二十五発目 「本気」と書いて「楽しい」と読む
実況「さぁ、メンバー紹介です!指揮官方によるエキシビションマッチ!Aチームは!総指揮官を務めるアーチャーにして、武術の使い手!トーヤ!そして、剣術もさる事ながら、なんとアーチャーであるという、ミドリ!そして、今回の訓練においてその魔術における力を周りに知らしめた、アルバ!」
なんか、めっちゃはっずいなこれ、でも、女子供でも正当に評価してくれるのはありがたいな。
実況「続いて!Bチームです!我が国の盾!動かざることまさに山の如し!ガラン剣士隊長!切り込みは任せろ!速さこそが、力の糧!フォイト拳士団長!たとえ先の見えぬ暗黒であろうと、高速で動く的であろうと、圧倒的精度の元撃ち抜く!シキ弓兵長!この私に勝てるものはいるのか!広範囲殲滅はお手の物!圧倒的破壊力でねじふせる!マリッド魔術部長!さぁ、熟練の力に彼らは追いつけるのか!見物です!」
まぁ、オッズはあちらに分があるよなぁ、ま、俺達も楽しめればいいから本気で行くかなぁ。本気で行けるか?行けるだろう、信じよう。
冬弥「幸い、俺らとあっちは結構離れてるらしい、だから、作戦練ってガチろうか」
翠「え?大丈夫かな?」
冬弥「訓練してて思ったけど、フォイトとガランなら翠を抑えれるぞ、多分だが」
翠「まじ?!凛ちゃん以来、人間同士でやっと戦えるじゃん!やった!」
冬弥「作戦は簡単に行こう、アルバは後衛、俺は中衛でどっちにもサポートに回れるように立ち回る、翠は…」
翠「私は…?」
冬弥「前衛で自由に暴れまわってこい!」
翠「やったー!」
鬱蒼と木々が茂る森の中、翠がガッツポーズで喜んでいる。これ、観客には筒抜けなんだろうなぁ。
冬弥「ストップ、いるな」
森をぬけた先に、ガランとフォイトが警戒態勢で立っている。
翠「どうする?もう、一気に行く?」
冬弥「いや、1回小手調べだ、コール M4カービン 」
目測で3km…当たるな、風向・風速共に問題なし、抵抗調整完了、角度良好。
冬弥「喰らえ!」
引き金を引いた発砲音に驚いたか、4人とも向いたな。ん、フォイトにあたって…
冬弥「ふぁっ?!あいつ取りやがったな…どこのバケモンだよ」
フォイトの手からなにか落ちたな、やっぱりか。
翠「んー、変更する?銃で行く?」
冬弥「変更すっか、しゃーなしだ、両方でヘイト稼いでアルバに決めてもらおう」
アルバ「わかったのです!できるだけ強いのぶち込むのです!」
このかわいさでこんなこと言ってるもん、才能ってすげぇな。
冬弥「とりあえずトンプソンで双方向からの掃射、削りにきれなそうなら、臨機応変に出しまくれ、むーただけは絶対に出すなよ、殺したくない」
翠「了解、あまりやばそうならCQCで対応するから頑張っ!」
冬弥「ちょっ待っ!あいつ後先考えず…アルバ!好きなだけ詠唱していいぞ!時間はありったけ稼ぐから!」
アルバ「了解なのです!清楽に沈みし紫炎の闇よ…」
アルバが詠唱開始したし、行きますか…。
冬弥「よぉ!フォイト!さっきはよくも人の弾掴んでくれたなぁ!」
フォイト「魔力の感知が出来ればあんなもの造作もないぞ!」
冬弥「ならこれはどうかな!」
装填完了、現在地修正、敵位置補足完了、軌道修正。
冬弥「何発まで耐えれるかな?」
引き金に指をかけ、目一杯の力で引く。銃口から超高速で弾が発射される。反動に対して反対の力をかけながら足を地につける。
フォイト「我が国の拳士の力!舐めるなよ!」
フォイトは全ての弾を両手で掴むもしくは弾き飛ばした。ん?なんかいるな。
冬弥「そこ!」
シキ「ちっ、そう簡単に決めさせてくれぬか」
冬弥「前衛は足止めできてる、中後衛潰すか」
今の位置関係は翠の正面にガラン、俺の正面にフォイトが対峙して、シキはどちら側にも対応できるように結構な距離をとって間に、マリッドは…ん…どこっておいおい
冬弥「翠!後ろ!」
翠「ん?ってうわぁ!」
翠は、自身の後ろで小規模の魔法陣を後ろに並べているマリッドに驚き、ガランをとびこえてマリッドから距離をとる。
ガラン「逃げられると思うなよ!」
ガランが元々持っていた片手剣から手を離し、背に負っていた大剣を引き抜いて翠との距離を詰める。
冬弥「させるかよ!コール!FA‐MAS!」
左手にファマスを呼び寄せると、そのままマリッドの魔法陣に弾を打つ。
マリッド「っ!」
マリッドは自身に結界をはり、攻撃を防ごうとするも、目の前で起こったことに目を見開いた。
冬弥「錬成中の魔法陣に高速で魔力を入れ込むと破壊できるんだよ、しらなかったか?」
マリッド「ならば魔法陣を使わなければいいのよ、ウォーアップ!」
マリッドが杖を掲げると、フォイト達の体が光に包まれた。
冬弥「バフか…じゃあ、速度をあげるか?」
フォイト「ふっ、無駄だ」
二丁目のトンプソンの引き金をひこうとすると、フォイトが距離を一気に詰め、俺の手を弾いた。その衝撃で右手の銃は吹き飛ばされた。
冬弥「ちっ」
ホルスターからデザートイーグルを抜き、頭に直接ぶち込む、が、フォイトは手で反応し、弾を掴んだ。
フォイト「魔闘術 正拳二連」
フォイトが流れるように方を構え、正拳突きを俺に打ち込む、一発は避けきれたが、もう一発は腹にくらってしまった。血が逆流した。口の中が血の味する。あばら行ったなこれ。
シキ「このまま行かせてもらうぞ!死にはしない!安心しろ!」
翠「ちょっと!冬弥!」
ガラン「お前の相手は俺だ!残念ながら行かせねぇぞ!」
翠がこっちに手を貸そうとするが、ガランとマリッドに阻まれる。
冬弥「はぁ、くっそ、ミスったな」
シキ「三連、五連、七連!」
シキは三本矢を掴み、放つ。それに続けるようにシキの手からどんどんと矢が放たれてくる。
冬弥「あーくっそ、合気 見切り」
最短距離、一番労力がすくない道順は確実に存在する。それを瞬時に見極め、動くのが見切りだ。
フォイト「やっと両刀使いになったか、こちらも行かせてもらう 魔闘術 ブラッド」
冬弥「なぁっ!」
フォイトが、拳を強く握りしめる、拳から血がぽたぽたと垂れ、その血が拳を包む。
冬弥「おいおいおい、なんだそれ…」
フォイト「魔闘術の真髄、とくと見よ!」
フォイトが拳を強く突き出すと、拳から出た波動が狼のように変化し、俺の首元へ飛んでくる。
冬弥「動くのがやっとのやつに本気だすなって!見切り!」
翠「冬弥!大丈夫手貸す?!」
冬弥「要らん!ケガだけはすんな!」
フォイト「この状況でよそ見とはな」
フォイトの後ろからシキが放ったやが飛んでくる、フォイトはシキの矢の軌道を拳でずらし、多方向から攻撃する。
冬弥「くっそ、伊達に国の最高峰にいねぇな、ゴハッ」
あ?手、また吐血した?さっきので内臓までやられたのか…やっば、意識が持ってかれ
フォイト「よく頑張ったな、これで終わりだ」
冬弥「あぁ、チェックメイトだ」
フォイトの拳が落ちる前に俺の体が地面から浮いた。
翠「あほ!ほんとに死にかけじゃん!」
翠が泣きそうな目で俺を抱えて飛び出した。
アルバ「準備OKなのです!その人、龍の子より息吹せん、彼の敵を滅ぼさん、燃やし尽くし、凍りつかせ!氷炎龍!」
アルバのが詠唱を終えると、後ろに錬成された巨大な魔法陣から、1人の黒い影を纏った龍人を召喚した。
ガラン「ちっ、召喚士か!マリッド!バフはいい!大規模魔法!シキはマリッドの護衛!フォイト!叩くぞ!」
フォイト「了!」
シキ「マリッド!周りは気にせず遠慮なくやれ!」
マリッド「わかった!」
ガランが前に出ようとすると、龍人は口に青と赤の炎をくゆらせ、上を向いた。
ガラン「ブレスか!フォイト!マリッドを守れ!」
ガランとフォイトは目を合わせ、龍人とマリッドの間に入る。
龍人「燃ゆれ深山、凍れ大河」
龍人の放った二色の息吹はマリッドに向けてまっすぐ放たれた。ガランとフォイト、が間に立ち塞がり、全身全霊をかけて守る。
龍人「貰った魔力はここまでだ、ビジャ、元気でな」
息吹を吹き終わったあと、龍人は魔法陣に消えた。
煙が晴れると、肌が焼け焦げ、満身創痍のガランとフォイトが地に膝をついていた。
ガラン「くっ…そが…」
フォイト「マリッド…行け」
マリッド「行くわよ!その光、全てを穿て!クリッドスピア!」
錬成された魔法陣に無数の光の槍が出現し、俺らの方へむく。
翠「ちっ!弾、たりろ!」
翠が手に持っているトンプソンを乱射する。
シキ「やら…せるか!」
翠のうった弾はシキによって放たれた矢に半数以上が撃ち落とされた。残った半数が魔法陣に当たるも、まだ数百本以上残っている。
冬弥「ちっ、これでも喰らえ!」
片手に持っていたハンドガンをマリッド目掛けてぶち込む、マリッドは魔法を止めることなく、目をつぶり、腹部に弾を受け、詠唱を終え地に伏す。
マリッドによって放たれた光の槍が俺たちの体を貫いた。
冬弥「あぁ、くっそいってぇ…足りるか?」
翠「んっ…内臓に行ったかも、やっばいな」
アルバ「まだ、大丈夫…な、のです」
ガラン「ちっ、腕が、片腕上がんねぇ」
フォイト「クソが…片目いったか」
シキ「ぐっ…」
それぞれが、それぞれの傷を負いながら、立ち上がるのもやっとのからだで立ち上がった。
最後によろよろと立ち上がったマリッドが口を開いた。
マリッド「ふっ…うぅ、私らの負けよ」
ガラン「はっ?!おい!」
フォイト「まだやれるぞ!相手もギリギリだ!」
冬弥「そうだ…逃げんのは許さねぇぞ」
マリッド「逃げる気は無いわよ、私の魔力は切れた、それに前衛が死にかけ、相手も動けなくても全員が遠距離を持っている。もう負けよ」
シキ「だが…!」
マリッド「もう、無理よ、あなた達、それとも団員達に無様な姿を見せる気?」
翠「!」
一瞬マリッドから凄まじい気が発せられた。
ガラン「わかった、俺らの負けだ」
ガランが、大剣を地面に落とした。それを見て、フォイトも地面に倒れた。
実況「えぇ、団長チーム降参により、勝者!冒険者!」
翠「ふぃー、まじでギリギリ、生身で魔法受け止めるとか異世界ならではだねぇ」
冬弥「それなぁ、まじしんどいった」
アルバ「冬弥!ありがとなのです!庇ってくれたのです!」
アルバが俺を抱きしめてくる。待って、マジで死ぬ。
冬弥「アルバ…ちょーっと、意識飛びそうだから我慢してくれ」
アルバ「あ!ゴメンなのです!この言霊に乗りし魔の力よ、味方を癒し、力を与えよ、エリアヒール!」
アルバの魔法により、草原が緑色の優しい光に包まれた。
翠「あったかい…?!凄い!体が動くように!」
ガラン「おー、ほんとだ!嬢ちゃん!すげぇな!」
マリッド「えっ!ちょっ、はっ?!広域範囲回復魔術?!その歳で?なんて才能なの…」
この場でマリッドだけが驚いていたのは面白かった。たしかに、RPGとかでも高レベで手に入るスキルだよな。
翠「ねぇ、冬弥、アルバってすごい子?」
冬弥「そーだろ、魔力は1人前ってウェドが言ってたし」
翠「たしかに」
魔術師「それではみなさん!帰ります!テレリッド!」
俺たちが草原から、先程までいた壇上へと戻ると、大々的な歓声に場は包まれた。
ガラン「お前ら!訓練すれば人間でもこうなれる!老兵は経験と技術を活かせ!新兵は力をつけ策を講じろ!お前らはまだ力を伸ばせる!人間はまだまだだ!我が国の騎士団長として、お前達がこの国にいてくれる事を本当に誇りに思う!これからもよろしく頼む!」
わぁぁぁと、大歓声が湧く。これが長たる者のカリスマだよな、おれも道場でリーダーを任されそうになったけど無理だもん、フケたよ、当然。
翠「冬弥!ほら!冬弥の番だよ!」
んー、なんも考えてないんだよなぁ。
冬弥「じゃあ、先ず訂正するとして、今回俺らが勝てたのはまぐれに近いです。次やっても勝てる保証はねぇ。あと、今回のMVPは誰かってーと魔術師のふたりだな。何を言いたいかって言うと…死と隣り合わせで過ごすんだ、同じ相手と同じ状況で戦って勝てると思うな、鍛錬を怠るな、武器の整備を怠るな、用心の仕方を怠るな、自分の命の重みは自分にしか分からないんだ、自分の手綱は手にしっかり括りつけておけってことで、以上」
しんとばが静まりかえる、滑った?草生やすぞ。
次の瞬間拍手と歓声が湧き上がった。 伝わってくれたか、自身の心が伝わってくれるのはありがたい限りだよ。
ガラン「それじゃあ、今回訓練講師に入ってくれたトーヤ達を拍手で送ってやれ!」
うっわぁ、これってこんなに恥ずいもんなんか、離任式の先生の気持ちがわかった気がする。
冬弥「あぁぁぁ、疲れたぁ」
翠「疲れたねぇ、今日これからどうする?依頼1件はこなしとく?」
冬弥「じゃあ、いいや、俺あんま今回仕事してないし俺一人で適当に終わらせてくるわ」
アルバ「私も行くのです!」
冬弥「アルバはだめだ、今回いっぱい動いただろ、ゆっくり休んでろ」
アルバ「私も行きたいのです…」
うぐ…そんな目で見ないで、おれの良心の呵責が….
翠「そんな声出してもダメ、冬弥、ホントに行く?」
冬弥「あぁ、1日1個だけでもやっとかないと後でたれてくるかんな、昔から継続は力なりって言うしな」
翠「そっか、じゃあ、私はアルバと一緒にいるから行ってらっしゃい」
冬弥「おう」
その後、さっさと帰って2人に会うためにオークの巣を速攻でぶっ潰してきましたとさ。まぁ、俺の嫁と娘が可愛いからしゃーなし。
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