第5話 あの頃の私 マストはセブンティーン
リュウの自宅からそんなに遠くはないらしいちょっと大きな病院だった。
遠くはないらしいって言うのは、リュウの自宅を知らないから。ほら、高校って色んな地区から通ってくるから、どこに住んでるのか知らない子の方が圧倒的に多くなかった?
「うちの近所の病院なんだけど」
途中の本屋によって、リュウが香織ちゃんが読んでるのを見た事ないって言うので、セブンティーンと明星を買って病院へ向かった。ほら食べる物は好みがあるかなぁと思って。
「香織、プリン好きみたいだから」
とリュウはスーパーでプリン買ってた。
良いな、こんなお兄ちゃんって本気で思っちゃった。
☆ ☆ ☆
香織ちゃんの入院していた病室は四人部屋で、香織ちゃん以外は全員おばあちゃんだった。
「あら、お兄ちゃんが彼女連れてきたみたいよ」
ドアに一番近いベッドのおばあちゃんが、目をキラキラさせて叫んだ。
いや、彼女じゃないし。
なりたいけど。
奥の窓際のベッドに香織ちゃんは居た。
何となくリュウに似てる、でも顔そのものは小さい何だかはかなげな美人さん。
「うそぉ! リュウの妹、物凄く美人!!!」
思わず口から出てしまった。
「香織ちゃん、初めまして!」
そして、ポカンとしている香織ちゃんの右手を両手で握りしめてしまった。
「はじめまして、彼女さん……」
「あぁ、ごめんね。彼女じゃなんだ。はい、これお見舞い!」
買ってきたセブンティーンと明星を渡した。
「え? あ、あの」
ベッドサイドのテーブルには、数学と英語の参考書が……。
雑誌の選択、間違えたかしら。
「こいつノリ。同じクラス」」
リュウがそう言って、私の背後からプリンを差し出した。
☆ ☆ ☆
「そんなに笑ってたら、喘息の発作がでるでしょ!」
と、看護婦さん今なら看護師さん。
凄い剣幕で追い出されるまで、どうでもいい話で盛り上がった。
何話してあんなに笑ってたんだろう。
全く思い出せないんだけど、ここ何年もあんなに笑ってないな。
息も出来ないほど笑ったら、全部吹っ切れるのかな。
いや、シワが増えるだけかも。
あの日の私、今の私を見てどう?
そうか、後何年かしたら、あの頃のお母さんと同じ年になるんだな。
私、今まで何してたんだろう。
だめだめ、こんな事考えてたら一気に老け込んでしまいそう。
時間だけは誰にでも平等って言うけど、本当なのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます