課題8 「世界観を描写・説明する」

課題

  「世界観を描写・説明する」


 地下世界ニューランド。太陽がない。昼も夜もない。気温が低く寒い。ひかり草という草がかすかに光を発する。それがある場所は少し明るい。ダークエルフが支配し、奴隷として人間が働かされている。ダークエルフの食料は、鶏、野菜果物。住むところは樹の上の家。木の枝や葉で作られた清潔な家。ひかり草も植えられてあり、家の中も明るい。一方奴隷は真っ暗な中、冷たく濡れた地面に寝る。劣悪な環境で死者多数。主食は生のトカゲや虫。



作品


 少年は畑の野菜を収穫していた。体からは湯気が上がっている。ひと仕事を終え、白い息を吐いて空を見上げる。視界には闇があるだけだった。月も星もない。今が昼か夜かもわからない。

 半年前、奴隷の少年はダークエルフに売られ、この地下世界ニューランドへと連れてこられた。ここはダークエルフの国であり、人間が彼らの奴隷として働かされていた。気温は低く、地上だと真冬のような寒さがずっと続いた。

 少年は収穫した野菜を背負って運ぶ。足元に生い茂った「ひかり草」のおかげで、道は見える。このひかり草がなかったならば、ニューランドは真っ暗だ。だからひかり草は大切に扱われ、繁殖もされている。

 ひかり草のおかげかどうかわからないが、太陽がなくとも野菜や果物は育つ。収穫されたものはダークエルフの食卓に出される。この他にも鶏が飼育されており、こんな地下にありながらも、ダークエルフたちは食事にそれほど不満がないようだ。

 しかしそれらの食物が、奴隷の人間に与えられることはない。人間はトカゲや虫を捕まえ、それを生で食べている。生きてこの地下から逃げる希望を捨てていない人間は、明日も生きるために食う。

 餓死で死ぬ人間もいるが、病気で死ぬ者の方が圧倒的に多い。人間は冷たく湿った床に寝ているからだ。この地下で湿っていない場所といえば、樹の上くらいである。その樹の上にはダークエルフたちが住んだ。枝と草で作られたその家々は、清潔で、明るかった。ひかり草を植えた鉢が、いくつも家の中にあったのだ。

 少年は背負っていた野菜を指定の場所へとおろす。ダークエルフの監視員たちの鋭い視線を感じる。彼らの背後には、岩肌にはめ込まれた大きな木の扉がある。扉の向こうは、地上へとつながる長い長い階段が伸びているのだ。

 少年はもう一度上を見た。何度見ても、真っ暗闇だった。


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