第28話 はじめましての代償は彼の鎖骨
いきなりシッポとご対面させてしまうと、お互いビックリしちゃうし、子猫が何か病気を持ってる可能性もある。
自由にさせているシッポに制限をかけると、ストレスになっちゃうから子猫には申し訳ないけどシッポの寄り付かない洗面所にゲージを設置。
シッポにとって洗面所は、恐怖のお風呂へと続く道なので覗き見る事はあっても入っては来ない。
お風呂に入る飼い主を覗くネコチャンとか、憧れるなぁ。
さておき。
狭い狭い洗面所は、洗面所としての役割が微妙な事になってしまったけど、少しの間だしね。
でも、閉め切ると結構冷えるので、ゲージの中にヒーターを設置。
外に比べると随分と暖かいと思う。
よし! 準備完了。
ちょっと座ろうかな、と思った瞬間チャイムが鳴った。
☆ ☆ ☆
ちぃさぁい!!
思って以上に小さい黒猫。これは子ネコ用ゲージどころか、段ボールで十分だった!
生後二週間くらいかなぁ。
もしかして、目も見えてないんじゃない!?
「かっわぁいぃぃ」
大急ぎで子ネコ用ミルクを溶かして、ティースプーンで口へ運んでみるんだけど。
「飲まないね……」
香織ちゃんが、悲しそうに言うもんだから
「行くよ!!!」
ミィミィと小さな声で鳴く子ネコを、バスタオルで包んで香織ちゃんに一度預ける。
「どこへ?」
香織ちゃんの問いに答える間もなく、近くの動物救急へ電話。
「もしもし、すみません。小さな子ネコを保護して」
―野良猫ちゃんですか―
「はい、でも私が飼います」
隣で香織ちゃんが「え?」って言ってる。
見た瞬間決めたの。リュウが繋いだ命だから、私が引き継ぐ!! って。
―では、保温しながら来て下さい。お車ですか?―
「近所なので、歩いて行きます」
―分かりました。お待ちしています―
この動物救急。
お高いんだけどね。ボーナス使ってなくて良かった。
「香織ちゃん、今から動物の救急病院に行くけど、どうする? 一緒に行く?」
「一緒に行く!」
香織ちゃん、動物の救急病院があるって知らなかったらしい。
医療人として、興味もあったのかな。
☆ ☆ ☆
病院に着くと、結構沢山の人が心配そうにペットが入っているキャリーバッグを抱えてた。
香織ちゃんが子ネコを連れてきた段ボールのまま来ちゃった私達は、ちょっと浮いちゃってるかも。
「あら、もしかして子ネコちゃん!?」
近くにいた、お婆さんが優しい笑顔で声を掛けてくれた。
「はい、車道で鳴いてたのを保護したらしくって」
急にお婆さんに声を掛けられて、どう接して良いか分からず、頭をふんふん縦に振るしかできない私とは違って、香織ちゃんは看護師スキルを発揮してちゃんとお話ししてる。
凄いなぁ。
「今来られた方、受付お願いします」
受付の女性にそう言われて、私と香織ちゃんはいそいそを受付へ。
ここに動物救急があるのは知ってたけど、まだ一度も来たことがなかったので勝手が全然分からないんだもん。
「この子です」
香織ちゃんが、段ボールの蓋を少し開けて子ネコを見せた。
「はい、ではこれに記入してください。あと、保険証お持ちですか?」
受付の人、子ネコに頬を少し緩ませて言ったのよ。『保険証』って。
ペット保険の保険証の事なんだけど、保護したばっかりの子にペット保険なんてあるわけないのに。
口癖になってるのかな?
と思ったら
「はい!」
香織ちゃん、財布から自分の健康保険証だしてた。
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