第2話 TEST PLAY 【チュートリアル1】
2052年10月
視界の右上で手紙の絵が点滅しているのに気付いた俺は、それを右手の指で弾いて開く、中身はよくある新作ゲームの案内だった。
ブレイド・チェーン・オンラインというFDVRMMO。
俺は今時のAR、オーグメント・リアリティ、各超現実よりもVR、バーチャル・リアリティ、仮想現実の方を好んでプレイしている。
俺はゲームの世界観を映像と説明文で確かめた。
内容はよくあるRPGもので、プレイヤーは剣士として騎士団の一員となって、全5大陸を魔物から取り返すというものだった。
ストーリーなんて無視して、スペックと概要を読む、スペックが足りないことはありえない、なにせ最新のフルダイブ環境が揃っているんだから。
「よくあるテスター募集か……別に黒くはないか?」
俺はすぐにそのゲームのダウンロードをし始めた。
こういったゲームの募集は、大体体験してみることにしている。
実際にログインしてみなければ、その世界の感じはつかめない。
前にストーリーとゲーム説明だけで期待してログインした事があるが、随分ガッカリしてログアウトした記憶がある。
アラームを2時間後にセットして瞳を閉じ、ダウンロードが終了して、ゲームのアップリンクが完了すると、閉じた視界にCompletion、完了の文字が点滅する。
ゲームを始める時にコールコネクトかタップコネクトが必要になる。コールコネクトは"ログイン"や"コネクトスタート"と言葉が必要となる。
俺の場合はタップコネクトに設定しているため、頭に付けたHMC:ヘッドマウントコネクトの指定位置を2回指でタップする。
一瞬の脱力感から寝起きのダルさを感じると、擬似的な仮想体の俺の手や足が視界に入る。
その姿は3Dスキャナーで作られた現実の自分の姿で、指紋認証や網膜認証に対応させるためのものだ。
広さも分からない黒い空間で、文字がゆっくり浮かび上がる。
Character Selectと書かれたそれには、髪の毛の長さから足のサイズ、尻尾や猫耳などの実際に現実ではその身に付いていないものも付けられる。
「意外と種類が豊富だな――」
俺は、自身のデータを基礎に作ったキャラクターに、外見を付け替えたアバターを複数用意していて、その一つを選択すると、外見が青いエフェクトに包まれて姿が変わっていく。
黒髪のイケメン風の男、日本人にしては整いすぎたその顔は、自身の潜在意識の中にも美的感覚というやつがあることが窺える。ま、身長は歳相応になってしまうけど。
ゲームの設定はその外見の設定だけで終了し、その後の設定はゲーム内で行うようだった。
Complete、完成のボタンに手を置くと、日本語で「ようこそBCOへ」と響く。
視界のポリゴンが加速させれると思わず目を閉じてしまう。この時の機械音はいつになっても好きになれない。数秒後、周囲がざわついて、世界の構築が完了した。実際には、俺が世界に誕生したと言うべきなのかもしれない。
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