二発目 街を目指して最強は放浪する。



次に俺の目が覚めたのは、草むらの上だった。横には翠も一緒に横たわっている。

冬弥「はぁ、着いたか、ここが異世界…ウィルティスか…」

そこはのどかな平原で、穏やかな風が吹いている。俺が周りを見渡していると、お約束のような真四角の板状の青い何かがいる。

冬弥「うわぁ…この世界には魔物って概念があるのか…ってことはステータスとかも?」

そんなことを考えていると、俺の画面に青いウィンドウが開かれる。


:山遠 冬弥 17歳 男

職業 提示職 アーチャー(偽装済み)

(※本職 銃士 ・銃整備士)

基礎ステータス ALL200

(※MPは手持ちの弾丸数に依存し、随時増減)

装備品 超越者の指輪

スキル ガンズインプレメーション

インフェニティシェルズ

銃士の心得・銃の技術

鑑定技術V

加護 フレイの加護

神 フレイの加護により、病にかからない。不老長寿。


冬弥「加護?って、アープってあのフレイだったのか!ゲームとかで出てくる神様の…あれ?でもフレイってギリシャ神話で別名の事じゃなかったっけ?」

そんなこんなでステータスを見ながら、1人で盛り上がっていると、翠が目を覚ます。

翠「ん…冬弥ぁ、おはよぉー」

ぐはっ!何だこの可愛すぎる生物は…。

翠「どーしたの?」

そんなことを考えていると、翠が目を擦りながら首を傾げている。

冬弥「いや、ちょっとステータスをな」

翠「ステータス?」

冬弥「ん、あぁ、見えてないのか、ちょっと頭で強く考えてみ」

翠「むむむぅーでろっ!でたぁ!」

翠の前にステータスが表示されたらしく大喜びしている。どうやらステータスは他人からは見えないようだ。そういや、鑑定って?スキル「鑑定」発動。

そうすると、翠のステータスが俺の前に表示される。どうやら、鑑定によって相手のステータスを見れるみたいだ。

???「う、うわぁ!助けてくれぇ!」

東の方角から、若い男の助けを呼ぶ声が聞こえる。

冬弥「行くぞ!翠!取り敢えず助ける」

翠「うん!」

そう言って、小高い丘を走って越えるとそこには、ゲームとかに出てくるゴブリン?のような魔物に襲われている馬車と行商人の姿があった。

冬弥「具現 レミントンM40A3」

翠 「コール M1911 トンプソン」

召喚と同時に俺と翠は、手持ちの銃弾を装填し、発砲する。

パンッと言う音と共に、2匹のゴブリンの頭が吹き飛ぶ。

行商人「ひえぇ、た、助かったぁ」

冬弥「翠、なんだ、コールってかっこいい呼び方、インプレメーションだから具現じゃねぇんかい」

翠「いや、具現ってとっさに言えないでしょ、多分どんな呼び方でも反応すると思う。それよりも、偽装掛けて、腰か腿にオートマの拳銃刺しといた方がいいと思うよ?保身として」

冬弥「うぐっ、それもそうだな、魔物がいるんだ…危険時に対応できるようしておかなきゃな」

俺達が、ゆっくりと丘を下っていると。

行商人「あ、あなたがたが助けてくださったんですか?」

行商人が目を丸くして、こちらに問いかけている。

冬弥「ん?ああ、なんか困ってそうだったから、もしかしてダメだった?」

行商人「い、いえ!ありがたいんですけど、そんなにお若いのに凄いですね、あんな遠くからゴブリンを…」

冬弥「ん、あぁ、俺達、一応『放浪』のアーチャーなもんで」

翠「なもんでー」

翠が俺の話に合わせて相槌を打ってくれる。

行商人「そうでしたか、かなりの凄腕ですね」

行商人は驚いたような顔から、真剣な顔に変わり、

行商人「お願いがあります!東の都セントブリューエルまで、護衛をしてください!お代は払います!」

そう言って、俺たちに向かって深々とお辞儀をする。

冬弥「分かりました、しかしお代はいりません、代わりに、そこまでの寝所と食事を提供してください」

翠「お金には困ってないし、寝る場所が安定すれば、安心できるし、ナイスアイディア!」

翠が、俺の案にグーサインで賛成する。

行商人「は、はい!ありがとうございます!寝所は馬車の中を利用して頂ければ…」

冬弥「んじゃ、契約成立だな、俺は、トーヤ・ヤマトオ、こっちはミドリ・コウノだ。セントブリューエルまでよろしく」

俺が行商人に向かって手を伸ばすと、すぐに行商人も握手に応じてくれる。

行商人「私は、フォート商会のクラントです、では、馬車にお乗り下さい」

翠「よし!行こう!GO!GO!」

そう言い、俺と翠は馬車へと乗り込んだ。


翠「んんー!よく寝たぁ」

翠がカタコトと揺れている馬車の中で伸びをしている。俺達は2、3時間交代で睡眠を取りながら約3日間用心棒ということで非常時に備えている。

クラント「どーですか?よく眠れましたかい?」

クラントが馬車を操縦しながらこちらの方に目をやる。

翠「よく寝れたよ!寝心地最高!」

冬弥「クラント、堅苦しいのはよそう、気軽にトーヤと呼んでくれ」

クラント「えぇでは、トーヤ、ミドリそろそろ警戒をお願いします、峠を抜けます」

峠を抜けた馬車は再度平原へと行き着く。先程居た平原はどちらかと言うと荒野に近かったが今回は野原に近い。

冬弥「お、居た コール SVLK-14S」

進行上にいる、ゴブリンを3匹、撃ち抜く。

翠「お、さっすが万能型、目測で、2kmくらいかな?」

翠が、ゴブリンまでの目測をはかっている。まぁ、平原で無風なら余裕だろう。

冬弥「対物じゃなくても行けそうだな、ほぼ無風だし、弾道予測できるだろ」

翠「まぁねぇー、でもめちゃくちゃぶれるし、4/5くらいかな?」

冬弥「お、あそこにいるのオークじゃね?あの豚みたいな頭のやつ」

俺は、馬車の十数km前方にいる豚の頭をした魔物を指す。翠は、それを見つけてはしゃいでいる。

翠「おー!あれが噂の!」

クラント「ん?2人はオーク見たことないのか?珍しいな」

クラントが俺達の会話から出た疑問を口にする。

冬弥「ん?あぁ、結構東方から来た身でな、あまりああ行った魔物に出会ったことないんだ」

クラント「そうか、この辺はゴブリンやらオークが多いから戦利品をギルドに出せば冒険者が食うには困らないぜ」

冒険者ーライトノベルなんかでよく聞くような単語だ。まぁ、魔物がいるって時点で予測はしてたけどそりゃああるよな

冬弥「へぇ、ギルドなんてものがあるのか」

クラント「お?その腕で所属してないのか?どこかの街で登録さえすれば、各街のギルドで仕事できるぜ、放浪人ってのは、結構街とかの事情には疎いのか?」

クラントは俺が発した「放浪人のアーチャー」という言葉を信じてくれているようで、楽しげに会話を交わしてくれる。

クラント「そういや、お前らセカンドネームが違ってたけど、夫婦じゃないのか?」

自己紹介の時に、名字(こちらではセカンドネームと言うらしい)が違っていたことに対してクラントが疑問に思う。まぁ、夫婦でもない男女が二人で旅ってのもおかしいな。

ここは少し誤魔化すか。

冬弥「いやぁ、まだ籍を入れてなくてね、ほら、色々とやることがあるだろ?放浪してる分にはこっちの方が楽でね」

(翠!すまん!話合わせて!)

翠「そーなんだよねぇ、時間はたっぷりあるけどいい場所もないんだよねー」

(へぇー?わかったー)

俺が、翠に話を合わせるよう合図すると、翠が観察…いや、煽るような目でこちらを覗いてくる。

クラント「まぁ、そうか、放浪人ってのは身軽に居ないといけないからな下手に世帯を持つ訳にも行かないか」

冬弥「そーなんだよなぁまぁ落ち着いたらって感じだ」

クラントが理解力よくて助かる。話を広げて言ってくれるのであとは相槌で誤魔化すことが出来た。

クラント「さて、もうすぐ都だぜ!ここまで用心棒ありがとな!都に着いたらギルドに登録することをオススメするぜ」

クラントが前を向いて馬車を進ませながら、俺らにアドバイスをしてくれる。本当にいい人だったな。そろそろ着くか。銃の偽装は…しておくべきかな、念のため。

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