場合のドロップやフィラの効率や経験値の変化に興味があり、やぶさかではないという思いで受け入れた。もちろんフレンドにはなっていなかったが、その興味が失せた頃、付きまとわれないために、フレンド登録して以来の再会になる。


「しかし、ヤトには俺のギルドに入ってもらうつもりだったんだけどな~」

「それに関しては言っただろ?パーティーを組むメリットが何もないからな」


「ま~確かに、今の俺たちじゃ~足手まといでしかないしな、しゃ~ね~かー」


 俺はビージェイのこの距離間が嫌いではない、だから、今もフレンドとしてブロックせずにいるのかもしれない。

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