第四章:崩壊の序曲は前触れもなく/02
それから三十分ぐらい後。三人は街の商店街――――アーケードで頭上が覆われた賑やかな通りを、三人横並びになって歩いていた。
歩いている三人は、この商店街にある平屋建てのスーパーマーケットに行ってきた帰りで。相変わらず遥が手で押している、ガス欠を起こしたニンジャZX‐10Rには……買い物帰りであることを示すかのように、幾つかの膨らんだレジ袋が引っ掛けられている。
どれもこれも、今夜の夕飯……すき焼き用の食材が詰まったレジ袋だ。話の流れで今日はアンジェも戦部家で一緒に夕飯ということになったから、食材は戒斗に彼の両親、居候している遥と、そしてアンジェの計五人分を買い揃えた。
「それでねー、カイトってばその時さ……」
「おいやめろアンジェ、ヒトには言うなってあれほど言っただろ!?」
「んー、そうだっけ?」
「そうだよ!!」
「あはは、ごめんごめん。でも遥さんだし、言っちゃっても良いんじゃない?」
「……まあ、な。そりゃそうだが」
「ふふっ……お二人とも、とても仲がよろしいんですね」
「うんっ! 当然だよねー、カイトっ!!」
「ああ……かもな」
笑顔のアンジェと、同じく表情を綻ばせた戒斗。そしてそんな二人の話を聞きながら、柔に微笑んでバイクを押す遥。
そんな風に談笑をしながらアーケード商店街を歩く三人だったが、しかし彼女たちはまだ気付けていなかった。崩壊の序曲が、幸せに満ち溢れた日常の終わりが――――すぐ傍にまで忍び寄っていたことに。
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