モテる男は辛いなぁ

ネオン

第1話

俺は高校一年生。

俺、月島つきしま 和真かずまはイケメンでコミュニケーション能力が高くて運動もできる。

さらには、可愛く頭がいい幼馴染みもいる。


つまり、友達が多く、可愛い女の子にモテモテなハーレムで最高の高校生活を送れると言うことだろう。

今まではなぜか一度も恋人ができたことがないから今度こそ…

と思っていた。

ただ、俺は勉強ができないと言う欠点がある。

そこはいつも幼なじみが助けてくれる。

…いつも赤点回避のために勉強を教えていただき大変ありがたく思っています。大変感謝しておりますので、これからもよろしくお願いいたします。


しかし、俺の夢見た高校生活を送ることは叶わなかった。

その原因は、俺はそんなに勉強ができないことだ。学校の先生にここなら入れると言われて入った学校は、なんと、だった。もちろん、幼なじみとは学校が違う。

幼なじみは俺には到底入れないような頭の良い高校に通っている。

一度、その学校の学園祭に行ったことがある。

…可愛い子がいた。

勉強さえ出来れば、きっと夢の高校生活が遅れたのだろうか…

さらに衝撃的なのは、幼なじみに彼氏が出来た。

そのため、勉強を教えてくれる頻度がものすごく減ってしまった。

その結果、俺の成績が緩やかに下がり始めている。

そして、何故か俺はその彼氏に嫉妬している。

もしかすると俺は幼なじみのことが好きだったのかもしれない。

もしかして、俺、失恋した⁉︎


想定外のことばかり起こったが、しかし、俺が夢見てた


“ 友達が多く、可愛い女の子にモテモテなハーレムで最高の高校生活”


は、決して全てがダメになったわけではない。

まず、友達はたくさん出来た。そのおかげで、成績が急激に落ちる事は無かった。楽しい学校生活を送れている。


そして、次が問題だと、俺は思う。

“モテモテ”と言うわけではないが、つい最近同時に2人に告白された。

しかも、俺より背が高く見た目カッコいいと俺より背の少し小さく見た目可愛いに。


あれは、忘れない10月下旬の事だった。

例の2人に告白されたのは。

元々、イケメンの方は高校で最初に仲良くなったやつだ。

ある日、いつも通り、そいつの家で一緒にゲームをしていた。

その日は、なんかそいつの友達が来ると言っていた。どうやら、そいつの幼なじみらしい。

2人でゲームをし始めて少し経つと、チャイムが鳴った。

そこで現れたのが、俺に告白してきたもう1人の可愛いやつだった。

イケメンはそいつを迎えに玄関まで行った。

すると突然、話があるから来て、とイケメンに言われた。

なんだろう?と思い玄関まで行くと

「「俺/僕と付き合ってください」」

と、言われた。


………

………oh


我に帰って絞り出した言葉は

「どうして?」

「「好きだから」」

と、即答された。

「でも…男だし…初対面だし…可愛い女の子好きだし…ね?」

「性別なんて関係ねえよ。人としてかずまのことが好きだ」


ドキッ


イケメンに目を見つめられてすきと言われて一瞬ドキッとしてしまった。不覚。


「確かに初対面だね、でもね、何回か見かけたり、話を聞いたら好きっなっちゃった。これから知って好きになって欲しいです」


かわいい


上目遣いで言われて、つい、可愛いと思ってしまった。不覚(2回目)。


どうすれば良いのだろうか、どうしよう、どうしよう、どうしよう……

考えていると、


「じゃあ、俺らと一緒に行動しよう。…3人で遊ぶとかさ。そうすれば、初対面のこいつとも仲良くなれるだろ?俺ももっと仲良くなれるしな」

「いいね、それなら僕も仲良くなれるよ。かずまくんはいい?」

「まあ、それならいいよ。」

しょうがない、それくらいならまあいいだろう。友達増えるのは嬉しいし。うん。


まあ、そんなこんなで、現在12月、俺と隼人はやと(イケメン)とあゆむ(かわいい)と3人で過ごす時間がとても多くなっている。普通に楽しく過ごせているから別にいいんだけど。

いろいろあったけど、いいのか?

…………まあ、いいか。


隼人と歩は一緒にいるとすごく楽しいし、そのうえ優しい。

成績が下がり始めたことを2人に相談したところ幼なじみのかわりに勉強を教えてくれた。

2人とも頭がいい上に教えるのもうまい。

その結果、俺の成績は徐々に右肩上がりになってきている。

これには、俺の親も喜んでいる。

最初は、最近よく出かけているようだけど何してるの、勉強ちゃんとしてるの、と若干怒った口調で言われていた。

どうせ信じてくれないだろうから、毎日遊んでるわけじゃ無くて、たまに勉強を教えてもらっている事は言わなかったからだ。

しかし、テストの結果と、今まで勉強を2人に教えてもらっていたことを話したら、

「なんで早く言わなかったの。わかってたら怒らなかったのに。ちゃんと、お礼言いなさいよ。」

と、母に言われた。

親を喜ばせられて嬉しかった。

あの2人には感謝しないと。


そして、毎日楽しい。両親は出張とかで忙しくてあんまり家にいない。家にいると1人ぼっちのことが多い。だけど2人が、遊ぼう、と誘ってくれるから最近は1人のことはほとんどない。


というわけで、最近は毎日楽しく過ごせている。


そして、今日は冬休み前、学校最後の日。

今日も、3人で話している。

「そういえば、和真、俺ら冬休み用事あって一緒に遊べないんだ、悪いな」

と、突然隼人に言われた。

「ごめんね、かずま、毎年冬は親の実家に帰らないといけないんだ…」

と、歩にも言われた。

「ああ、そうなんだ。わかった。それはしょうがないよ。」

「お前、1人で寂しくないか?」

と、隼人にからかわれた。歩にも笑われた。

「うるせえ、1人で別に大丈夫だわ!1俺はそんなに子供じゃない」

「ほんとうに?」

「本当だわ!」

まったく、アホなのかなこいつら。


そして、冬休み。

1日目…暇だった、とりあえず課題を終わらせることにした。今までは1人ではあんまり解くことが出来なかったのに、スムーズ解けるところが多かった。あの2人のおかげだな。

2日目…暇だった。漫画でも読んで1日過ごした。勉強は飽きた。

3日目…暇だった。1人だった。親は年末年始の数日しかいないし、幼なじみは、彼氏いるし。1人だった。

4日目…暇だった。つまんない。今までは何日も1人で居ても思わなかったけど、寂しい。今までは、夏休みとかほとんど1人でもなんとも思わなかった。1人が普通だったのに。なんでだろう…。


その後も寂しい日が続いた。年末年始の数日は親がいてなんとも思わなかったが、また仕事に行ってしまうと寂しいという思いが強くなった。幼なじみに連絡しようと思ったが、やめた。幼なじみには彼氏がいる。

1人でいても楽しくない。


なんでだろう。


冬休み最終日の前日、隼人から“明日、3人で遊ぼう”と久しぶりに連絡がきた。どうやら、用事が全て終わったらしい。なぜか、その連絡だけで嬉しかった。


なんでだろう。


冬休み最終日、俺の家に隼人と歩が来た。

「久しぶり、隼人、歩」

「おう、久しぶり。俺たちいなくて寂しかったか?」

「久しぶりだね。寂しかった?」

「寂しいわけねえだろ。早く部屋来い」

「はいはい」

「はーい」

おい、2人とも笑いながら言うなよ。

寂しいって、思ってたの気づかれなかったよな。


久しぶりに3人でゲームして、話して楽しかった。


「和真、話がある。」

と、突然、隼人に真剣な表情で言われた。

それは、まるで俺に告白して来たときの様だった。

「なんだよ、急に。」

「僕たち、前に告白したでしょ。その返事をかずまにききたいなあ、と思ってる」

歩も真剣だ。

「なあ、和真。お前が、俺らのことをどう思っているのか、どうしたいのか、お前の本心を聞かせて欲しい」


俺の…本心、か。どうすればいいんだろう。


「かずまが最近思っていることとかなんでもいいんだよ。そのまま言ってくれれば、悩まなくて大丈夫だよ。」

悩んでいるのを察して、歩が言った。


最近、思ってたこと、そのまま…


「俺は、1人になるのは全然平気だと思ってた。今までは、平気だった。1人でも楽しかった。…けど、最近は、なんか、よくわからないんだけど、楽しくなかった。1人が、ね。つまんなかった。…なんでか、よくわかんなかった。…お前らが、言った通り、寂しかったんだよ!……けど…お前たちから、連絡が来て嬉しかった。…本当に、嬉しかった。今日も楽しかった。3人で、一緒にいるのは楽しい。これからも3人で一緒にいたい。……お前たちの、ことは…好きだ。一緒にいたいよ。だから……どっちかなんて選べない…だから、告白の、返事は、できない…ごめん…」


言ってしまった。寂しかった。楽しかった。嬉しかった。一緒にいたかった。けど、付き合うってことは、どっちかを選ばなきゃいけないんだろう。俺には出来なかった。無理だった。だって3人がいいから。

でも、もう、無理かなぁ。こんな決められないような人となんて一緒なら痛くないよね…

なんか、とっても泣きそうだ。


「ありがとうな、ちゃんと本心言ってくれて」

「ありがとう、嬉しかったよ。その言葉を聞けて」

2人とも、笑顔だ。

「でも、俺は、この前の返事結局できなかったじゃん、なのに、どうして、ありがとう、なんて言うの」

今の自分、女々しいなあ。

でも、なんでだろう。2人には、本心をしっかりと伝えたいと、受け止めて欲しいと、思ってしまう。


「まず、お前は勘違いしている。」

「え?」

「俺らは、どっちかを選べなんて、一言もいってないぞ。」

「は?いや、だって、付き合うって普通2人だろう」

「確かに、普通はそうかもしれないが、俺らは、別に3人でいいと思ってる、最初からな。そうだろ、歩」

「もちろん、だって、3人でいる方が楽しいし、それに、普通なんてどうでもいいよ。だって、かずまは、俺ら2人のこと大好きでしょ?」

「別に、大好きとは、言ってない…ただ、大好きでは無くはない」

流石に恥ずかしくて素直に言えない

「そっか、なら、それでいいよ。別に、かずまを独り占めしたいわけではないから。」

「な、わかっただろう。俺らは3人で構わないんだ。だからさ、」

隼人と歩の2人は顔を見合わせた。


「「俺ら/僕らと付き合ってください」」


2人してそんなに真剣な顔で見つめないで欲しい。


「………はい…。」


顔が赤くなってるのきっとバレてる。

つい俯いてしまった。


「こっち向けよ」

いわゆる、顎クイされた。顔、ちかい。やばい、カッコいい。なぜかいつもよりもカッコよく見える気がする。

「ずるい、ほら、こっち向いて」

顔を下に向けさせられた。いつもは可愛い感じなのに、今はそれ以上にカッコよく感じる。

「いやいや。俺の方を見ろよ」

上。カッコいい。

「いや、僕の方見てよ」

下。カッコ可愛い。

「いや、こっちだ」

上。

「いや…こっちだよ」

いやこっちだ、上。いやこっち、下。上。下。上。下…。

「いや、おまえら、いつまでやってんだよ、離せバカ!」


「よし、今から、俺らは恋人だな!」

「そうだね!」

「っ、そうか。」

「顔赤いぞ。おまえ」

「さらに赤くなってるよ」

ニヤニヤするな。

「うるさいバカ」

「まあまあ、怒んなよ。今まで寂しかっただろう。これからはいつでも構ってあげるからな。ほら、おいで」

やめろ、手を広げるな。

「ほら、おいで。僕も構ってあげるよ。今まで寂しかった分慰めてあげるからね」

こっちもか。

………よし、覚悟を決めた。えいっ。

2人には飛び込んだ。

抱きしめられた。

意外と恥ずかしいぞ、これ。

「もう、離せよ」

「「やだ」」

そこ息ぴったりじゃなくていいわ!


この日、2人は家に泊まった。ちゃんと、親には泊まってくることを伝えてあり、学校の準備もして、鞄とか持って来ていた。

いや、用意よすぎだろう。

俺が、もし断ったらどうしたんだよって聞いたら

「そんときは、そんときだ。それに、お前は、断らないだろうって思ってたしな。」

だってよ。なんかむかつく。こいつらの思い通りになっている気がする。

頭がいいと、こんな事も予想できるのか。


和真は、隼人と歩が2人で、目を合わせて笑っているのを知らない。



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