十六発目 こんなことになるなんて思ってなかったんです



ファミス「あら、2人とも、この前は夫を助けてくれてありがとう、あの人、すぐ危なっかしいものに手を出すから、何回も命の危険にあってるのよねー、ほんとに困っちゃうわ」

ファミスが頬杖をつきながら、クラントの愚痴を言っている。幸い今の時間は受付にはあまり人は出向いていないが、こんなとこ上司に見られたら怒られそうだな。

冬弥「あの人そんなに危険な綱渡ってんのか…」

クラントならやりかねない。

翠「ファミスさん!クエスト頂戴!」

ファミス「そうね、私も真面目に仕事しましょ!何がいいかしら?」

ファミスはそう言って、自分の頬をペちペちとはたいて、キリッと仕事モードに入る。

冬弥「クラントから聞いたんだが…」

ファミス「あーあれね、あの問題のクエスト…冬弥達なら任せても言いけれど、やってくれるの?」

色々大変なんだろうな、手続きとかで。

冬弥「あぁ、受付に出ているんなら、やってみる」

翠「私と冬弥にまかせて!」

翠がドンと胸を張ってファミスに言う。

翠「ふふ、あなたたちなら大丈夫ね、じゃあこのクエスト、任せるわね」

ファミスはそう言って、受付のボードからクエストの依頼状を剥がして、押印し、俺達に依頼状をくれた。実はファミスって結構上の役職なのか?

まぁ、今そんなこと気にしてもしょうがないし、のちのち分かるか。


1時間後、俺達は火山の中腹あたりまで来ていた。

翠「冬弥ーつーかーれーたー」

翠が両手をぶらぶらさせながら、ボヤいている。甘やかしたいけど、ここで俺の体力を削るのはあまり得策じゃないな。

冬弥「もうちょい先だ、頑張るぞ」

その後、20分くらい登ると、やっと頂上に着いた。

頂上には、まっさらな地とそこに1人ポツンと少女が立っているだけだった。

翠「どうしたんだろ?こんなところで?おーい!」

翠がその少女に駆け寄る、なにか違和感がある。この違和感はなんだ?

○火山に火龍が生まれた。

○火山の頂上にはそれらしきものは見えない

○いるのは少女が1人

○その子の周りはなにもない

何もない?

俺はもう一度その子の周りを見てみる。そう、確かにその子の付近には何も無いのだ。俺の足元を見るだけでも、こぶし大の石や俺くらいの岩がいくつかある。その子の周りだけ、何も無いのだ。

冬弥「翠!戻ってこい!そいつに近づくな!」

俺はなりふり構わず翠を止めた。翠は俺の異変に気づき、その少女と距離をとる。

少女「いやだなぁ、近づいてきても不意打ちなんてしませんよぉ」

冬弥「やっぱりか」

翠「え?え?何?なんの話?」

翠が話について来れずにキョロキョロしてるがそのまま続ける。

少女「いかにも、私が火龍です」

冬弥「なんで俺らが火龍を討伐しに来たって知ってるんだ?」

少女「私、スキルが2つあるんです」

冬弥「2つ?」

少女「えぇ、1つは夢見のスキル、言うなれば予見、予知の類です」

冬弥「それ、俺らに行っていいのか?」

少女「ええ、冥土の土産くらいにはなりますかね?」

冬弥「なるかもな、じゃあもうひとつは?」

少女「もうひとつはですね、これです『我、龍を統べし者なり、名を「ウェド」、龍の名を冠する我が下僕達よ、我の声に呼応し、我が名の元に、この世を蹂躙し、淘汰し、破壊し尽くせれよ』」

その少女が詠唱?のようなものを唱えると、地面にいくつかの魔法陣が描かれ始めた。なるほど、違和感の正体はこれか、通りで石ころひとつ転がらなってないわけだ。その魔法陣からは、ひとつにつき1人、計7人の龍の角が生えた「人」が召喚された。

内訳は、

1人が髪まで深紅の長髪の女の龍人、

青い髪で顔の作りが似た男の龍人が2人、

黒髪で右に灰髪のメッシュのような色の違いのある短髪の女の龍人が1人、

バカでかい斧を持った、巨体の龍人が1人、

中国服を着た、黒髪で長髪の男の龍人が1人、

もう1人は白髪で短髪の少女の龍人がいたのだが、召喚された直後に、物陰に隠れてしまった。

ウェド「さぁ、行きなさい」

冬弥「うっわぁなんか面倒くさそー」

正直たかが一体の討伐なんて楽勝だとおもってたのに、正直、こんなことになるなんて思いもしていなかった。

轟音の龍人達の咆哮が空へと響き渡った。

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