七発目 最強銃士達、力を合わせる。



翠「さぁーて?どこ行こうかなぁーって…あれなんだろ?」

盗賊のアジトをあとにした私は、森林を走っている。すると、約2kmほど先に人型の大きな岩を見つけた。

翠「岩…いや、なんか動いてない?!」

よく見るとその岩は都の方へと歩を進めている。

翠「なにあれ!!岩が動くなんて…なんて面白いの?!」

私は好奇心に負け、進行方向を岩の方へと変えてしまう。岩まで約500mほどの距離にまで近づくとそれが岩ではないことが分かる。それはオーガと呼ばれるような赤黒い肌をした10メートル程の鬼型の魔物だ。これで冬弥に勝てる!やった!

冬弥「おー、翠、やっぱお前も来たか」

そんな私の喜びも束の間で、冬弥が私を見つけて駆け寄ってくる。冬弥もあいつを見つけて走ってきたらしい。

翠「あー!冬弥も来たの?せっかく勝てると思ったのに…」


翠もこいつを見つけてきてたのか、まぁ、目立つしな。

冬弥「いやぁ、あんなでっけぇ奴いたら気になるのが人間の性だろうよ」

俺は適当に返答をしながら、こいつの倒し方を考えていた。さて…どうするかな?

翠「ねぇ、あいつ、1人で倒せそう?」

翠があのオーガを指さして俺に問いかけてくる。まぁ、ワンチャンどうにかすればいけそうな気もしなくもないが…

冬弥「無理だな…圧倒的に火力不足だな、あと手が6本くらいあれば1人でも行けそうだけど」

翠「うわ…気持ち悪い考え方しないでよ…まぁ、そうだよねぇー」

翠も同じような考えに行き着いたのかため息をついている。

翠「でさ、提案なんだけどさ…1回休戦ってことで2人で戦わない?」

冬弥「え?」

正直に言うと驚いた。あの、負けず嫌いな翠が休戦を申し込んだのだ。

翠「だから!あいつを倒すの2人でやろう!って言ってんの!」

冬弥「あ、あぁ聞こえてるよ、そのえ?じゃなくて」

翠「じゃあなんなのよ!」

翠がふくれて怒りながら俺に聞いてくる。

冬弥「いや、お前がこういう賭けで譲歩すんの珍しいから驚いてた」

翠「そんなこと?私だって無理なものは無理なんだから考えて動くよ!」

翠が馬鹿にされたと思ったらしく、さらにまたふくれている。こういうの見ると、いじめたくなる…

冬弥「その案だが…1人での任務失敗で2人共罰ゲームするってんなら考えてやるよ」

翠「う…仕方ないな、まぁいいよ、ただし!「ふたりとも」だからね!」

俺の話に落とし所を見出したのか、話に乗る。

冬弥「了解…じゃああのデカいの討伐するか!」

翠「うん!」

冬弥・翠「コール むーた」

むーたを手にした俺達は早速オーガの足に1発撃ち込む。だが、ほんの少し肉がえぐれるくらいだ。しかも、この一撃で俺達にも気づいたみたいだ。

冬弥「は?むーたでこのレベルとかどんだけ硬いんだよあいつ」

翠「まぁまぁ、一応むーたは対人・物用なんだからあんなのに効かないでしょ」

冬弥「まぁ、それもそうか…」

翠「じゃあ、むーたの強化お願いね、その間私が引きつけるから」

冬弥「了解、頑張ってくれ」

まぁ、それしかないよな、むーた造ったの俺だし、こいつ以上の火力なんて普通の銃じゃねぇし。


翠「コール RPG-7 」

ロケットランチャーを手にした私は初撃としてオーガの両脛に1発ずつ撃ち込む。こちらに向かってきていたオーガは激しいうめき声で激しい怒りを顔に浮かべ、こちらに攻撃を始める。

オーガの攻撃はほとんど単調なもので、持っている斧のようなものでの攻撃と踏みつけや蹴りあげなどしかして来ない。はっきりいって的がでかく速さがトロイ分、他よりは戦いやすい。

それらの攻撃を避けながら、私はむーたを撃ち込み続けるだけの時間はある。だが、圧倒的に火力が足りない。人間の方が体力が少ないためこのままだとジリ貧だ。あとは冬弥が終わるまで…

ガシィン…ガチャ、ガシャン

どうやら終わったようだ。

冬弥「終わったぞ、サンキューな!」

翠「りょーかいっ!少し奥側に引き付けてから退避に入るよ!」

冬弥「おけ、リロード…完了、残弾数…20、射撃スタンバイ…完了!攻撃態勢に入る」

冬弥は、むーたを岩にかけ、俯きの状態でオーガの鼻先、脳幹を狙っている。

翠「退避完了!いつでもいいよ!」

冬弥「把握、じゃあなオーガ特に恨みはないんだが…吹っ飛べ!」

ピコーン

その瞬間、その音とともに私達は真っ白な空間に飛ばされた、初めてアープに会った場所だ。

アープ「やぁやぁ、2人共、もうスキルを発現させてしまったのか…」

冬弥「ん?あぁ、なるほど、意識だけお前に呼び出されたって感じ?」

アープ「そ、本当はもっと静観してようと思ったけど、さすがにスキルの発現が早すぎてね」

翠「スキル?私たちが貰ったみたいな?」

アープ「そう、本来スキルってのは熟練度が高最大値に達すると貰えるスキルなんだ」

冬弥「あーなるほど、熟練者のエンドコンテンツみたいな感じかな?」

アープ「端的に言えばそんな感じではあるかな?」

冬弥「で?俺達はなんのスキルを取ったんだ?」

アープが難しい顔をして俺の質問に答えてくれる。

アープ「冬弥が取ったのが『叡智』緑が取ったのは『神脚』って言うスキルなんだけど…」

アープはスキル名を言うとまた難しい顔で黙ってしまう。

冬弥「どうした?なんかヤバめな感じなのか?」

アープ「そうなんだ、実はこのスキル…ゼウス様が持っているスキルなんだ」

翠「ゼウスってあの?」

アープ「君たちが思っているお方と一緒だね

全知全能神 ゼウス様の事だよ」

冬弥「で?それがなんか問題だったのか?」

アープ「そう!そうなんだ!ゼウス様は全知全能神だから持つスキルはすべてスキルの中でも最上位に位置するんだ…」

アープが興奮して長く喋ったので要約すると、

ゼウスのもつスキルはオリジナルスキルも入れて世界に存在するスキルの最上位。

叡智 取得条件:この世の理に触れる

効果:スキル使用時の全ての行動の速度が10倍。内外からの脳への負担をゼロにする。

神脚 取得条件:神の動きをも超える。

効果:スキル使用時、攻撃態勢に入ると力、スピード、防御力などの戦闘時必要な能力が必要に応じて10倍化する。内部からの筋肉への負担をゼロにする。

らしい。まぁ、最上位スキルなだけあって桁外れだな。ん?

冬弥「なぁ、アープ、俺らの取得条件ってなんで達成されたんだ?」

アープ「ギクッ、い、いやぁなんでだろうね?」

翠「あー!ぎくってしたー!」

アープ「し、してないよ!そんな、冬弥達には言えない事情があるとかそんなんじゃないから!」

冬弥「あるんだな」

翠「あるね」

アープ「なんでわかったの?!」

だってアープが全部言ってたもん。こいつ神様なのにすごい天然だよな。翠とイーブンじゃないかってくらい天然だな。

冬弥「いいよ、確認とってきな?言っていいかわかんないみたいな感じだろ?」

アープ「うぅ、君はどこまで見透かしてるのさちょっとまってて今聞いてくる」

アープは少ししょんぼりして部屋の奥へと消えていく、その一秒後また戻ってきた。

アープ「いいってさ」

冬弥「はやっ!お前ほんとに聞けたのか?」

アープ「あぁ、言ってなかったっけ?この部屋は僕が作った部屋で時間が止まっているんだ」

アープがドヤ顔で説明している。

冬弥「なるほど、仕事をサボるもしくは終わらなかった仕事をやる用の部屋だな?」

アープ「ギクッそ、そんな訳ないじゃんかー」

冬弥「そうなんだな」

翠「そうなんだね」

アープ「なんでまた?!」

すまんお前の態度めちゃくちゃわかりやすい。

翠「で?どうだったの?」

アープ「言っていいってさ、じゃあ説明するよ、君たちの世界にいたあのオーガなんだけど、ギルドではAランク査定だけど本来はSSランクなんだ」

冬弥「はぁ?!SS?!」

翠「なんで?そこまで強くなかったよ?」

アープ「実はあのオーガ、ゲイルロズの現化した姿なんだ…それを君たちはいとも容易く…」

アープは頭を抱えているが、俺達は少しずつ話が理解出来始めていた。

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