十四発目 最強銃士vs最強剣士、開戦する



翠VS凛

翠「凛ちゃん…行くよ…!」

翠は覚悟を決めて、携帯していたデザートイーグルをホルスターから取り出し、両手で持つ。

凛に銃口を向けようとした時、凛が翠に向かって動き出した。

翠「…!」

咄嗟に引き金を引くも、凛の刀によって難なくいなされてしまう。減速なく翠に向かう凛を止めきれず、翠は凛に吹き飛ばされてしまう。

翠「いっつつ…容赦ないなぁ凛ちゃんは…」

どがんという音と共に壁にぶつけた背中に激痛が走るも、耐えきれないほどじゃない。

冬弥「翠!大丈夫か?!」

翠「うん…なんともないよ!大丈夫!」

冬弥「凛…てめぇ、翠に手ぇ出したってことは俺に殺られる覚悟できてんだろうなぁ…?」

翠「冬弥!私は大丈夫だから!そっちに集中して!」

翠は、冬弥に向かって行っている威吾に気づき、冬弥に教える。

冬弥「うおっ、やっべぇ手加減なしかよお前!」

冬弥が焦って持っている416を連射する。

翠「ふぅ…私も本気でやるか…あんなこと言われたんだ、絶対に勝たなきゃね」

翠が立とうと脚に力を入れた瞬間に、凛は急速に速度を上げ、翠に向かって突っ込んでくる。翠も、それを見逃さずに持っているハンドガンを発砲する。

翠「.50aeの力、喰らいなさい!」

10mmの弾丸が凛へと向かっていく。ゴム弾であるため、殺傷力こそないが、相手を戦闘不能にさせるには充分な攻撃力がある。だが、そんな弾でさえも、凛には構いさえされず、ただ、当然のごとく見切られ、避けられてしまう。

翠の銃は、1度のマガジンにつき、7発。その度に翠にはリロードの隙が生まれる。それを待っていたかのように、凛はさらに速度を上げ、距離を詰め、翠に斬り掛かる。

翠「ちっ…そんな時間くれるわけないよねぇ…」

翠は、両手からハンドガンを離し、凛の刀に回し蹴りを入れる。凛は蹴りの威力をいなし切れずに、家の壁へと、ふきとばされる。幸いここは、捨てられた街、誰も住んでない家だ。まぁどうにかなるだろう。

翠「結局こうなっちゃうかぁ…あまりこのスタイル好きじゃないんだよなぁ」

翠は、落としたハンドガンを手に取り、ガシャっと慣れた手つきで弾を装填し、ホルスターへ、入れ直す。

翠「コール『UM15』」

翠が、そうコールすると、翠の手に、透き通った黒色の拳銃が化現する。

翠「この戦い方すると、あんまり銃が活躍しないからなぁ…」

そう呟いていると、土煙の中から、凛が飛び出してくる。

翠「行くよ、うみちゃん!」

ダダン、という乾いた音と共に、銃口から、約10mm程の、銃弾が放出される。

凛が先ほど同様、いなそうとする。

凛「…?!」

凛が1発の弾をいなすも、もう1発、後ろに隠れていた弾が、凛の左肩にあたる。すると、凛の左腕はだらんと、力なく地面に向かって垂れ下がった。

凛の肩が外れたのを確認した翠は、銃を上へと高く投げると、即座に、凛との距離を詰めた。

翠「凛…歯ぁ食いしばれよ…」

翠は凛の刀を持つ手に掌を突きつけ、3発、両脚に向かって2発掌打を打つ。

凛「ぐっ…かはっ」

凛は掌打の力に負け、力なく、地面に伏す。

翠「ふふっ、どんなもんよ!これで302勝301敗、私の勝ち越しね!」

倒された凛に向けて、翠がピースサインすると、その次の瞬間、翠は膝から崩れ落ちた。

翠「さっきのやつで…肋逝ってたのかぁ…勝ち越せなくて残念、今回は引き分けだったわね…」

そう言って、翠は、凛の横にうつ伏せに倒れ込んだ。



冬弥VS威吾


冬弥「翠!大丈夫か!」

翠が倒れた。なんでだ、どこで間違った。どうしてだ、あいつらか、アイツらをコロセバイイノカ。

威吾(偽)「おーおーおー、女って怖いねぇー、あんなに殴りあって斬りあって、相当鬱憤でも溜まってたんかなー」

威吾が、いや威吾の姿の誰かがこちらを見てケラケラと嘲笑している。

冬弥「お前、威吾か?」

威吾「んなわけねぇだろぉ?こいつの体はよォ、俺の召喚者特権で乗っ取ってやったんだよ!」

冬弥「あぁ、そうか」

よかった。

冬弥「良かったよ」

威吾「あ?何がよかったんだよ!」

冬弥「いや、本当によかったよ、お前が威吾じゃなくて、遠慮なく昏倒させられる」

俺は、その言葉と同時に左手を高く上げた。すると、物陰に隠れていたドローンが4機空へと高く飛び上がり、装備している機銃を威吾に向ける。

冬弥「奏ろ『弾丸の四重奏シェルズ・カルテット』」

弾丸の四重奏、通称:シェルズ・カルテット。俺が中学生の時に名付けた技名だ。最も、その年でドローンはつくってなかったから、4丁の小銃を連射しまくる技だったけど。

ドローンについている機銃がカチカチと弾切れの音を鳴らし始める。だんだんと、砂埃も晴れてきたようだ。だが、砂埃の晴れたその場所には、一人の男が刀を構えて直立していた。

冬弥「伊達に威吾の体抜き取ってねぇな…技術力まで引き継がれてんのかよ、めんどくせぇな」

威吾「ははははは!この体いいなぁ!目で知覚出来なくても体が危険に反応してよけやがる!これならお前もしっかりと戦わねぇとなぁ!」

冬弥「はぁ、お前なんかとしっかり戦うわけねぇだろ コール むーた MGモード」

俺の手元にはむーたが召喚される。そして、俺が引き金をひこうとすると、威吾は前へと飛び出してきた。

冬弥「威吾を騙った雑魚が、最高火力で死ねよ」

むーたの掃射を迷わず威吾に行う。威吾なら、余裕で斬るはずだが…憑依された場合はどうなるのか…ってダメだったみたいだ。

威吾「だから無駄だって言ってんだろうが!お前なんかの攻撃、かすりすらしねぇよ!」

威吾からこんな言葉が出てくるなんて俺、悲しい。

冬弥「ちっ翠、借りるぞ コール ドラン Mたや 」

俺のコールに反応し、濃淡の別れた2丁の自動拳銃が出てくる。こいつらは、翠のコレクションの一部だ。つまり言ってしまうと、くそ強い。拳銃にもかかわらずだ。

冬弥「元世界最強の拳銃士の力魅せてやるよ、お前は知らねぇかもしれねぇが、あっちでそいつとタメ張ってたやつを見くびるなよ」

威吾「最高火力でさえくらわなかったんじゃあねぇのか?そんなやつがどうやって勝とうってんだよ!」

冬弥「なぁ、アープ ーーーーーー」

アープ「ーーーーーーーーーーだよ」

冬弥「やっぱりそうか、じゃあ遠慮いらねぇな」

威吾「殺し合いの最中に余所見してんじゃねぇよ」

威吾はもう一度俺との距離を詰め、あっと言う間に俺の背後を取る。

威吾「死ね」

ドンっと鈍い音が鳴った。

カラン次に鳴った音は、木刀の落ちる音だった。

威吾「ぐっ!お前…こいつと知り合いなんじゃねぇのかよ」

冬弥「知るかよ、誰だよそいつ」

威吾がうめき声を上げながら、右手を抑えている。

冬弥「俺が知ってる威吾はなぁ…もっと高潔で清廉、芯のあるやつだ、お前みたいなやつは知らねぇな」

威吾「ぐっ…ふっざけるなぁ!!」

威吾が木刀を拾い上げ、すぐさま俺に向けて刀を振る。

冬弥「それに…型も技も使えないやつが努力してるわけねぇだろ、あいつは1番努力してんだ」

俺は威吾の心臓を撃ち抜いた。この手で…。

眼鏡の男「ひっ、ひぃ!ば、化け物が!」

俺は迷わずに眼鏡の男の頭を吹き飛ばした。

翠「うっ…」

冬弥「翠!大丈夫か!痛みは?動けるか?」

俺は翠に駆け寄り、抱きかかえて問答した。痛みを堪えながらも翠は笑顔で答えてくれた。

翠「ははは、冬弥は心配屋さんだなぁ…ぜんっぜん大丈夫なんだから!でも、ちょっと今は寝たいかなぁ、疲れちゃった…」

冬弥「あぁ…ゆっくりおやすみ」

そう言うと、翠は瞼をゆっくりと落とした。

翠が眠りにつくと、俺はそっと翠をおいて立ち上がり、銃を構えた。ズドンと鈍い音を3発、凛とバンダナの男、眼鏡の男に1発ずつ打ち込んだ。急所に打ち込んだから確実に絶命しただろう。

それが終わると、翠を抱え、俺は誰もいない住宅街をゆっくりと宿に向けて歩いていった。

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