第十七章:烈火と疾風、導かれるままに
第十七章:烈火と疾風、導かれるままに
大爆死したチーター・バンディットの上げた爆炎と、その中から現れるアンジェと戒斗。そんな二人の姿を、すぐ傍にあるビルの屋上から――――伊隅飛鷹は風谷美雪とともに見下ろしていた。
「……やるじゃないか」
眼下の二人を見つめながら、飛鷹が小さく笑んで呟く。
「イザとなれば私と美雪で割って入るつもりだったが……どうやら、杞憂だったらしい」
「そうですね、師匠」
飛鷹の言葉にコクリと頷きながら、美雪は遠くにある戒斗の姿を……ヴァルキュリアXGの姿を見つめながら、独り複雑そうな表情を浮かべていて。飛鷹は隣に立つそんな美雪の横顔をチラリと横目に見つつも、しかし敢えて何も言葉を掛けなかった。
そうしていれば、眼下では戒斗たち二人の元に彼女が……神姫ウィスタリア・セイレーン、間宮遥が近づいてきていて。二人に駆け寄るそんな彼女の姿を見下ろしながら、飛鷹は小さくひとりごちていた。
「…………美弥、お前はお前のままでいい」
そう呟くと、飛鷹は傍らに立つ美雪に「行くぞ」と告げ。クルリと踵を返すと、彼女とともに歩き去って行く。
歩きながら、スッと懐から取り出したハーモニカ。飛鷹はそれを吹きながら、美雪とともにビルの屋上から姿を消す。
後に残るのは、飛鷹のハーモニカが奏でる……遠く、何処か哀愁の漂う音色だけだった。
(第十七章『烈火と疾風、導かれるままに』了)
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