5話 童貞じゃいけないんですか?

「お待たせしました! それでは始めにお連れの方のステータスの方からお願いします」

「わかったわ」


千鶴は、 そう言った後、 美人の女性が持ってきた鑑定結晶の上に手を置いた。


「どうやらシュン様と違ってステータスは、 どれも平均程度のようですね」

「あら、 そうなの。 でもいいわ。 いざとなったら俊が守ってくれるものね」

「黙れクソババア」


俺がそう言った瞬間、 千鶴の奴は、 また包丁を俺に向かって投げてきた。


「何度も同じ手が通用するか!」


俺は、 それをよけた。

だが、 よけた瞬間別の方向から包丁がとんできて、 今度は避けることができず頭に突き刺さった。


「シュン様! 頭に包丁が刺さってますけど大丈夫なんですか!」

「ああ、 大丈夫ですよ。 こんなこともう慣れたので」


俺は、 頭に刺さった包丁を引っこ抜き包丁を捨てた。

だが、 頭からの出血は、 すさまじく頭が少しくらくらする。


「やっぱり大丈夫じゃないですよね! それ! 尋常じゃない出血量ですし、 顔も真っ青ですよ!」

「お姉さんは、 本当に優しいですね。 そうですね。 それじゃあ一つ御願いがあります」

「い、 医務室に運べばいいんですね!」

「違います! お姉さん! 俺と付き合ってくだ……」


俺が意を決してお姉さんへと告白しようとすると今度は、 お尻に包丁が突き刺さった。


「全く。 俊は、 本当に浮気性なんだから」

「なあ、 千鶴さん。 なんでお前は、 少しでも気に入らないことがあると包丁を投げるんだ? 前はこんなことしなかったじゃないか」

「だってそれは、 俊が私のことを好きで浮気をしないと信じてたから私も多少なら我慢したけど今はダメ。 だって俊。 私からの告白断ったじゃない」


告白を断っただけでその思考に陥るこいつ本当にやばいな。

さて、 尻の包丁もそろそろ抜いて、 今度は俺の職業を見てもらうとするか。


「よっこらせ」

「シュン様本当に大丈夫なのですか?」

「ええ、 大丈夫です。 そんなことより次は、 俺の職業を見てもらえませんか?」

「わかりました。 では、 こちらの帽子を頭にかぶってください」


帽子?

その時点で大体どんなデザインの物かわかった気がするぞ。


「なんで俺が、 こんなしょんべんくせぇガキの職業を調べなくちゃいけないんだよ。 調べるならこいつの隣にいる姉ちゃんがいいぜ」

「そんなこと言わないでくださいよ。 それに次は、 あなたの望み通りあの綺麗な女性の職業も見てもらいますから」

「よし急にやる気が出てきたぞ! おい坊主! さっさと俺をかぶれ!」


ああ、 やっぱり俺の予想は、 当たっていたようだ。

その帽子のデザインは、 〇リー・ポッターに出てくる組み分け帽子にそっくりだった。


「ねぇ俊。 あれって……」

「何も言うな。 お前が言いたいことは理解している」

「もう俊ったら。 私の言いたいことを聞かなくてもわかるなんてさすが私の夫ね!」


しまった!

こいつの好感度を無駄に上げてしまった!

お前の好感度なんかより俺は、 あの帽子を持っているお姉さんの好感度を上げたいんだよ!


「あの、 シュン様どうかなされました?」

「いや、 悪い。 すぐにかぶるよ」


俺が、 帽子をかぶってから帽子の野郎は、 数分間何もしゃべらなかった。


「見えたぞ! こいつの職業は……」


ついに俺の職業がわかるのか!

やっぱり俺の事だから勇者とかかな!

それとも聖騎士とか賢者とかでもいいな!


「“チェリーボーイ”だ!」

「は? 今なんて言った?」


もしかして今のは、 俺の聞き間違いかな?


「だからチェリーボーイだ。 てかこんな職業今まで知らないな。 それに意味もよくわからん。 多分お前さんのユニーク職業なんだろよ」

「す、 すごいですよシュン様! ユニーク職業というのは、 その職業を持っている人は他にはいない自分だけの職業なんです!」

「さすがです! シュン様!」


周りの連中は、 どうやら俺がユニーク職業を持っていることをほめたたえているが俺は、 全く嬉しくない。

そして、 それと同時に周りの奴らがチェリーボーイの意味も理解していないということも理解した。

てかなんだよ職業がチェリーボーイって!

この世界作った神をここに呼べ!

今すぐぶっ殺してやる!

だがそんな怒りよりも今の俺は、 どちらかと言うと羞恥心が勝っている。


「どうしたんですかシュン様? 体が震えていて、 顔が真っ赤で、 顔からは涙が流れてますよ?」

「きっとよほどユニーク職業が嬉しかったのでしょう。 それで今は、 歓喜の涙を流しているのです」


違げぇよ!

何処の世界に童貞が、 職業で喜ぶやつがいるか!

それとこれは、 歓喜じゃなくて怒りと悲しみが混ざった表情だよ!

俺が、 そんなことを思っていると千鶴は、 俺の肩に自分の手を置いてきた。


「しゅ、 俊。 そんなに恥ずかしいんだったら今日の夜私が卒業させてあげようか? 私も初めてだけどが、 頑張るから!」

「お前に俺の初めてを捧げるくらいなら牛にくれてやったほうがましだ」

「ふふふふふ」

「あの千鶴さん? スタンガンをもってこちらに近づかないでくれますか? 包丁は、 もう慣れたけどそれだけは、 慣れてないんです。 だからお願いします! こっちに来ないで!」


結局俺は、 千鶴のスタンガンによって三回ほど気絶させられた後、 蹴られて目がさめた。

てか、 あいつのスタンガン絶対に改造してるだろ!


「それでは、 次にええと、 なんてお呼びすればよいでしょうか?」

「千鶴でいいわよ」

「わかりました。 それでは、 チヅル様この帽子をかぶってもらえますか?」

「了解よ」

「やったぜ! こんなきれいな姉ちゃん今まで見たことがねえから最高の気分だぜ!」


この帽子。

〇リー・ポッタ―の帽子とは、 大違いだな。

こんなの向こうの世界の小さい子供が見たら泣くぞ。


「見えたぜ! この姉ちゃんの職業は、 は? なんだこの職業?」

「どうしたんですか?」

「す、 すまねぇなんかすごく名前が長いし、 職業っぽくない名前だからな。 それじゃあ気を取り直して」


おいおい。

名前が長いってこいつの職業どんな奴なんだよ?


「この姉ちゃんの職業は、 “俊がたとえどんなところにいようが絶対に離れないし離れることはできない存在”だ」

「やっぱり私と俊は、 運命によって決められた最高の存在のようね!」


さ、 最悪だ!

てかこんなの職業でもなんでも何でもないだろ!

しかもなんで俺の名前が入ってるんだよ!

俺の職業と言い、 こいつの職業と言い一体この世界の職業はどうなってやがる!


「これで冒険者登録については終わりです。 では、 これ以降は、 宴の方をお楽しみください」

「それでは、 私も失礼しますね」

「ま、 待ってお姉さん最後に名前だけでも!」

「私の名前は、 ラピスと言います。 冒険者ギルドの方で受付嬢をしていますので受付の時は、 私のところに来てくれると嬉しいです」


そう言ったラピスさんは、 最後に俺のほっぺたにキスをしてくれた。


「ありがとうございますぅぅぅぅ!」

「ふふふ、 それでは、 失礼しますね」


俺は、 決めた!

絶対に俺の童貞はあの人に捧げると!

そしてハーレムの一員に入れると!


「ふふふ。 あの女。 私の俊に何をしたのかしら? 俊の事に興味がないなら見逃してやろうと思ったけどもう許さないわ」


そう言う千鶴の髪は、 さかだっていて金色のオーラのようなものが見えた。

これぞまさしく怒りによって目覚めた伝説の超サ〇ヤ人。


「それと俊。 俊ならあのキスよけられたはずよね?」

「い、 いや。 無理だよ。 それに急なことだったし」

「言い訳なんて聞きたくない!」


千鶴は、 そうヒステリックに叫ぶと周りの人が見てる中俺の処刑を始めた。

処刑の内容は、 あまりに残酷だったのでここでは言わないでおく。

ただ一つ言えることは、 千鶴から逃げないと俺は、 いずれ必ず死ぬ!

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