第4話
チュートリアルも進み、ついに武器の操作に辿り着いた時、このゲームの本質に触れた。
俺は、左手でウィンドウの装備項目を指示通りに押していく、すると、アイテムストレージに片手長剣と表記されたアイテムが入っていて、それを装備スロットへとドラッグしてドロップする。
装備すると、自動でウィンドウが閉じて右手にずしっと重みが加わる。
「意外と――重いな」
剣を振りながらそう言う俺は、その時点で感じた違和感に気付く。
こういうFDVRMMOのバトルシステムには大体、システムによるアシストなりサポートなりが入るのが普通なのだが、BCOに関して言うならそれがない。
剣を振る時に、理想とする太刀筋を再現することで、プレイヤーの戦闘での違和感を緩和する。
そういったシステムは必須というのが、現行しているFDVRMMOでは当たり前だったため、違和感を感じなかったと言えば嘘になる。
「これは初心者には厳しい仕様だな」
テスト段階だからかもしれないけど、後でGMに"変更したほうがいい"と報告でもするか、その時はそう思った。
剣を直接タップするとその武器のステータスが表示される。
STR、VIT、DEX、AGI、skill。
自身のステータスに上乗せされる数値とスキルの文字。
そう、このBCOの特徴の一つであろう剣のスキル。
片手長剣と表示されているこの武器のスキルは、【ストライクスラッシュ】。
「"直線の突きを放つ"……ただの突きか」
ストライクが突き、スラッシュが斬る、どっちだ?って思ったがどうやらバグのようだ。
ナビに従い体を動かして剣を構えると、視界に文字が浮かんでくる。
その瞬間、自身の体が何かに押されるように前に進むと、右手の剣が白いエフェクトを放ちながら突き出た。
STRIKE SLASHの文字が、効果音と同時に表示されたときは、なかなかに新鮮な感覚だった。
「なるほど、これは今までになかったな」
その後の説明で、このBCOには戦闘時の常時システムアシストの概念はなく、スキルも武器や防具に付加されたものだけであることが分かった。
システムアシストはスキルの発動時にのみ適応され、スキルの種類によって発動させる時の構えなどが変化することも分かり、構えを覚えられない場合は音声による発動も可能らしい。
この世界では装備こそが唯一スキルを得る手段で、さらに一つとして同じ武器防具がないことから、ゲームの難易度の高さが伝わってくる。
「強い武器は強いプレイヤーの手に渡り、弱いプレイヤーは弱い武器しか手にはいらないってことか」
タウン、街の外でならPvPもできるため、武器の奪い合いも起こりうる。むしろそうなるようGM――運営は作ったのかもしれない。
クラスやジョブといった概念もないこの世界では、モンスターを倒してドロップした物でしか強くなれない。
Lvの差で強さが決まるだけじゃなくて、モンスターからドロップした武器でも強さが決まる。つまり"努力"だけじゃなくて"運"も必要となる、実に現実感を与える仕様だ。
他のFDVRMMOでも同じことが言えるが、武器にここまで依存したこの世界は、明らかに他のそれとは別物だ。
スキルの使用にはリチャージタイムが存在して、スキルが使えない時間が必ず発生する。その時間にはシステムによるアシストは一切ない。
自分の体で剣を振るう感覚。
ステータスではどうにもならない、それをこの世界は要求しているのだ。
「……ふっいいじゃないか――BCO」
俺は一人、口元の端に笑みを刻んで剣を振った。
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