八発目 最強達は神をも超越(仮)する。
冬弥「ってことはそいつを倒しかけたことに取得条件があてはまったのか?」
アープ「そう、てゆーかもう倒すことが確定したから取得に至った感じかな?てか、冬弥のあれなんだよ、この世界にいる物質ほぼ全て粉々にするんじゃ…」
冬弥「あはは、張り切っちゃった!」
俺とアープが談笑していると翠が、
翠「あれ?でもゲイルロズってトールを殺そうとした霜の「巨人」じゃなかった?」
アープ「正確には「君たちの世界では「巨人」だけど、「神」っていうのは神格を持った存在全てを指すんだ」
冬弥「ふーん、じゃあそいつも神格を持ってたってことか?」
アープ「そうだね、ゲイルロズはトールにやられた後に別の世界へと現化したんだだけど、その世界で力を貯めたあと、神との関わりの深いこの世界でトールと闘おうとしていたんだ」
翠「自分と子供たちの敵討ちって感じ?」
アープ「そう、でその神を殺す力を考えその先に行き着くっていうこの世の理に触れたのが冬弥って訳」
冬弥「あー、そういうことな」
アープ「うん、無双するのはいいけど程々にしてね」
アープが困ったように俺たちに言ってくる。そこまで無双してる気は…心当たりはあるわ。
翠「えー、頑張って手加減するよ」
アープ「じゃあ、今回はそんな感じの用だったんだけど他に質問は?」
冬弥「うん、ないかな」
翠「私もなーし」
アープ「じゃあ、またねー良い転生を…」
アープがそう言うと俺達の視界はまた白く染まる。ん?あいつまたねって言ったか?まぁいいや、数秒後、俺達は元の世界(異世界)に戻り、次の瞬間にオーガ(ゲイルロズ)の脳幹をむーたが撃ち抜いた。
冬弥「あ、倒した…なんだこれ、締まらんなー」
翠「ほんとそれー、まぁ、倒したことだしそのむーた見せてよ!」
冬弥「ん、いいよ、その間戦利品剥いでくる」
翠が俺の改良したむーたを見て喜んでいる間、俺は倒したオーガを見に行く。
オーガの頭は鼻先から頭蓋を撃ち抜かれており、他に外傷はない。と言うのも、改良したことで元のむーたと弾が変化した。
従来の弾は高速で射出することで接地面が爆散するよう造ってあるが、今回は新しく、接触した瞬間から、速度が上昇し、確実に仕留めるよう製造した。
冬弥「弾自体の硬度と、射出速度を上げたが、これじゃまだまだだな…さてどうするか」
俺がオーガの死体を見て考察を重ねていると、むーたを見終えた翠が、俺の背中に飛びかかってくる。
冬弥「おー、終わったか?」
翠「うん!むーた凄いことになってるね、あれで完成形かと思ってたけど、まだ改良できたんだねー」
冬弥「ん?何言ってんだ?むーたはベーシック型だぞ?必要に応じて改良できるように変化に対応できる素材を選んだ」
翠「そーなの?!私の武器はあれで完成形なのにずるい!」
冬弥「まぁまぁ、新しいの作ればいいだろ?それよりも、これもってギルドに戻ろーぜ」
翠「そーだね、アイテムボックスに入るかな」
そう言って俺と翠はギルドから支給されたアイテムボックスにオーガを詰め込んだ。
冬弥「よし、帰るか」
翠「あ!ちょっと待って!盗賊達を連れに戻らないと!」
冬弥「あー、そうだな、じゃあそっちいってから、そいつら連れて帰るか」
ボス「お、おい嬢ちゃん…もしや本当に倒したのか?」
盗賊A「ありえねぇよ…」
冬弥「ほらお前ら、行くぞ」
ボス「あ、あぁこれは逃げても意味無いな…」
翠「えへへー、そこまで強くなかったよ?」
翠が、盗賊と話している間に街へと着いた。
冬弥「よし、着いたっと、憲兵さーん」
憲兵「ん?どうかしたか?」
憲兵が俺の呼ぶ声に反応しこちらを向く。
冬弥「はい、盗賊団」
憲兵「はっ!ご協力ありがとうございました!」
憲兵が俺と翠に敬礼をすると、奥からもうひとりが紙を持ってきて俺に渡す。
憲兵「こちらは、証明書となります。ギルドに渡せば依頼完了となります故、くれぐれも無くさないよう」
そう俺に釘を刺すと、憲兵達は盗賊たちを連れていった。
冬弥「さて、証明書貰ったことだし、ギルドに行くか」
翠「うん、そうしよ」
そんなこんなで適当に駄弁っていたらギルドに着いた。ギルドの中は相変わらず騒がしいが、何かいつもと違う。ファミスに聞いてみるか。
冬弥「ファミスー、依頼完了したから来たんだが…何かあったのか?」
ファミス「あ!トウヤ!ミドリ!いい所に!今、森を荒らすオーガの討伐隊が組まれてるの、そのオーガ10m級で、たった今Sランクに引き上げられたの!」
冬弥「あー、あのー申し訳ないんだけど、それって…こいつだったりする?」
そう言って、俺がアイテムボックスからオーガの頭を取り出すと皆の顔がこわばった。
ファミス「はぁ?!Sランク魔物を2人で倒したの?!なんて規格外な…」
ファミスは頭を抱えているが、ほかのものは未だに構えている。これは、俺が何者か見極めようとしている顔だ。
翠「みんな!そんな怖い顔しないで?」
翠が上目遣いで視線を討伐隊に向けると、場が一気に和み、まわりは笑顔に包まれた。
やっぱり翠が最強だと思う。そんな中…未だに俺の事を警戒しているやつはいる。そいつらが本当の強者という訳だ。あいつらはゴールド…いや、もしかするとプラチナもいるかもしれない。
冬弥「まぁまぁ、警戒しなくても大丈夫ですよ、この街は飯も上手いしいい街だし、危害を加えようなんて気も起きませんし」
そこまで言うと、そいつらはギルドの外へと出ていった。
ファミス「えっと、依頼完了だっけ?どの依頼が終わったの?」
冬弥・翠「全部」
この3文字を聞いた瞬間にギルドにいた全員の動きが止まった。
ギルド職員「はぁぁぁ?!ちょ、え?今日受注しましたよね?!」
ファミス「大丈夫よ、クライ ここまで来るとこの子達の規格外さにもそろそろ慣れてきたわ」
クライと呼ばれるギルド職員は驚愕の色を顔に浮かばせるが、ファミスは慣れた手つきで依頼の紙に完了印を押印する。
ファミス「はい、じゃあゴールドランク3つの依頼完了なので、金貨300枚ね」
冬弥「え?そんなもらえんの?」
思ったより額が高くて少し驚いた。冒険者ってそんな儲かるもんなのか?
ファミス「そりゃあ、命と引き換えに世界の安寧を保つ仕事ですもの、賃金は高いわよ」
翠「だからこんなにギルドは人がいるんだね」
ファミス「そ、あっあと今回のオーガの件で後日ギルドマスターに呼ばれると思うから」
冬弥「えー、めんどくさい」
翠「こら!そんなこと言わないの!」
冬弥「いでっ」
俺が面倒臭いなどと口走ったせいで翠に小突かれた。わりかし痛い。
ファミス「ふふ、あなた達ほんとにお似合いね」
冬弥「でしょー、うちの嫁さんかわいいんだよ(すまん、はなしあわせて!)」
翠「ばっ!バカ!人前でそんなこと!(あとでなんか奢ってね)」
アイコンタクトで俺が翠に奢ることが確定したあたりでファミスからこんな提案がくる。
ファミス「どう?今日はうちに泊まっていったら?まだ、宿も取ってないんでしょ?」
翠「あー、そうだった…どうする?冬弥?」
冬弥「「いや、せっかくの誘いだが遠慮しておくよ、放浪人が人の優しさに触れるとろくな事にならないしな」
俺は適当なことを言って誤魔化すが、本音は近づきすぎると異世界人だとバレる可能性があるからだ。バレた時、弁解の余地はほぼないと見ていいだろう。
ファミス「そう、じゃあまた、明日も依頼やるんでしょ?」
冬弥「そうだな、じゃあまた明日」
ファミス「あっ!宿なら五番街西側にある『イーリス』ってところがオススメよ!」
冬弥「五番街?結構近いな」
ファミス「ええ、ここからも近いし、ご飯も美味しい、それに、温泉があるのよ気持ちいいわよー」
翠「温泉!!冬弥!決めた!今日ここにしよ!」
冬弥「はいはい、分かりましたお嬢様」
ファミス「ふふ、冬弥って結構尻に敷かれてるのね、うちの旦那みたい」
冬弥「いやー、翠には勝てないな」
頭をかきながら当たり障りのない返事をする。
まぁ、世間話にも花が咲いたことだし、ボチボチ移動を始めますか。
色々あって1時間後、俺と翠は、宿(ラノベの宿と同じと思って構わない)に着いた。
翠「わぁー!ここのベッドふかふか!」
翠がはしゃいでいる。常時気張っていたのになんて胆力と体力だと常々思わされる。
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