十一発目 最強銃士、潜伏する(前編)



翠「ええっと?五番街はっと…あぁ、ここか」

私は今、冬弥からの情報を元にクラントを捜索している。

翠「裏路地ってここかな?…うわぁいかにもって感じぃ」

裏路地特有の日の届かない、暗い雰囲気が漂っている。思わずため息が出てしまう。

翠「はぁ、ボロ小屋って…もしかし…なくてもこれか」

周りの家屋とはまるっきり異なった雰囲気のボロ小屋がある、情報によるとここらしい。私は耳をすまして中の人数、話している内容を聞こうとする。

??「なぁ、あの男どうする?殺るか?」

??「いや、ボスが、あいつが鍵になってるかもだから殺すなってよ」

??「マジか、じゃあ牢にでも入れとくか」

??「そうだな、じゃあ見張りに行ってくるから入れて置いてくれ」

翠「やばっ、こっちに来る」

私は急いで物陰に身を潜め、相手の見える位置を確保する。

チャキ

そんな音が背後から聞こえた。その後すぐに、

男「嬢ちゃん、こんな所で何してんだ」

翠「?!いつの間に!」

私が臨戦態勢を取ろうとするが、男の方が一手早い、私には何らかの効力を持った手錠をかけられた。

翠「むーたが、でない?!」

男「お、嬢ちゃん召喚術士か?まぁ、このスキル封じの手枷があるんじゃあ意味ないがな」

召喚術士じゃないけど…なるほど、スキル封じか、鑑定使わずとも教えてくれるなんてありがたいわね。さて、どうするか…

〇振り切って逃げる=✕

(この手枷を解けるかわからない)

〇倒して逃げる=✕

(手枷を解けなくなる)

〇大人しく捕まる


…仕方ない捕まっておくか、冬弥が来るだろうし、やばくなったらクラント連れて逃げよう。

翠「ちっ!クラントを助けに来たってのに…私ひとりできたのが間違いだったみたいね」

演技をしながら話に真実と嘘を織りまぜる。ここでクラントって名前に反応すれば…

男「嬢ちゃん、あの男助けに来たのかまだ若いのに健気だねぇ」

BINGO、これでクラントのところまで行ける。違ったら流石に逃げるつもりだったけど、杞憂だったみたいね。

男「じゃあ、あいつとおなじところにつれてってやるよ」

翠「そう、まだ生きてるのねなら良かった」

この男、油断してポロポロと本当のことを言ってくれる。この調子でいけるか。

翠「情報だと、クラントは宝目的で攫われたらしいんだけど、どういうことなの?」

男「…さすがにそこまでは教えられんねぇな」

翠「ちっ」

男「ははは!嬢ちゃん逞しいねぇ」

そんなこんなで男に連れられて私はさっきの小屋まで連れていかれた。

男「おーい、なんかネズミがいたぜ、ちゃんと見張っとけよな」

眼鏡の男「あぁ…さっきからコソコソしてた」

えっ?!バレてたの?!まじかぁ…冬弥にあとで潜伏技術教えてもらお…

モヒカンの男「あぁ、俺らの話聞いてた奴いたな、確かに…でもこんな嬢ちゃんの気配だったか?」

男「知らん、ただ知ってたんなら捕まえてくれよ、俺の仕事増やすな」

眼鏡の男「いや、適当な情報でも流そうかなと」

男「あぁなるほど、で?嬢ちゃんはどんなことを聞いたんだ?」

翠「クラントが何らかの宝の鍵になってる事」

仕方ない…ここで適当なことを言えば私の首が飛ぶだろう。大人しく従っておこう。

男「ふーん…で?この嬢ちゃんどうする?宝のついでに辺境伯のとこの奴隷商にでも買取ってもらうか?上玉だし、高く売れそうだぞ」

眼鏡の男「そうだな、あいつなら高く買ってくれるだろう…まぁ、それまで牢にでも入れとけ」

男「分かった」

そう言って、私は男に連れられて、クラントのいる地下牢へと連れていかれた。

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