白昼夢 前

 

 二人は息を切らして質問してくる変質者に躊躇はしたものの了解してくれた。なぜかといえば、偶々彼女らが私の講義に出ていたからだ。二人はおずおずとことの経緯を話してくれた。なぜかといえば、私の専攻とちょっとだけ被っていた話題だったから。


 あの、昨日、サークルの先輩達と……。あ、サークルっていうのは文化活動サークルのことです。私たち、えと、私と彼女とさとみちゃんの三人ともそこに入ってたんですけど。一昨日にそのサークルの一条先輩から連絡があって一緒に郊外の廃墟に行こうって。


「郊外の廃墟って?」

 

 場所は詳しく知らないんですけど、山奥にポツンとある元病院みたいなことを言われました。心霊スポットって言われてるところです。


「じゃあ、多分古根病院のことね。続けて」


 そこでレクリエーションしようって話になって……。私は嫌だったんです。でも、二人が行くっていうから。はあ? 私も行きたくなかったです! でも、さとみは乗り気だったし、うちとは付き合い長いし、それに私幽霊とか信じない人だから。ごめんね。兎に角、そこまで行くことになったんですけど、他に先輩は三人いて、一条先輩と六徳先輩、それから後藤先輩の三人です。三人とも同じ大学の三年生で。……その、正直良くない噂が多い人たちでした。それで、さとみちゃんが乗り気だったから、私たち押されて一緒に行くことに。


「まあ、よくあるダメな大学生ね。続けて」


 で、そのレクリエーションの内容は……。


 茶髪の子はそこで口籠り、小声で何かをボソボソと言う。これでは聞こえない。心無しか表情も曇っているようで、どうもこの話題のそこだけは話したくないというようだった。と、見かねたのか黒髪の子が入れ替わるように口を開いた。


 野郎が本性を出したんですよ。股間で動く犬が心霊スポットを口実に私たちをー……あー……。


「手籠め?」


 それ。手籠めにしようとしてたんです。先輩の車に乗ればビールとかお酒の山で乗った早々お酒を勧められました。私とみゆきは断りましたけど、さとみは飲んで、残り二人、一条と後藤も飲んで、廃墟に着く頃にはもう騒ぎまくりで。でも途中で降りるって言える空気でもないし、多分あの人たち言っても下ろしてくれなかったでしょうね。ていうか言ったらそれこそ襲われたかも。


「ちょっと待って。先輩達はお金持ちだったりするの?」


 え? 金持ちかどうかはわからないですけど、少なくとも六徳パイセンの持ってる大きい車でした。あの、でっかいやつです。


 BMとかかしら? 六人乗れる車を所持。お金持ちなのね。私は先を促した。


 で、ここからがまた最悪で、着いたら廃墟探索を始めることになったんですけどそれが丁度男女三人ずつだったからってことで二人一組で三つに分けようって。しかも先輩達の指名制ですよ。誰が誰を狙ってるのか丸分かりで。マジでクソ。それで私は後藤先輩とさとみは一条先輩と、みゆきは……一番最悪なやつと組むことになったんです。


「六徳先輩ね」





 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る