Blade Chain Online―ブレイド・チェーン・オンライン―

@tobu_neko_kawaii

第一部

第1話 プロローグ

 プロローグ


 2052年、現代におけるARプレイヤーの総人口は日本だけで7割以上、全世界では7億以上であるとネットニュースで見かけた気がする。


 スマートフォンという端末が、すでに古くなってきた現在では、首にかけるハンドフリーな端末が主流となってきた。


 どこでも簡単にネットに繋がることができる今は、フルダイブ環境の整ったサバーと携帯可能なHead Mounted Connect、HMCがあれば、人・場所・時間を問わずに仮想世界へも行ける。


 現実に仮想を混ぜた視覚干渉型の技術も飛躍的に進歩していて、現実にいながら仮想のディスプレイで映像やメールを見たり会話をしたり、もう近未来志向が日常で水準化してしまっていた。


 ARによるリアルでの移動と、仮想現実との融合は、現代における新たなコンテンツであり、外にいながら、視覚をアバターにリンクして自身を見るという事も可能だ。


 目が悪い人が、仮想の視覚を使い物や文字を鮮明に見ることもできる昨今でも、やはりゲームの人気は常に上昇し続けている。


 多種多様なジャンルのあるARやフルダイブの中でも、一番といっていい人気はやはりMMO、マッシブリーマルチプレイヤーオンライン、大規模多人数オンラインである。


 現在までに数千タイトルが世に出ては消え、栄えては衰える、中には違法性の高いものも存在し、そういったものを取り締まるための行政機関があるほどだ。


 そして、その違法性とは別の意味で問題になっているのは、〝異世界逃避行症候群〟と呼ばれる精神病だった。


 現実に居場所がない、家族とも不仲で仮想空間でしか会話もできない、そんな人間が仮想空間だけで生活しようと試み、その結果フルダイブ中に死亡するといった事例も増えてきた。


 その対象に、年齢や生活環境は今や関係がない。小学生から老人まで、貧乏人から金持ちまで、仮想世界が進歩すればするほどに人々は魅了され、現実とのギャップに悩むようになる。



「現実に不満がない人間なんて存在しないだろ」


 そんなことを呟く俺も、中2の夏から学校に行っていない。理由は別に人間関係や家庭の事情ではない。


「仮想世界にだって人間関係はあるし、それなりにコミニティーを維持しないと楽しめない」


 現実と仮想世界の違いは何か、そう考えた時に浮かぶのは〝理想の体現〟である。


 現実で努力すれば理想に届くのかと言われたら、届く人間もいるとしか言えない、が、仮想世界なら努力すれば、時間をかければ結果が付いてくる。


 理想に近い自分を、時間をかけるだけで手に入れられたなら、その世界に逃避するのも仕方ないと思える。



「あなたにとって仮想世界とは、だって?……そんなの決まっている――」


 仮想世界はこの世界に実在する、つまり、仮想と呼ばれる世界は現実に存在している。


 ただ現実の体ではいけないだけで。


「仮想世界=現実だ」

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