十九発目 最強銃士の強さ
冬弥「おいおい…めんどーにも程があるだろ」
俺の前には体高が10m程にまで巨大化したリウシュウがいる。と言っても人型ではなく姿形は物語に出てくる龍そのものだ。
リウシュウ「小童がぁ!誇り高き龍族を侮辱した罪、その身で払ってもらおう!」
冬弥「誇り高いならそう思われる行動をしろよ?」
リウシュウ「減らず口を…」
リウシュウが左手を振りかぶる。この大きさの発勁はくらったら即死だろう。しっかりと攻撃を見極めなければ。
冬弥「っ?!と!っぶねぇ!」
体高が大きくなった癖に、技のスピード自体も数倍にまで跳ね上がっていた。後一歩回避が遅れてたら、確実に地面の下に埋まってた。
冬弥「おいおい…なんてもん準備してんだ?」
俺が回避行動を終えると、リウシュウの口元にはマリネの数十倍の炎がくゆっていた。
ん?…あれは?
リウシュウ「去ね!小童!」
リウシュウが炎を放出すると同時に俺はリウシュウの口元に銃弾をぶち込んだ。パキンッという音と光とともに、リウシュウの口元の炎が消えた。
マリネ「なに?!まさか!」
冬弥「やっぱり…ね?お前らの炎の正体がやっと掴めたよ」
そう、アイツらが使ってた炎の正体は魔術だ。何故、俺が口元に弾を撃ったのかは魔法陣を破壊するためだ。先程リウシュウの口元を見た時、チラッと六芒星のようなものが見えた。それが魔法陣の役割を持っているのだろう。それを破壊したから魔術が中断されたのだ。
冬弥「これでお前の炎は止まったな?次はこっちの番だな!」
俺は即座に射撃体勢に移り、リウシュウの頭部を狙う。
リウシュウ「誰が魔術が炎だけだと言った?」
次の瞬間、俺の足元が光り、地面から、金属片が高速で飛んできた。
冬弥「っぶね!った!」
1発だけ貰ってしまった。俺のズボンが血で少し滲んだ。
冬弥「これ、俺の体が先に持ってかれる予感」
マリネ「リウシュウ!手伝うよ!」
リウシュウ「マリネ!お主はちゃいをみててくれ!」
冬弥「よそ見とはいい度胸だなぁ、指揮官様?」
俺はリウシュウの脚に1発ぶち込む、だが、難なく
避けられてしまう。
リウシュウ「死にたがりが!まだ減らず口を叩けるようならさっさと魂と身を決別させてやろう!」
冬弥「お前こそ、あの世で母ちゃんに会う約束はもうしたか?」
リウシュウ「生憎まだ文通で十分でなぁ」
ちっキレてくれたら楽だったのに。
冬弥「もういいや、お前、死ね」
俺はむーたをもう1本コールしリウシュウへ掃射する。1発当たればアウトだ。五体満足でいれると思うな。
リウシュウ「ぐっ…グラァ!」
冬弥「コール マルダーIII 特製徹甲弾 世界最高峰が一角 ドイツ製戦車砲の火力を味わえ」
リウシュウ「貫け、チーシュウスーリェ!」
リウシュウの周りに剣山のごとく無数の金属針が現れる。リウシュウの貫けの合図とともに全て、俺の方へと発射される。そして、俺の特製むーた式徹甲弾が装填されたマルダーIIIは轟音と共に1発の徹甲弾を発射した。
数秒後、アイストロ火山の頂上には右半身を失ったリウシュウが立っていた。一方に俺も、全ては捌ききれず、片腕を持ってかれた。
リウシュウ「天晴なり…我の負けだ…狩人よ」
その言葉を発しリウシュウは片方しかない膝から崩れ落ち、うつ伏せに倒れ、絶命した。
冬弥「つ、次は…お前らか?」
俺は、片腕で力なくむーたをマリネとチャイに向ける。その刹那 パァンと柏手が響いた。
ウェド「そこまでよ、ビジャンニ、全員の回復を」
ビジャンニ「分かりました…シロキィルオクハド」
ロシア語か?ビジャンニと呼ばれた白髪の少女がその呪文唱えると、広範囲が暖かな光に包まれ、全員の傷が癒えていった。
冬弥「な?!」
驚いたことに、片脚を飛ばしたはずのチャイの脚は完全に回復し、右半身を失い絶命したリウシュウの身体は五体満足で元の状態に戻っている。
リウシュウ「ふはは!すまぬな歳若き狩人よ、元々全部傷が癒えることはわかっていた故、全力で戦わせてもらった!」
ウェド「あなた達は私の龍達に勝った、だから、この子を受け取って欲しい」
そう言って、ウェドは自分の後ろに隠れているビジャンニを俺たちに差し出した。
冬弥「は?おい、本気で言ってんのか?」
ウェド「そう、本気」
翠「そもそもその子はあなたの龍であってもものじゃないでしょ、譲渡の形はおかしいんじゃない?」
一触即発の空気が流れる。
チャイ「待って待って、二人とも、私たちは所有物とかそういうことで言ってるんじゃないの」
冬弥「じゃあなんだ?」
チャイ「えーっとね、龍族って私たちのように長命種が多いんだけど、ごく稀に、短命種が産まれてくるの、いくらウェド様といえど世の摂理には干渉出来ないから寿命には抗えないの」
翠「で?」
チャイ「そこで、短い時間だけれどこの子には沢山のことを見て、たくさんの時間を楽しんできて欲しいの、その為に力量のある冒険者を探していたの」
冬弥「なるほど、俺たちは試されていた、と」
翠「でも納得いかないよ、その子が来たいって言うなら別だけど」
マリネ「だってさ、どうする?」
ビジャンニ「行く、行きたいです」
冬弥「なんでだ?」
ビジャンニ「私は、あなた方の戦闘に感銘を受けました、たとえ傷を受けようと、たとえ片腕が使い物にならなくなろうと、目の前の自分と相対するものを殲滅するべく、戦う姿に」
冬弥「そんなにいいものでもないけどな、それに、俺たちと来たら危険な目に遭うかもしれねぇぞ?」
ビジャンニ「その点に関しては持ち前の魔術で役立てます!」
ふむ、俺としては断る理由が特にないな。翠に聞いてみるか?
冬弥「みど…」
気がついたら翠はその少女を抱きしめていた。
翠「分かったわ、ウェドさんあなたの娘、しっかりと私たちが貰い受けるわ」
ウェド「…ありがとう、その子に沢山の楽しみを魅せてあげて」
ウェドは潤んだ目でビジャンニを抱きしめ、翠の元へ返した。
ビジャンニ「皆さん、長い間!ありがとうございました!このご恩は一生忘れません!」
ビジャンニが胸の前に手を当て、敬愛の意を示す。
リウシュウ「なんの、あれしきの時間などほんの一瞬と変わらん、気にするでない」
チャイ「ええそうよ、これからも頑張るのよ」
マリネ「私が教えた炎魔術、絶対になまくらにするんじゃないよ!」
ソラ「じゃあねお姉」
セイラン「またねお姉」
ほかの5人も、ビジャンニへ敬愛を返す。誇り高き龍族のその姿はまるで、凄然と連なる山々のごとく壮観で、趣があった。
冬弥「ウェド、お前の娘、仕方貰い受けた」
ウェド「お願い」
ウェドたち6人が深々と俺たちに頭を下げる。ん?6人?
俺がふと後ろを振り向くと、オレンジ色の巨龍がこちらへものすごいスピードで向かって来ていた。
ジェファ「おおおおまあああえええらあああ!」
冬弥「はぁ…せっかくのムード台無しかよ、コールflak36 10両」
俺は迷わず、対空砲でジェファを粉砕した。ムードを壊したお前が悪い。その後、ビジャンニに治療されたジェファは総員に滅多打ちに怒鳴られ、萎縮して可哀想だったが、最終的にはビジャンニに別れの言葉を言っていた。
冬弥「さて、と、ぼちぼち帰りますか」
翠「そうだねー」
ビジャンニ「これからよろしくお願いします」
翠「うん」
冬弥「おう、これから忙しくなりそうだなぁ」
俺たちはウェド達に敬礼をして、火山をゆっくりと下山していった。
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