二十三発目 最強銃士と後人育成Ⅱ



騎士「すまん、これから大規模訓練があるんだ、非参加者は東門から出てくれ」

南門へと着くと、人当たりのいい老騎士に呼び止められた。

冬弥「あぁ、参加者だよ、ほらギルドカード」

騎士は訝しみながら、俺の出したカードをみて、笑いだした。

騎士「ははは!そうかそうか!お前が今回呼ばれたトーヤか!すまねぇすまねぇ、若いとは聞いてたが、ここまでとはな!俺はこの国の剣士隊長のガランだ、失礼言ってすまねぇな」

冬弥「いやいや、名乗りもしてねぇ若造冒険者を一目で判断しろって無理だろ、改めてトーヤだ今回はよろしく」

翠「私は翠です!今回私も参加させていただきます!」

アルバ「私もなのです!あっ!アルバなのです!」

ガラン「おう、ミドリにアルバな、ん?ミドリってあれか?異例の超速白金か?」

二つ名なんかつくんかいいな。俺も欲しい。

翠「超速白金って?」

ガラン「あぁ、すまねぇ、この前騎士団で盛り上がってな、超高速でプラチナを取った女がいるっつぅことで話してたんだ」

翠「あー、だから白金か」

ガラン「そういうこった、それに、どんなムキムキ女かと思ったらこんな若い美少女とはな、俺もあと20若けりゃ惚れてたかもしれねぇな」

なんだおじさん、さては翠の美しさに気づいたか?惚れるのも無理ない、わかるぞ、その気持ち。

翠「えへへ、お世辞ありがと、でもごめんね!もう先約があるの」

翠が左手の甲をガランにむけ、薬指に付いた指輪を見せる。その後、ガランは少しおどろいた顔をしたが、俺の手を見て察したらしい。にっと笑顔になった。

ガラン「ほぅ、若いのにすみに置けねぇなおめぇら!そっちの嬢ちゃんもか?」

アルバ「私は二人の子供なのです!」

ガラン「ん?なんかおもしれぇことになってんな?」

冬弥「養子だよ、火山に一人でいたから引き取ったんだ」

ガラン「龍人をか?」

?!なんでわかった?角も闘気も隠してるはずだぞ?

冬弥「アルバは人の子だぞ?」

ガラン「あぁ、隠さなくてもいいぞ、俺の目は少し特殊でな、相手の中にある魔力が見えるんだよ」

ガランはそう言いながら自身の古傷のついた目を指さした。

冬弥「はぇー、すげぇな?それって他にもいんのか?」

ガラン「いや、騎士団では俺と弓兵隊長のやつだけだな、そいつも異人迫害とかはしてないから大声で叫んだりとかしねぇよ」

冬弥「良かった、それにしてもその目すげぇな、俺らでもアルバは見るだけじゃわかんねぇのに」

翠「ねぇー、すごーい」

ガラン「っと、そう言えば講師こんなに早く来るなんてなんか用事があったのか?」

あぁ、そうだった。今回の話し合いに来たんだ。忘れてたわ。

冬弥「いや、今回の訓練の詳細を決めに来たんだった、ガランだけで進めちゃっていいか?」

ガラン「あー、そうか、少し待ってろ、他の奴らも呼んでくる」

ガランがそう言ってテントの方へと走っていった数分後、ガランは三人の隊長らしき人物を連れてきた。…ガランもだけどつええなあいつら、俺と翠が2人合わせで勝てるレベルだな、俺一人で勝てるかどうか…いつか手合わせしてみたいな。

ガラン「おいおい、そんなやる気出さなくてもいいぞ、トーヤ!ガハハ!やっぱ冒険者のさがってやつか!っと紹介するぞ、導師長のマリッド、弓兵隊長のシキ、闘拳部隊長のフォイトだ」

それぞれが会釈してくれる。

冬弥「どうも、今回の訓練の総指揮を任されたトーヤです、でこっちが翠で、この子がアルバです」

翠「よろしくです」

アルバ「お願いするのです!」

全員の挨拶が終わると、取り敢えず検問所にあった椅子に座り、簡易会議を始めた。

シキ「では、今回の訓練の詳細を詰めていきましょう、おおまかな概要は訓練参加者の能力向上と、冒険者パーティのチームワーク向上ですね」

ガラン「トーヤ、詳細の案はあるか?」

冬弥「それなんだが、今から言うことに多数決を取りたいんだ、無理なら無理と言ってくれて構わない」

フォイト「ふむ?決めきってしまっても良いのだぞ?」

冬弥「いや、俺らはこの国の人間じゃないからな、この国の方針にそれすぎてしまってもダメだろう」

シキ「それで、その案ってのは?」

冬弥「あぁ、それは」

俺は今回翠と決めたことを4人に話した。内容は、

・それぞれでパーティを組み、それによって訓練のレベルを分ける

・弓兵、導師は剣の訓練を、騎士は素手、闘拳士は弓術を習い、その後、全員におおまかな魔法についての講習を行う。

マリッド「すいません、その事の意味ってあるのでしょうか?イマイチ合理性というか、効率性がよくないと思うのですが」

冬弥「あー、この国は別に職業差別とかはないから無事だからって思うけど、前衛は後衛を、後衛は前衛の動きを知ることでより効率性のいいチームプレーになるんだ」

ガラン「ほぉ、ん?じゃあ剣士が素手の動きを訓練すんのはなんでだ?」

翠「あー、それ言ったの私ーえーっと、ガランさんは敵と戦ってる最中に武器が壊れたらどうする?」

ガラン「んー、その辺に落ちてるものとか拾って武器にするかな」

翠「そー!それが一番の動きなんだけどね!戦争中ならまだしもモンスターとの交戦中でそこが氷上だったり、草原、砂漠だった場合武器はほぼないでしょ?」

ガラン「あぁ、そうだな、その場合は逃げるか素手になるか」

翠「そーなの、だから、素手での戦闘はいずれどこかで必要になるの、それに、素手で戦えるって事はひとつアドバンテージができるの」

ガラン「アドバンテージ?」

翠「もし、私が剣を持って対峙してるとして、急に手から剣を落としたり、いきなり剣を投げたりしたら?」

ガラン「そうか!武器を使って視線の誘導な駆け引きができるのか!なるほど…今回だけでなくうちの訓練にも導入すべきだな…組手か」

マリッド「あのー?ガラン?戻ってきてね?」

ガラン「あぁ、すまん、で、さっきの話だな?」

冬弥「あぁ、多数決をとるぞ、この案に賛成するやつは手を挙げてくれ」

結果としては満場一致だ、良い感じにプレゼンできたかな?

冬弥「後、もうひとつ頼みたいというか、無理ならいいんだが、訓練のラストに俺らとチームバトルをしてくれないか?」

場の空気がピリついたのがわかる。さて、受けるか?

シキ「それは、私ら4人とか?」

冬弥「あぁ、そっち4人とこっち3人でだエキシビションという形で、訓練すればこうなれるぞと教えるのには適任だろ?それに、力量の読めない相手が教えたことはあまり入ってこないからな」

フォイト「そっちは3人?国の各部隊隊長を相手取ってか?」

マリッド「本気で言っているのなら、よほどの自信家か、蛮勇かですよ?」

冬弥「なんで俺らが負ける前提なんだ?」

シキ「本当に勝てると思っているのか…まぁいいだろう受けようその勝負」

翠「へー、1番やる気の薄そうなお兄さんがやる気なんだ?」

シキ「なに、弓兵として、お前らと同じ立場の人間として戦いたいだけだ」

ガラン「そうだな!トーヤ!ミドリ!アルバ!やるからには双方手加減なしだ!こちら側も敬意と全力を持って倒させてもらう!」

翠「受けて立つよ!」

アルバ「望む所なのです!」

冬弥「さて、まぁそれは最後に取っておくとして、それぞれの部隊がどんなことするからもう少し詰めよう」

フォイト「ふむ、そうだな」

こうして俺ら7人は正午五分前くらいまで話し合いを進めた。詳細も詰められて、一段落したくらいで、外へ目をやると、草原に数千はくだらない人数の冒険者達と、統率の取れた約1万の王国軍が立ち並んでいた。

冬弥「ほぇーこんなにいると壮観だなぁ」

率直な感想を述べると、4人は少し嬉しそうな顔をした。

マリッド「あー、そろそろ時間ですね、行きましょうか」

シキ「ふむ、そうだな開会式のタイミングで呼ぶからトーヤ達はその時に入ってくれ」

4人はそう言って、検問所を後にして、集まった人々のもとへ向かった。用意された壇上に4人が登ると、おぉっ!といった歓声が上がった。その場にいる人はみな羨望の眼差しを向けていた。

憧れなんだなぁ。さすがにあそこまで強ければそうか、強いっていいよなぁ。

翠「あ、そろそろじゃない?」

アルバ「さぁ!行くのです!とーや!」

冬弥「ん、はいはい、行こっか」

アルバに手を引かれながら、俺達は壇上に登った。が、その時にひとつ感じたものは皆が怪訝な目をしている事だ。こんな若造がほんとに強いのか?と

ガラン「さぁみんな!こいつらが今回の指揮官補佐の翠とアルバだ!」

翠「よろしくお願いしまーす」

アルバ「よろしくなのです!」

ガラン「そして!今回総指揮を執る指揮官の!トーヤだ!」

冬弥「おねがいしまーす」

シキ「トーヤ、今回指揮を執るにあたってなにか言いたいことはありますか?」

冬弥「そうだなぁ、じゃあひとつだけ、おまえらぁ!文句があるならよ、目や闘気じゃなくてよぉ、相手してやるからかかってこいよ?お前らの手足はなんのためだ?若造が上に立つ事を指くわえて見てるためか?」

この一言で、場は静まり返り、むしろ俺への敵意の視線が強まった。

マリッド「ちょっ、トーヤ!煽るような真似はやめてください!」

冬弥「わかった、4人とも、すまないが先に希望者の俺との組み手を入れていいか?」

フォイト「そうでもしなきゃ済まなそうだが」

翠「あ、じゃあ私もやりたい!」

冬弥「いや、お前は何人かに顔割れてるだろギルドの試験で、俺がやる」

翠「えーやだー!やーりーたーいー」

翠が珍しく駄々を捏ねた。

冬弥「…仕方ない、二体数百になっても知らねぇぞお前ら!俺の登壇が気に食わねぇやつは俺と戦え!全員まとめてわからせてやるからよぉ!」

俺が段の下へとおり、指をくいっと挑発すると、一人の男が痺れを切らして手を挙げた。

男「おいおい!世間知らずの坊主が!俺が黙らせてやるよ!」

そいつに続いて俺も俺もと言ったように、俺と翠を囲むように、数百人、だいたい集まった冒険者の10分の1くらいが俺たちの周りに集まった。

男「坊主!嬢ちゃんは置いてこなくていいのか?怪我しても知らねぇぞ?」

翠「はっ!指一本触れられるかすらわかんないクソイ〇ポごときが雑魚みたいにいきがんないでくれる?」

あ、やば、もう入ってるわ、これ。

男「ちっ!お望みどおりよォ!ボコボコにしてやるよ!クソアマがァ!」

冬弥「はぁぁぁぁぁ、おい、おっさんよぉ?あんま強い言葉使うなよ?弱く見えるぞ」

この言葉で男はブチ切れたらしい。俺の方へ全速力で走り出し、俺の腕を掴んだ。が、次の瞬間に宙を舞った。もちろん俺は何もしてないよ?翠が、俺に触れた力を合気でそのまま上に、跳ね返した。

翠「はっ、雑魚が、帰って寝てろ」

冬弥「1番こええのはお前だよ」

こうして数分後には向かってきた全員が悶えるか、昏倒していた。マリッドがやれやれと言った顔をして、医療班を呼び、けが人の治療が施されましたとさ、めでたしめでたし(?)

あ、まだ続くよ。

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