第5話 行方不明

  澁谷コーチの捜索願が出されたのは、1週間後だった。捜索願を頼んだのはおそらく、澁谷コーチの浮気相手だろう。彼は独身なので、私以外に身近にいる知り合いは少ない。

 あずと澁谷コーチが別荘で練習をしていたことは二人以外に知るものはいなかった。ましてや近くの湖でスケートをするなんて、こちらから言わなければ気づかれる事もない。

 あずは、警察から澁谷コーチとは最後にどこで会ったか聞かれたが、1か月前にスケート場で練習していたのを最後にケガのリハビリと自主練習をしていて彼にはずっと会っていない。連絡もしばらくしていないと伝えた。

 着地に失敗して右足首を痛めたため練習は思うように出来ていないのが事実だった。

 足首の状態を見ながら、あの湖で練習を再開しようという目的で別荘に行ったのだが、あの別荘は、あずの祖父母の所有物で誰にも知られていない場所だった。

 だから、警察も別荘のことを知るのは不可能なのである。

 澁谷コーチにも、別荘については口止めをしていた。

 あずは、新しい代理のコーチを探す方向で動き出していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る