第4話 このままじゃだめ 私もエアコンも

「今度の土曜にエアコン取り替えるぞ」

 リュウから電話があったのは1週間後。

 アキとの思い出のエアコンは、私が熱で倒れている間に代わりになりそうな部品を見つけて来て無理やり動くようにしてくれていたらしい。


なおったのかと思ってた。

 動くのなら、このままでも良いかなと思ったんだけど。

「臨時の部品だし、古いんだからまた急に止まるぞ」

 って。

 このままじゃダメって、分かってるわよ。

 すっかり体の調子も戻ったので、今度は本気で部屋の掃除に取り掛かった。

 ところで何でウキウキしてるんだろ、私。


 ☆ ☆ ☆


「先輩、最近なんか、機嫌いいっすよね」

 後輩君にまでこんな事言われちゃった。

「いいっすね、って。もう若手じゃないんだし、話し方気をつけなさい」

 一応、先輩としての威厳は保っておいたわよ。

 なのに、後輩君返事もせずにプイっと自分の席に戻っていった。

 今度の移動であれが上司になるのかと思うと気が重いな。


 ☆ ☆ ☆


 土曜日午前中。

 リュウがエアコンの取り換え工事をしている間、ずっとリュウのことを見ていた。

 うん、確かにこの人リュウだ。

 手のホクロも、高校の時と同じ場所にあるし。

 まぁ、しかしこのタイミングで現れるとか、何だろうね。

「そんな見んなよ。やりにくいだろう」

 私と同じく40歳になったリュウが、苦笑いした。

 坊主だった髪は伸びて、白髪まで交じってる。

「いつから私だって気付いてたの?」

「修理に来て、玄関のドアが開いた時から」

 驚いた。

 私、ちっとも分からなかったのに。

「言ってくれれば良いのに」

「気付いてると思ってたから」

 それで、あんなに馴れ馴れしかったのね。

 それにしても22年と言う時間を、あっさり一人で飛びこえすぎだよ、リュウ。


 ☆ ☆ ☆


 文化祭で出た廃材などを焼却するついでに行われる、キャンプファイヤーが伝統行事。

 帰宅時間が遅くなるから、自由出席。出席者は事前に参加申し込みをしないと参加できない。

 キャンプファイヤーのクライマックスは、最後の告白タイム。

 参加者全員の前で、好きな人に告白するの。

 告白する方、される方、見守る友達。青春よね。

「これ」

 3年の文化祭の前、リュウに参加申し込み書を手渡された。

「え?」

 これは……。

 期待、するじゃない?

「2年の時、実行委員で参加出来なかったって怒ってたし、仕方ないから一緒に参加してやるよ」

 は? 別に頼んでないけど。

 憎まれ口叩きながら、参加申込書に記入をしたの。

 どんな髪型が良いだろうとか、ちょっと赤めのリップ塗ろうかとか、毎日浮かれてた。

 でもさ。

 前日に香織ちゃんが入院しちゃって、それどころじゃなくなったんだよ。

 キャンプファイヤーの代りに、香織ちゃんのお見舞いにリュウと向かった。

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