エピローグ:雨の奏でる詩、永遠の祈りを込めて/03

 ――――その頃、間宮遥は自室で独り読書に耽っていた。

 二階の自室、開け放った窓からはささやかな雨音と、湿気を孕んだ優しく穏やかな風が吹き込んでくる。

 そんな穏やかで、優しい風に肌を撫でられながら、遥が静かに本を読んでいると。すると……彼女はふとした時に、突然強烈な頭痛を覚えていた。

「っ……!?」

 今まで感じたこともないほどの、強烈な頭痛。

 こうした痛みを覚えること自体は、ここ最近何度かあった。だが……この痛みは今まで感じた何よりも強烈で。目眩がするぐらいの、身体の力が抜けてしまうぐらいの強烈な頭痛に、遥は思わず手にしていた本を取り落とし、そのまま椅子から転げ落ちてしまう。

 バタンと床に倒れ、そうして強烈な頭痛に苦しむ中――――遥は、徐々に思い出していく。これまでの全てを、自分が何者で……そして、どう生きていたのかを。

「思い、出した……何もかも」

 激痛のあまり脂汗を掻いた顔を上げ、ボソリと呟く遥。

 そんな彼女の傍らで――――机の上に置いていたトランプが窓からの風に吹かれ、はらりと捲れる。

 ふわりふわりと部屋の中を舞い踊り、ひらりと机の上に乗ったジョーカー。番狂わせのワイルドカードが……まるで、間宮遥がこの先に辿る運命を占うみたく、静かに嘲笑っていた………………。





(Chapter-07『黒い勇者、その名はヴァルキュリアXG』完)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る