第31話 飛〇御剣流の抜刀術は常に二段構え!!(作戦は常に二段構え)
水の中に入った僕は一本のワイヤーを素早く巻き上げた。
すると、僕が発射したワイヤーに引っかかった風の異能力者が水の中に入ってきた。
僕は風の異能力者が水の中に入ってきたのを確認すると、風の異能力者と僕を繋いでいるワイヤーを切断した。
そして、水球の外にある何かの機械に括り付けたワイヤーを巻き上げ、僕は水球の外に脱出した。
この寒い中、水に濡れるのって割とやばくね?
いやいや、大丈夫だ。動きまくって身体を温めよう。
僕がそう考えていると、風の異能力者が自身を中心に竜巻を起こすことで水球を弾き飛ばしていた。
水の異能力者は水球の中に僕がいないことに驚いている。
僕は近くの機械の陰に隠れて、有本さんから貰った麻酔銃を構える。
水の異能力者はキョロキョロ周りを見て僕を探しているようだ。
そして、水の異能力者がこちらに背を向けたその瞬間、僕は麻酔銃の引き金を引いた。
放たれた銃弾は確実に水の異能力者を捉えた。
麻酔銃の効果は絶大で、水の異能力者は土の異能力者と同じように静かに床に倒れた。
これで、二人…。
あと、一人は…。
その瞬間、僕に向けて風の刃が大量に飛んでくる気がした。
まずいっ!
僕は素早くその場を離れる。
その直後、僕がいた場所に風の刃が飛んできていた。
ふう。やっぱり、この風の異能力者が一番厄介だよな…。
風の刃に竜巻、更には風を使うことで、弾丸の軌道をそらすこともできる。
異能自体はシンプルだが汎用性は高く、威力も高い。
まさに強い異能力者の代表格だ。
だが、隙はある。
風の異能力者は僕の周りに竜巻を発生させようとするが、パーフェクト・ゾーンでそれを読んでいた僕は素早くその場から離れる。
それを見た風の異能力者はいたるところに風の刃を飛ばす。
この風の刃は肉眼で見ることはできないが、僕のパーフェクト・ゾーンなら直感でどこに飛んでくるかなんとなく分かる。
それらを躱して、僕は風の異能力者に接近する。
風の異能力者は焦ったように自分を中心に竜巻を発生させる。
ちっ…。
まあ、いいか。
僕は一旦竜巻から距離を置いた。
この竜巻がある間は、僕も風の異能力者も何もできない。
竜巻が消えた時が勝負。
そして、竜巻が消えたと同時に大きめの風の刃がこちらに飛んでくる。
しかし、それは既に読んでいる。
僕が横っ飛びで攻撃を躱すと、躱した先に風の異能力者が接近してきていた。
そっちから近づいてくれるのはありがたい。
僕は短剣を取り出し、迎え撃つ準備をする。
そして、風に乗ってどんどん加速していく風の異能力者がこちらを風の刃で斬ろうとする。
そのスピードは全力の戦鬼に匹敵するほどのものだったが、僕には相手が僕のどこに攻撃しようとしてくるかが分かっている。
だから、僕は相手の攻撃を躱しながら相手の肌に短剣が当たるように相手の移動ルート上に短剣を添えた。
そして、僕と風の異能力者の身体が交差する。
ハラリ…。
僕のコートの端が落ちる。
ああああああ!!
完璧に避けたつもりだったが、現実は甘くなかった。
僕のお気に入りのコートは無情にも風の異能力者によって斬られてしまったのだった。
だが、コートという重い代償を払い僕は風の異能力者の頬に傷をつけることに成功した。
風の異能力者はコートを斬られ、ショックを受けている僕めがけて再び攻撃を仕掛けようとしてくる。
でも、もう放っておいても問題ない。
何も行動を起こさない僕を風の異能力者が斬ろうとした時、風の異能力者は動きを止めて床に倒れた。
どうやら、全身に毒が回り切ったようだ。
この毒、やっぱり凄いな。
有本さんから貰った、麻痺毒を付与した短剣の効果は抜群だった。
さて、これで終わりだな。
コートという尊い犠牲が生まれたけど、まあ良しとするか。
僕はワイヤーで土、水、風の異能力者を拘束して全員に一日は動けなくなるくらいの麻痺毒を注入しておいた。
「僕の勝ち…ということでいいんだよな?」
僕が未だに呆然としている淫鬼にそう言った。
「え、ええ…。約束通り私たちはもう異能力者を増やさないわ。」
「そうか。なら、僕はもう行く。」
そう言って、僕は人通りがなくなった道を白銀学園に向けて走っていった。
***
<side 贋鬼>
はあ…。やれやれ、淫鬼の我儘には困らされたよ。
おかげで作戦を変更することになってしまった。
「…ふふ。ふふふふふ…。」
淫鬼はシンが走っていった方向を見ながらずっと笑っていた。
「淫鬼、これは君の責任だよ。これからは僕の指示に従ってもらう。」
「ええ。構わないわ。」
ゲームに負けたというのに淫鬼は上機嫌だった。
まあ、気持ちは分からないわけでもない。
僕も少しシンの戦いには高揚してしまった。
異能力者相手に一切怖気づくことなく三人を完封して見せたあの力。
やっぱり、彼は本物だった。
その辺の力を求めるだけの有象無象とは違う。力を自分で手にして、それを使って格上である僕らに噛みついてくる。
常に対等の敵を求めている僕たち八鬼神にとって彼は本当に魅力的な存在だろう。
「…ねえ、贋鬼。この戦いが終わったら、しばらく私はフリーで動かしてもらっていいかしら?」
「それはボスが決めることさ。」
「だから、ボスと話をする時に手助けして欲しいのよ。」
「それはできない相談だな。大方、シンを自分のものにするために行動したいんだろうが、僕ら八鬼神にはまだまだやらなくちゃいけないことがある。交渉したければ、一人でしてくれよ。」
それに、僕もシンをこの女の下僕にされるのは少し気分が悪いからね。
「ちっ。まあ、いいわ。今回の作戦が上手くいけばボスも多少は許容してくれるでしょ。」
「そうかもね。それじゃ、次の作戦に進もうか。
僕がリバーシに所属している異能力者の一人に声をかける。
「はっ。お呼びでしょうか、贋鬼様。」
「うん。君は白銀学園に言って、重要人物や原石たちを襲撃してきてくれ。」
「かしこまりました!」
そう言って、炎人は白銀学園へと向かっていった。
「さて、じゃあ淫鬼。後は任せたよ。」
「ええ。任せて頂戴。むしろ、こっちの作戦の方が私にとっては都合がいいわ。」
そう言ってから、淫鬼はスーツに着替えると白銀学園の方に歩いて行った。
さてと、じゃあ僕は僕の仕事をしようか。
僕は携帯を取り出して、ある男に電話をかけた。
「もしもし?今大丈夫かい?」
『ああ、別にいいぞ。』
「白銀学園がどこに原石や重要人物たちを隠しているか分かるかい?」
『ああ。恐らく地下室だ。白銀学園の中にある大きな地下室に全員隠れている。入り口は関係者にしか分からないみたいだが、場所さえ分かればどうにかできるんだろう?』
「うん。じゃあ、場所とあと警備体制についても教えてくれるかい?」
『場所についてはメールで送っておこう。警備体制は大したものじゃない。異能力者は全員外で君らの異能力者もどきの相手に必死で地下室までは守れていない。』
「んー。了解。また、よろしくね?」
『機会があればな。』
ツー。ツー。
そう言って、男は電話を切った。
ピロン。
どうやら先ほどの人物からメールが送られてきたようだ。
これで、地下室の場所は分かった。
偽物だけど彼はやっぱり役に立つね…。
まだ利用価値もあるし、放っておいても問題ないだろう。
さて、じゃあ始めようか。
僕は無線機を使い戦鬼と淫鬼と炎人にメッセージを飛ばした。
「目的の場所が分かった。僕が合図を出したら、戦鬼は白銀学園の体育館の地面に向けて例のやつを撃ち込んでくれ。それが、作戦開始の合図だ。」
さてさて、シンに日本の異能力者たちはこれから起きることにどんな反応するかな?
***
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