第5話 思い出の場所。

 目が覚めた。


 うう、ちょっと寒い。

 おじいちゃん居なくなってる。もう夕方かぁ。お日様も陰ってるし寒いわけだよ。


 うん。ちょっと寝たら落ち着いたかな。


 ほんとはあたしだってわかってるんだ。タケルとあたしじゃ違うんだって。

 街を往く沢山の人の中に人間はほとんど居ないっていうのも。


 働くアンドロイドの人やロボットの人にも個性が認められるようになったこの世の中でも人間は別格で。

 保護対象だっていうのもね。


 特に人間で若い子供はほんと稀少。

 あたしみたいなアニマノイドじゃ釣り合わないのも……。




 と。

 顔をあげると目の前にアオが居た。

 じっとこちらを見てるアオ。


「ああ、ごめんね。アオ君? 初対面なのにあんな風で。あたしちょっと悪いことしたなって思ってたんだ」

 そう声を掛けてみた。なんだかじっと黙ってこちらを見るアオが何を考えてるかわからなくて。


 アオは……。

 ちょっと顔をクシャッとして、


「僕じゃ、だめ?」


 そう言った。


 あたしは。


 ああ、アオの気持ちもわかる。

 でも。ごめん。

 あたしは……。


「ごめん……」


 あたしのその言葉を噛みしめるように、くしゃっとした顔のままのアオはゆっくりと振り返り庭を出て行った。


 ごめんね。アオ。ほんとごめん。でもやっぱりあたしはタケルが好きなんだ。


 夕暮れの空を見上げ、あたしは縁側から降り歩く。

 目的地は……、そう、あそこ、だ。


 あたしの思い出の場所。

 今日くらい泣かせてよ。いいよね。

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