十八発目 銃と魔術と氷と愛情



翠side

翠「あんたらの相手は私だよ!」

私はセイランと呼ばれる青髪の龍人に弾丸を打ち込んだはずだった。だが、ソラと呼ばれる龍人の側頭部に、私の弾丸はめり込んだ。私は内心焦った。目の前で不可解な事象が起きたからだ。大抵の事にはわかりやすい理由づけがされている。だが、今回は、納得できる理由が見つからないのだ。何故だろう?まぁ、いいか、全てを出させた上でねじ伏せれば。

ソラ「セイラン?大丈夫?」

セイラン「私は大丈夫、ソラは?」

ソラ「全然痛くない、ぬるい攻撃」

ソラがこちらをチラと見ながら言う。私が苛立ちを覚えたタイミングで、それを嘲笑するかのように、ソラの頭から弾丸がポロッと落ちた。しかも、傷口からは血の一滴すら伺えない。コレは…

翠「火力…足りるかなぁ…」

心配になってきた。

ソラ「セイラン…あれ、行くよ、さっさと片付けよう」

セイラン「わかった、ソラ いくよ!」

セイランの合図でソラとセイランがはるか上空へと飛び上がった。

翠「空中で私に勝てると思ってんの?喰らえ!」

私はむーたの弾をありったけ撃ち込んだ。だが、上空ではソラにかすり傷程度のダメージを与えたくらい。はっきり言ってヤバい。

ソラ「地より深きを闊歩すものどもよ…我、ソラの名のもとに平伏し服従せよ」

ソラが呪文を唱えると、地面から、高温の水が飛び出てきた。水…?こんな所に水?あぁ、地下水か、なるほど?

翠「こんな当てずっぽうな攻撃当たるとでも?」

私がクイッと掌で煽ると、セイランの琴線に触れたようだ。

セイラン「この地に出でし水の民よ、凍れ」

凍れ、その言葉とともに外気の気温が一気に下がり、ソラによって吹き出された熱湯のごとく湧き出る地下水が一瞬で凍った。そして、大きな氷柱が形成された。

セイラン「ソラへの侮辱、万死に値す。その身をもって罪を償え 穿て」

セイランの穿ての合図で氷柱が砕かれ、全てが私の方へと飛ばされてくる。

翠「そんなの当たらないよ!」

私が氷を破壊しようと、むーたで迎撃する。ん?なんか違和感が。まるで、コンクリを撃ってるかのような手応えだ。なんでだろ?そこで、私は落ちた一粒の氷に手をやる。そして、手で握ってみる。

翠「硬った!なにこれ!こんなの氷じゃないでしょ!」

セイラン「我とソラの魔力が籠った氷ぞ、普通の氷のわけがなかろう」

翠「あんたなんかキャラ変わってない?」

ソラ「おにぃは元々はこんなんだよ」

おにいっていった?!なにそれ?!かわよ!まじか、倒すのがしのびなくなってきた…。だめだめ!相手には最大限の敬意を持って全力で戦わなきゃ!

翠「魔力…ねぇ?」

私はセイランの攻撃をかいくぐり、周りに落ちている中でも、一際大きな氷塊に手をつけた。

翠「スキル発動 神脚 」

私は手に持った氷塊にその辺に落ちていた氷塊をぶつけた。やっぱり、この氷は加工ができそうだ。

神脚で上がったスピードと力を駆使して、氷の刃を成形する。同物質で擦り合うとヤスリと同じ役割を持つようになる。それは、魔力においても同じようだ。では?同硬度のものをぶつけ合うとどうなるか?解は壊れる だ。魔力という言葉のおかげで違和感の正体がわかった。ソラの周りには常に魔力で膜のようなものがはられていたのだ。その魔力は磁力の役割を果たして、銃弾に含まれる鉄の成分を引き付けた。よって、セイランへの攻撃が、ソラに当たったのだ。そして、ソラが固い理由だが、これもまた魔力の影響だろう。つまり、魔力には魔力でできた攻撃を与えればいいのだ。

翠「目には目を、歯には歯をってね!」

私は足にめいっぱいの力を込め、上空へと飛び上がった。

セイラン「翼を持ちし龍族に空中戦とは舐められたものだな!地より湧き出し、世界の源よ!我の血をもって、天を穿て!」

セイランが自分で指を斬り、氷柱に血を付けると、氷柱は赤黒く染まり、私の方へと向かってきた。

翠「魔力のたねはもう割れてんのよ!」

私は飛んできた氷柱に創った刀を向け、両断する。

ソラ「無駄だよ、おにぃの血にはおにぃの魔力が宿ってる、いくら刻んだところでおにぃの武器が増えるだけだよ」

私が両断した氷柱は二本の槍になって、私に再度向かってくる。

翠「うっわぁ厄介ねぇ」

でも、その前に…

翠「こっちはどう?」

私は飛んできた槍に足を当て、さらに高く飛び上がった。セイラン達の元に。

翠「金属塊より魔力氷はいかが?」

セイラン「…お主ほんとに人間かや?」

私もそろそろわかんないわよ。今、私の前にはセイランの首があり、私の首には、セイランの氷がある。私は相討ち覚悟で、セイランに刃を立てようとした。

ソラ「だめ!殺さないで!」

セイラン「ソラ?!なぜでてきた!お主だけでも逃げろ!」

翠「そうよ、私が言うのもなんだけど、今、あなたの首を取る気は無いの、退きなさい」

ソラ「やだ、あなたがセイランの首を刎ねるなら、即座にアナタの大事な人を蒸発させるわ、不意打ちなんて卑怯な真似したくは無いけど、セイランを守る為、確実に実行するよ」

翠「それ、やったらどうなるか分かってる?」

それをした場合…アナタの首どころか

翠「この世の龍の首全部飛ばすわよ?」

ソラに威圧をぶつける。が、ソラの顔に曇りは一切ない。

翠「どうやら本気のようね、ハッタリじゃないみたいだし、ここは引き分けで手を打ちましょう」

私が武器を下に落とすと、セイランも氷を下におろした。

翠「これからの事はお互い不干渉で行きましょ」

セイラン「うむ、わかった、ソラに手をかけなかったこと、感謝する」

セイランがそう言って頭を下げる。そう言われてもねぇ

翠「あんな顔されちゃあねぇ?まだまだ私も青いわね」

私は、下へと降りた。ふぅ、こっちは一件落着(?)っと、あっちはどうかな?

冬弥の方に視線をやると、なんかおっきな龍が口元に火をくゆらせていた。

翠「なにあれ、こっわ」

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