第十二章:白き流星/02

 ――――アルビオン・システム。

 いいや、訂正した潤一郎曰く『プロトアルビオン』か。

 とにもかくにも、戒斗たちの前に姿を現したその純白の戦士は……篠崎潤一郎が装着したそれは、やはりどう見てもパワードスーツの類だった。

 それこそ戒斗ではないが、ヴァルキュリア・システムを思い起こさせる。

 だが、見た目は戒斗の装着するVシステムとはある意味で何もかもが対照的だった。

 潤一郎の身を包む純白の装甲は、滑らかで……なんというか、ツルッとしている。艶のある色合いも相まって、装甲というよりもどちらかといえば車のボディの方が近いような見た目だ。

 それこそフェラーリやランボルギーニなんかのスーパーカー、或いはF1レースに用いられるフォーミュラーカーを連想させるような装甲だ。

 そんな装甲が描くシルエットも曲線が多く、頭の上から足の先までの全てが滑らかなボディライン。ゴツゴツとしていて硬質的な、本当に戦闘兵器といった無骨な印象のVシステムとは正反対の見てくれだ。

 そうした見た目のプロトアルビオン、何よりも特徴的なのは目元だろう。

 潤一郎の頭を包み込むヘルメット、その目元には大きな……ゴーグル形状の青いバイザーが埋め込まれている。それこそカーレーサーや、或いは戦闘機のパイロットが被るヘルメットの目元みたいな感じだ。

「誰なの、アンタは一体!?」

 そんなプロトアルビオンの、潤一郎の前へと躍り出ながら、セラが戸惑いながら問いかける。

 今までは生身の人間相手だからと静観していた彼女だが……流石に相手がこんな物まで持ち出してきたとあれば、セラも黙っていられなかったらしい。自分が相手にすると言わんばかりに潤一郎と、そしてヴァイパー・チームとの間にザッと割って入りながら、彼女はそう問うていた。

「僕かい? 僕はね――――」

 セラの問いかけに対し、潤一郎は手元でアルビオンシューターをクルクルと回しながら……やはり軽薄な態度を貫いたまま、彼女にこう宣言してみせた。

「――――正義の味方、かな?」

「……アンタ、正気?」

 唖然とするセラに対し、潤一郎は「正気も正気さ」とおどけた調子で返してみせる。

 だがセラには、どうしても今の言葉が冗談としか思えなかった。

 ――――ネオ・フロンティアの人間が、正義の味方だって?

 笑えないジョークだ。もし本当に冗談のつもりで言っているのだとしたら、センスがなさ過ぎると言わざるを得ないだろう。バンディットを使役し、大勢の人々を苦しめ……そして殺し尽くしてきたネオ・フロンティアの人間。しかも篠崎の血族が口にする言葉としては、あまりにも馬鹿馬鹿しすぎる言葉だ。

 そう思っているのはセラだけじゃない、傍で聞いていたウェズやヴァイパー・チームの隊員たちと、そして戒斗とて同じことだった。

 だが、当の潤一郎本人はどうやら本気で言っているようで。言葉を失ったセラたちの様子を見て落胆したように肩を竦めると「……まあいいさ」と呟き、

「君らがどう思っていようと、正義は僕らの側にある。

 ――――さあ、覚悟しろ悪の秘密結社め! お前たちの野望はこの僕……篠崎潤一郎、いいやアルビオン・システムが叩き潰す!!」

 高らかにそう宣言すると、バッとアルビオンシューターを構え――――セラ目掛けて光弾をブッ放してきた。

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