課題7 「会話文を入れる」

課題

  「会話文を入れる」


 牢に老婆が一人、囚われていた。

 警備兵は、老婆に何者なのかを聞いてみた。

 その老婆は、自分が占い師だと言う。

 警備兵は、自分の未来を聞いてみる。

 老婆は、髪の毛と一滴の血と名前を知ることが必要だと言い、警備兵はそれに従った。

 間もなく死ぬ、そう警備兵は占われた。

 直後老婆が呪いの言葉を発すると、警備兵は死んだ。



作品


 警備兵は、牢の中にいる老婆を見た。

 彼女はなぜか、ニコニコと警備兵に会釈する。

 警備兵は、その老婆が何者なのか知らなかった。ただ、彼女とはあまり口を聞くな、と仲間から忠告されていた。


 「婆さん、あんた何者なんだい?」

 老婆のにこやかな笑顔を見て、少しくらいの会話なら別に構わないだろうと警備兵は判断した。

 「わたしゃ、占い師ですよ」

 ほう。しかしなぜ占い師が、牢へとぶち込まれたのだろうか。警備兵は不思議に思う。しかし仲間の忠告を思い出し、ならばその疑問の代わりに、自分の未来を占ってもらおうと考えた。

 「じゃあ婆さん、俺の未来を占うことはできるかい?」

 「できます、簡単ですよ。ただ必要なモノが3つあるのです。1つ目は、あなたの名前を知ること。2つ目は、あなたの髪の毛が1本いること。3つ目は、あなたの血が1滴いること。それで、あなたの重要なことに関する未来が大体わかります」

 嘘を言っているような表情ではないな、と警備兵は思った。それに仮に占いがインチキだったところで、金を払っていないのだ。俺に損はない。

 警備兵は小さなグラスを持ってくると、まずそこへ髪の毛を1本抜いて入れた。そして、剣先で自分の指を突き、血を数滴入れる。

 「ほらよ婆さん、これでいいか。あと、俺の名前はヘンリー・ホワイトだ」

 老婆はそれを受け取り、「かしこまりました。では、あなたの未来を占って差し上げましょう」と微笑んだ。

 その微笑みが妙に気味が悪く、警備兵は少し後悔した。

 老婆がグラスへ指を伸ばすと、髪の毛と血を口の中に入れ、ブツブツと小声で呪文を唱え始める。

 しばらく呪文は続いた。

 仲間に知られるとやばいな、警備兵は不安に襲われ始めた。そこで、老婆は顔を上げた。

 「占えましたよ」

 老婆の笑顔に、警備兵はホッとする。

 「それで、俺の未来はどうだった? そろそろいい結婚相手が見つかりそうか?」

 警備兵の問いにしばらく黙り、老婆の表情は嫌らしいものへと変わっていった。

 「あなたはすぐに死ぬ。わたしが呪いの呪文をかけたからね」

 その言葉に警備兵は怯えて逃げようとしたところ、体に力がなくなり地面に崩れた。



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