第7話

 テスト期間最終日。


 俺はいつものように一人黙々とモンスターを狩っていた。


 レベルはテスト期間で決められた上限はなく、が、かといってすぐにレベルが上がるなどということでもなかった。


 現状今いるフィールドは制限があり、戦えるモンスターも決まっている。


 得られる経験値は、レベルが上がるたびにそのモンスターとのレベル差で変化するタイプで、現状最強の敵でもレベル17でしかない今では、プレイヤーがレベル19になった時点で1しか経験値が得られない。


 それでも人が減る気配はなく、それがドロップ目当てであるのは明らかだった。


 俺がフィールドの端でこそこそと戦っていると、一人のプレイヤーが話しかけてきた。


「おいあんた、ローアントから何かドロップしたか?」


 情報を得たいならもう少し会話をするものだが、直球な質問からして初心者だろう。


「……特に何も―――」


「そうか、ありがとな」


 そう言って男は去って行った。なにが目的だったのかは分からない、ただ俺は正直に答えた。


 数時間後、ローアントからアイテムがドロップすると、俺はその場から立ち去る。


 その後、大体のモンスターからどういった武器がドロップするのか把握できたためログアウトしようと思った。


 ふと、あの男が今まさにローアントを狩っているのではないだろうか?正直に教えてやろうか、と迷った挙句にあの場所へと足を運ぶ。


 するとそこには、二十人規模のレイドでも組んでいるかのようなプレイヤーがローアントを狩っているではないか。


 その中の一人が俺に近づいてきて言う。


「悪いなここは今、俺らの狩場なんだ」


 そいつは俺に質問した男だった。


「……なるほど、なるほど――」


 俺は不敵な笑みを浮かべる男に背を向けて、その場を立ち去りログアウトした。


 もし仮に、単一のモンスターから別の武器がドロップしないのなら、彼らはこれから数時間あのローアントを狩り続けることになるだろう。


 ベットの上で目覚めた俺は軽く鼻で笑うと、テスト期間で得たデータをHMCの領域に保存する。


 テスト期間はもう数時間で終了。


 次にBCOにインするのは8日後になる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る