エピローグ:雨の奏でる詩、永遠の祈りを込めて/01

 エピローグ:雨の奏でる詩、永遠の祈りを込めて



 ――――篠崎邸。

 人里離れた山の奥に建つ、広大な敷地を有する洋館。その広間にある長テーブルでは、誕生日席に着く篠崎十兵衛の傍ら……潤一郎が包帯まみれの満身創痍な姿で座っていた。

「こっぴどくやられたものですわね」

 そんな弟の無様な姿を見て、独り立っている香菜は嘲笑するような笑みを浮かべながら彼に嫌味を言う。

 すると潤一郎は「面目次第もないよ」と言い、落ち込むみたいに肩を大きく落としてみせる。

「それにしたって、あの新しいの……ヴァルキュリアXG。意味分かんないぐらいに強くて、意味分かんないぐらいに格好良かったよ」

「格好はさておき……アルビオンがあそこまで叩き潰されるぐらいですものね。確かに潤一郎、貴方の言う通りアレは規格外ですわ。間違いなく、今後私たちの脅威となりえる存在ですわ」

「なあに、心配することはないよ香菜。イザとなれば私自ら出張れば良いだけの話だ」

 はっはっは、と笑いながら言う十兵衛の言葉に、香菜は「……お爺様」と恐縮気味に呟いた後、

「……上級バンディット、或いは特級を使わねば、あの脅威への対処は難しいかもしれませんわね」

 と、至極真剣な語気で続けてそう呟いた。

 十兵衛はそれに「うむ」と頷き、

「七二体から成る、この私……ソロモンの近衛たる特級バンディット。確かに香菜の言う通り、彼らクラスの実力でなければ対応は難しいやも知れんな」

「ええ、そうですわねお爺様」

「どうやら我々は、彼奴あやつらを……P.C.C.Sを少しばかり見くびり過ぎていたようだ。認識を改める必要があるやも知れん」

「とにかく姉さん、アルビオンの修理と強化を頼むよ。今回は真が上手く助けてくれたけれど、次もこう上手くいくかは分かんないからね」

「はぁ……仕方ありませんわね。少しばかり時間は掛かりますけれど、構いませんわよね?」

「大丈夫だよ、姉さん」

 呆れ気味な姉の問いかけに頷いて、潤一郎は壁のスクリーンに映る写真……黒い勇者、ヴァルキュリアXGを写した写真をじっと見つめる。

「ヴァルキュリアXG……美しいな、本当に格好良い」

 その言葉は皮肉でも負け惜しみでもなく、本当に心の底から滲み出た……篠崎潤一郎の、嘘偽りのない思いだった。

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