第十一章:オペレーション・デイブレイク/01

 第十一章:オペレーション・デイブレイク



『…………そろそろ、時間だね』

「ええ。アンタの出番は多分無いと思うけれど……気を付けなさいよ、アンジェ」

『……うん。セラも気を付けてね』

「分かってるわよ。……それじゃあね」

 ――――数時間後、何処かのビルの屋上。

 夜闇に染まった淡い星空の下、夜風に吹かれながらセラは独りそこに立ち、耳に当てたスマートフォンでアンジェと話をしていた。

 暇潰しがてらの雑談だ。そうしている内にも何だかんだと作戦開始時刻……二〇時になり。するとセラは最後にそんな言葉を交わし合った後、アンジェとの電話を切った。

 私物のスマートフォンを懐に収め、ふぅ……と小さく息をつく。

 そうしながら、セラは何気なく夜空を見上げてみた。

 ……綺麗な夜空だ。街明かりが煌めいているから、見えるのは精々一等星ぐらいなものだが。それでも、点々と星明かりの瞬く夜空は……不思議なぐらいに、綺麗だった。

「――――!」

 そんな星空を見上げていると、セラは頭の中に甲高い耳鳴りのような感覚を覚える。

 この感じ……どうやら、予定通りに誘い出されてくれたらしい。

「――――早速来てくれたわね」

 セラはそんな耳鳴りによく似た感覚を頭の中に感じながら、夜空に浮かぶ月の方を見上げてみる。

 すると――――綺麗な満月の月明かりを背にして、あのコウモリ怪人が……バット・バンディットが姿を現していた。

「さあてと、折角来てくれたことだし……遊びましょうか」

 飛来するバット・バンディットを見上げながらセラは不敵に笑むと、身体の前で両手をクロスさせる構えを取ってみせる。

 クロスさせた両手首を、手の甲を見せつけるようにクルリと翻す。

 すると――――パッと一瞬だけ眩い閃光が瞬いたかと思えば、セラの両手の甲に赤と黒のガントレットが現れていた。

 ――――フェニックス・ガントレット。

 現れたそれの丸いエナジーコアを輝かせながら、セラは空から迫るバットと正対し……そして、叫ぶ。

「――――重装転身!!」

 雄叫びを上げるとともに腕を腰の位置まで引けば、彼女の身体を眩い閃光が包み込み……そうしてセラは姿を変える。重装の神姫、赤と黒の戦乙女……ガーネット・フェニックスの姿へと。

「さあて、行くわよ!」

 基本形態のガーネットフォームに変身したセラは、飛びかかってくるバットの攻撃を飛び退いて回避した後……そのままビルからも飛び降り、逃走を開始する。

 ――――オペレーション・デイブレイク、作戦開始。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る