課題2 「主人公の心理描写を入れる」

課題

 「主人公の心理描写を入れる」


 見習い戦士マシューが、ゴブリンへ剣を振り下ろした。

 ゴブリンはその剣を横に軽くよけたかと思うと、すぐさまマシューへと前かがみに突進してきた。

 そしてマシューの足首に噛みついたのだった。



作品


 マシューは師匠の言葉を思い出す。「観察だマシュー。敵を観察することで、相手の力量を測り、戦いを有利に運べるようになる」

 今ゴブリン一体を目の前にして、武装したマシューは敵から何かつかめないかと必死に観察する。敵意をむき出しにこちらをにらんでいるが、ゴブリンは何の武器も持っていない。鎧すら装備していない。しまりの悪い口から涎を垂らしている姿は、どこか間抜けなようにも映る。

 圧倒的に自分が優位に立っているはずだ……。ただ、尖った爪が危なそうだぞ。

 初めての戦いで、マシューはどう動こうか迷っていた。ゴブリンから攻撃してくるのを待つか? いや、相手は無防備だ、こちらから攻撃を仕掛けた方がいいに決まっている。それに逃げられることだってあるのだ。

 マシューがゴブリンの太ももを見ると驚いた。人間とは比べ物にならないほど、たくましい筋肉がついているのだ。走力はゴブリンの方が速い。マシューはそう結論づけた。

 ここは、先手に出た方がいい。 

 「いくぞっ!」

 とマシューは走り出し、ゴブリンの頭に向け剣を振り下ろした。

 よし! この距離からはよけられないはずだ。なかば勝利を確信したマシューをあざ笑うかのように、ゴブリンの口が緩んだように見えた。かと思うと、目の前からゴブリンが消えたのだ。

 「えっ?」

 マシューの剣が空を切った。突然、視界の下の方にゴブリンの背中が見える。マシューはようやく理解した。ゴブリンはその脚力で剣筋を横に飛んでよけたのだ。それだけでなく、すぐさま自分の足元に向けて突進してきたのである。

 しまった、もう遅い!

 気づくと同時に、右足首に激痛が走った。ゴブリンにアキレス腱を噛みちぎられたのだ。

 何といことだ。ゴブリンの尋常ではない太ももの筋肉を認めていたにもかかわらず、それがどれほど戦いを左右するのか理解できていなかった。そればかりでなく、ゴブリンの牙を見落としていた。思い出せば、最初から牙がやつの唇からはみ出ていた。涎を垂らしていることに気を取られ、牙に気づけなかった。

 「俺は、とんでもなく……未熟だ」

 マシューは自分のレベルを理解し、なおも睨みつけてくるゴブリンに体を震わせていた。

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