第8話
8日はとても長くて、勘が鈍らないように他のタイトルにインするも、戦闘時に常時システムアシストの入るものばかりだったため、逆にますます勘が鈍りそうだった。
BCOに近い環境はシステムアシストのかからない仮想空間、つまり、指紋や網膜認証のための空間が一番それに近くて、来る日も来る日も手に何も持たない状態で剣を振る動作をして過ごした。
BCOの販売は午前0時ジャストに開始され、2万数千のフルダウンロード版を購入し、インストールを開始する。
「オープンは11時からか……」
タイトルがマイナーなのか宣伝の質が悪かったのか、VRMMO関連のニュースにBCOの名はどこにもなかった。
「よほど自信があるのか、それともサーバーに不安があるから人数制限をつけたのか」
正規版のダウンロードは、総数が1万丁度で止まった。
日本国内で1万人だけでオープンするタイトルなんて、旧世代のスマホアプリのFDタイトルぐらいしか思いつかない。
全五大陸といっても、始まりし街のある大陸だけでも六つのエリアに分かれていて、最初のエリアには二十体のボスモンスターがいた。
テストの時はまだ一体のボスモンスターとしか戦えなかったが、正式にオープンすれば一つの大陸、各エリアで約二十のボスの中からキーになる数体を倒さなくては次のエリアは解放されず先へは進めない。
「あと4時間……」
PiPooon!不意に家の呼び鈴がなると、勝手に端末に訪問者の声が入ってくる。
「お届け物です!」
家族の誰かの荷物だろうと無視していると、その運送業者は俺の名前を呼ぶ。
「アーツ様よりお届け物です」
アーツ――その名前はBCOの開発元の会社名。
こんな時間に開発元から何かが届くなんてことがあるのか?と疑問を持ちながらも受け取りに行く。
受け取ったそれは片手で持てるほどの大きさで、本当は1日前には届いていたらしく、中を開くと、そこには小さな箱が入っていた。
さらにそれを開くとHMCと連結できる仕組みのパーツが入っていて、説明書には「セキュリティーアタッチメント」とカタカナで書かれていた。
BCO独自の干渉閉鎖装置らしく、電波阻害の対策のための外付けパーツなのだそうだ。
「……珍しいな、こんなのをタダで送ってくるなんて」
実際にHMCに干渉する妨害電波を嫌がらせで発している人物が逮捕されたケースもあり、俺は何の疑いも持たずにそれをHMCに取り付けた。
「あと3時間か……」
その時の俺は、その小さな外部ハードが人生に大きな影響を与える、などということは知る由もなかった。
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