二十四発目 最強銃士と後人育成Ⅲ



「さて、治療も終わったし、そろそろ訓練開始しようか」

マリッドは回復術士達に一瞥した後に、言葉を続けた。よし、そろそろ俺も真面目にならないとなぁ。

「じゃ、騎士と剣士は俺とフォイトが担当する」

「あぁ、じゃあ私はガランのとこに行けばいいかな?」

「あぁ、頼む、アルバは後の魔術訓練で手伝ってもらうから」

そう言うと、アルバは少ししょんぼりした顔でこくんと頷いた。…そう言うのに強くないんだよなぁ…

「俺と一緒のとこに来るか?」

少ししゃがんでアルバの顔を覗いてそう聞くと、顔がぱっと明るくなった。かわいいなにこれ。

「いくなのです!あ、っでもついて行っていいのです?」

「ん、大丈夫だぞ、できることからやるから」

出来ないことを無理強いする訓練は訓練じゃねぇ。そうなったらそれは修行か苦行を強いているだけだ。それすらも考えられないような訓練を施行する国はすぐさまに滅びるだろう。持論ではあるがな。

「さて、やるか、フォイト?さっき言った感じでいいか?」

「うむ、さっき話した形でよいと思うぞ」

「よし、じゃあ改めて、剣士と騎士の訓練を開始する、ここでは剣を失ったり、寝込みを奇襲された時の動きを知るために徒手空拳の動きを学んでもらう、魔闘士の戦いが出来るやつはフォイトに、それが難しいやつは俺の方に並んでくれ」

すると、だいたい半々、フォイトの方が6割くらいで分かれた。すげぇな6割も他方面の魔力の扱いがわかるやついるんか、さっき手合わせてみてわかったけど、ここって結構レベルが高いらしい。

「じゃあ、1から説明するぞ」

俺の説明したことは3つの武術、ひとつが合気、もうひとつがボクシング、あとひとつが、空手だ。多分一番というか、戦争などの多対多の対人戦闘において強みとなるのは空手だ。合気は一対多、ボクシングは一対一で役に立つ。多対一は?って思うかもしれんが、そうなる場合は徒手空拳よりも後衛と連携した方が強いだろう。だからこの三つだ。

「さて、説明はこれくらいにして、実践に行こう、あと言っとくけど、後であっちと勝負するから覚悟しておけよ」

そう言って、俺はフォイトのいる方を指さすと、その場にいる全員が渋い顔をした。習ったことを実践で馴染ませた方がいいだろ。

「この訓練は無理強いはしない、向き不向きはある、だが、覚えておいて損は無いとだけはいっておく」

その後、アルバにも手伝ってもらって、体の動かし方を教えたんだが、やはり冒険者なだけあって、覚えが早い、これも才能なんだなと思う。

「っと、基礎はこれくらいだな、じゃあ応用に行くか」

「あの、すいません、ひとついいですか?」

赤髪の、見た目高校生くらいの少年が手を挙げた。

「ん?なにか不明点でもあったか?」

「不明点というか、質問なんですけど、この訓練ってどこで使えるんですか?」

「あー、さっきもみたろうけど、この技術が強力なことはわかったか?」

「はい、そうですね、あれは流石1級冒険者というレベルの強さでした、ですが、これはモンスターとの戦闘では…」

あぁ、なるほど、対人戦闘って教えちゃったからか、でも教わったことを取捨選択できるのは流石冒険者だな。

「あぁ、基本的にはこれは対人用だ、だけどな、オークやゴブリン、スケルトンとかなら『人』型だ」

「あ、そうか、人の形をしてるなら急所は…」

「そう、一緒だ、それに、これは試した方が早いか、剣を持ってくれ」

「?はい、わかりました」

赤髪の少年が木剣を構えると、俺も正面に木剣を持ち、向き合った。

「例えば一対一になった時があるだろ?ここから力入れるから本気で来いよ」

「は、はい!」

少年の目が本気になる、力強く柄を握っているな。だが、それがミスだ。俺は少年の前に俺の剣を放り投げた。

「え?」

少年の意識が俺の投げ捨てた木剣に向いた。俺は少年の後ろにたち、少年をそのまま取り押さえた。

「いだっ!」

「これが武術の強みだ、相手の意識をずらしでもいい、無論、方にはまらないのはそれだけでそいつの糧になる、選択肢が広がるしな」

「な、なるほど」

「んっとすまん、強くしすぎたか」

その後、程よく進んでいき、対抗戦は俺たちの勝ち、魔術指導ではマリッドとアルバが力を合わせて、教官をしていた。俺たちは補佐だったけどな。

改めて、アルバの規格外さが分かったな。対抗戦の後、治療をアルバにも手伝ってもらったんだが…

初級魔法?らしきやつで全員全回復よ、うちの子すごない?鑑定でステを見たら、魔力量が5万だとさ、これで半人前とは…。



:アルバ・ヤマトオ 17歳 女

職業 魔術師 治癒術師


ステータス A150 D200 MP50000

B250 I150


装備品 転移者の魔具 魔晶式ネックレス

スキル 神格の魔術師

龍変の技術

儚き命の言の葉

加護 龍神王の加護


なんだこれ、えっぐぅって感じだよな。最強はここにいた。

「さぁ!今回の訓練はここまでだ、今回習ったことをしっかりと復習しろよ!ここで!本気で訓練をした結果として、指揮官による、エキシビションマッチを開催する!」

ガランの合図を傍らに俺ら6人が壇上に上がると、おぉと歓声が上がる。

「ここでは狭いしなぁ、今回教えたこと十分に発揮できなくないか?」

「そう言うと思って!今回いい場所を用意しました!」

すると、巨大な魔晶石が持ち挙げられ、そこにはのどかな草原と、複数のモニターが映し出された。数人の術士が俺らを囲んだ。

「行きます!『テレポート』」

その言の葉を聞き切ると、俺らを光がつつみ、先程まで画面に見えていた草原にたどり着いた。

「おぉー、さっすが王国兵だなぁ」

「ねぇー、すごー」

俺と翠が果てしなく続く草原に、感嘆の声をあげていると、司会の声が大きく響いた。

「さぁさぁそれでは!チームの紹介をします!」

さぁ、やりますかぁ!本気の対人戦闘は久しぶりだから楽しみだな!

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