第4話 ステータス偽造大失敗?

 というわけで登録をしたい、と伝え、まだ呆然としているお姉さんたちを置いてやっとのことで受付にたどり着く。まったく、受付だけでこんな騒ぎになるとは思わなかった。


「すいません、冒険者登録したいのですが」


 受付のお姉さんはとても綺麗な人で、グラマラスだ。

 耳が長いのでエルフ族かもしれない。初めて見た。


「…はい、ごめんね、冒険者は15歳からしか登録できないの? 今日はお父さん、お母さんと一緒かな?」


 はい。やはり子供扱いである。


「…あの、すいません、身分証明はこれで大丈夫ですか?」


 僕は理事長先生からもらった身分証明書を差し出す。


「ん? どれどれ? 確認しますよ。フフフ」


 絶対に子供のお使いぐらいに考えているのだろう。ニコニコして赤ちゃん言葉ではないが、幼い子に話しかけるような感じではある。


「げ! じゅ、ジュウゴサイ?」


 また同じ反応である。やはりそれほど童顔ということだろうか。ちょっと傷つく…。

 受付のお姉さんは何度も身分証明書を確認していた。


「う~ん、確かにこれは間違いない、ですね…。まさかこんな…」

「あの? 何か問題あるんでしょうか? 孤児院に早く仕送りできるようになりたいんです…」


 心配になってお姉さんに来てみたところ、お姉さんは途端に凄まじい勢いで処理を始めた。


「ちょ、ちょっと待っててね!」


 何がスイッチになったのかわからないが、とにかく動いてくれているので良しとする。


(何か訳ありなのね。きっと孤児院で借金背負わされたとか理由があるんだわ、こんな小さい子に…。なんとかしてあげなくちゃ!)


 たぶん、受付のお姉さんはこんな感じの勘違いで動いていると予想できるのだが、とりあえず登録が無事に済みそうで安心した。


 お姉さんは初心者向けの心得を説明してくれ始めた。


「…とにかく、まずは仲間を集って、パーティを組むことが一番安全ですよ。間違ってもソロでやろうとか考えないでね。そうね、最初は有力なパーティに入れてもらうのが一番いいわ。適性見せてごらん、私が斡旋してあげるわ…」


 ある意味とても親切だ。先ほどのケバいお姉様方も近寄ってくる。パーティ入れとか言われたら面倒なので早く逃げたいのだが…。


「適性は何を見せれば良いのでしょうか?」

「ああ、はいはい、じゃあこちらの水晶玉に手を乗せてみてね」


 僕は慎重に手を置く。ここでステータスを偽造した能力の出番である。大丈夫だ。理事長先生から太鼓判を押されたのだ。こんな水晶如きに破られるはずがない。

 相当綿密に打ち合わせたのだ。理事長先生や姉様たちからのアドバイスで、理事長先生や各姉様たちの5分の1ぐらいのステータスになるように調整していた。完璧である。


 …。しばらく沈黙がある。

 いくらなんでも少な過ぎただろうか。受付のお姉さんが黙り込んでいる。そして、


「うそ?」


 と一言呟いてまた黙っている。

 様子を見に近づいていた先程のケバいお姉様方も水晶を覗き込む。ついでに僕のお尻とか背中とか触るのは止めて欲しい。そもそもプライバシーという概念は無いのだろうか? 僕が一言言おうか迷っていると、


「い、いきなりAクラスの魔力なんて…」

「す、すごい!」

「なにこれ、火属性と風属性と二つも…」

「…天才だわ、絶対天才だわ」


 ケバいお姉様方が思い思いに口を開く。あれ? ステータス操作を間違えただろうか?

 確認してみたが、問題無さそうだった。属性2つって普通なんじゃないのか?

 ロタ姉とスクルド姉なんて3つも4つもあったぞ。理事長先生なんて全属性いけるし…。

 魔力も先生たちよりかなり少ない数値で留めているはずなんだが…。


「あの、フォルセティくんってどこの孤児院かな?」

「え? あ、僕はブリュンヒルデ孤児院ですけど…」

「「「え?」」」


 受付のお姉さん含め、ケバいお姉様方、そして何となく聞き耳を立てている他の冒険者さんたちも皆、びっくりして僕から距離を取る。

 周囲にいた冒険者さんたち、先ほど僕を睨んでいたゴツいお兄さんたちにも動揺が拡がる。


 そして以降絶対に目を合わせてくれない。それはそれで良いのだが、ケバいお姉様方もなぜだか見事に僕と距離を取り始めた。


「あの? なんでしょうか? なにか特殊な問題とか…」


 僕は心配になって聞いてみた。


「ないわ! 絶対ない! 安心してちょうだい。ええ、大丈夫ですとも。とにかく落ち着いて」


 落ち着いて欲しいのはお姉さんの方だが…。なんだろう、受付のお姉さんのこの慌て振りは?

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