アルセーヌ・ルパンの帰還

 オスマン大通りと並行しているラ・ボーム通り。そこにある小さな一戸建ての家から出て来たパトリシアは目の前に停まっているロールス・ロイスへと乗り込んだ。

 運転手は見知らぬ若い男であったが、その事に関して特に不安を覚える事はなかった。

 監視付きの軟禁生活は退屈ではあったが、邸内では自由行動が許されており、これといった不都合は感じなかった。二人の召使アルベールとジョセフは職務に忠実でパトリシアに不快感を与える事は無かったし、執事のベルトーによればロドルフも無事に保護されたそうであった。執事や召使のふりをしている彼らが一体何者かは判らなかったが、少なくとも約束の日までは危害を加える気が無い事は何となく感じられる。だからベルトーに勧められるまま、ダブルメニル伯爵令嬢の婚約パーティーへ参加する事にしたのである。

 建物の外へ出て最初に驚いたのは、ここがフランスである事だった。ベルトー達はイギリス英語を話す為、誘拐され乗せられた船が着いた先はイギリスだとばかり思い込んでいた。車窓を流れ行く景色を見ながら、フランスでの知り合いであるセイラー公爵やベシュ巡査部長の姿を探す。当然ながら彼らに邂逅する様な都合の良い偶然は無く、車はまもなくダブルメニル伯爵邸へと到着した。

 運転手が黙って後部ドアを開けてパトリシアへ降車を促す。

 フランス社交界の儀礼など知る由もないパトリシアは大いに不安を抱いていたが「旅の恥は掻き捨て」とばかりに覚悟を決めて、伯爵邸内へと歩みを進めて行った。

 用意して貰った流行のドレスを身に付けたパトリシアはすぐに来客の衆目を集め、屋敷の主人への挨拶を行う前に数人の若者によってロビーで足止めされてしまった。

 「初めましてマドモアゼル。一言御挨拶させていただいて宜しいでしょうか? 私の名前はジャック・ド・ブリザイユ。伯爵令嬢の婚約者ジョルジュの友人です」

 「私の名前はアンリ・グレクール。今、世間で話題になっております〈窃盗史〉は私の執筆作品です。あなたの心を盗む手段も是非研究してみたいですね」

 「私はジャン・ド・ファロワズ。飛行船の操縦士です。〈ハイ〉な状態になりたければ、いつでもお声掛け下さい」

 「私はベルジュ・グラベレット。フェンシングをしております。私に一突きされたら二度と離れられなくなりますよ」

 「やめろよ、ベルジェ」

 若者たちは下品な友人を非難しながらも楽しげに笑い合っている。

 (全く! フランスの男たちときたら!)

 パトリシアは内心憤慨しながらも、極めて上品な笑顔を浮かべながら応対した。

 「まあ、素敵な紳士の皆様に囲まれて私は幸せですわ! 出来ればどなたか私をダブルメニル伯爵の元へとエスコートして下さると嬉しいのですけれども」

 「お安い御用です。参りましょう!」

 グラベレットが手を差し出すが、パトリシアはそれを無視してブリザイユの後に従った。

 面目を潰されたグラベレットをグレクールとファロワズが慰める。

 「なっ、だからその挨拶はやめろって言っているじゃないか──」


 ブリザイユたちに先導されて応接間へと向かったパトリシアではあったが、室内では伯爵令嬢と彼女の母親が来賓の相手をしており、伯爵と令嬢の婚約者の姿は無かった。

 会話の中心にいる令嬢たちへと近づくきっかけを掴めず、ブリザイユたちはパトリシアを連れて応接間を後にした。

 「伯爵令嬢であるジェルメーヌは私の幼馴染でして、平素であればあの高貴な方々の輪に割り込んででもあなたを御紹介したかったのですが──実は大変申し上げにくいのですが、今日は彼女を少々怒らせてしまっておりまして」

 廊下へ出た途端にブリザイユが言い訳をする。

 「ああ、解かりますわ。察するに貴方のお友達が彼女の綺麗に着飾った友人方に御挨拶をしたのが原因ではないかしら?」

 パトリシアの返事を聴いて、ブリザイユは目を丸くした。

 「凄いですね! どうして解かったのです?」

 「──女ですから」

 パトリシアは恥ずかしげに俯くグラベレット達を見回すとエスコートを続けてくれるよう、身振りで促した。


 伯爵の書斎の扉をノックすると、若く着飾った男性が顔を覗かせた。

 「なんだ、君たちか」

 友人たちの姿を認めたジョルジュ・シャンドン・ジェロは「大事な話をしているから」と断って扉を閉めようとした。すると部屋の奥から張りのある低音の声が呼び掛けて来る。

 「もしかしてアンリもいるのかな? 少し彼の意見も聴いてみたい。入って貰いなさい」

 婿養子となるジョルジュの友人たちを部屋へと招き入れたダブルメニル伯爵は、そこで初めて見知らぬ女性が同行している事に気づいた。

 「これはこれは。遂に独身貴族四人組にも春が訪れたという事かな?」

 パトリシアは伯爵の前へと進み出るとアメリカ流に手を差し出して握手を求めた。

 「パトリシア・ジョンストンです。シカゴから誘拐されて来ました」

 彼女の言葉に一瞬その場の空気が凍りついた。だが、すぐに伯爵の笑い声がそれを打ち破る。

 「ハハハッ! 最近は御婦人方の間ではそんな冗談が流行っているのですかな?」

 差し出された手を握り返すと、伯爵は部屋の奥にあるソファへ座っている人物に向かって呼び掛けた。

 「あなたもマントの町から誘拐されたのですよね、ビクトワール?」

 伯爵に声を掛けられた老婦人がソファから立ち上がって部屋の入り口近くに立っている若者たちへと顔を向けた。

 「皆様、婆にお構いなく。どうせ何処で生きようが人間は本当の自由なんて手に入れる事は出来ないのですからね。今はここに居るように言われて座っているだけ。坊やが迎えに来たら新しい家への引っ越しが待っていますから。そりゃ慣れるってものですよ」

 老婦人は頑固で偏屈気味な言葉とは裏腹に、慈愛に満ち溢れた表情を浮かべている。

 「ビクトワール? もしかしてルパンの乳母の〈忠実なビクトワール〉ですか!」

 興奮の余りにグレクールが彼女の元へと近づいて行く。彼の友人たちもぞろぞろと後に続き室内にはビクトワールを中心とした輪が出来ていた。

 「若い時はこういうのも嬉しかったけれど、もうこの齢だからねえ。男性方に囲まれるのにはもう飽き飽きですよ」

 ビクトワールはウンザリとした態度を示しながら元のソファへと座った。

 「──と言うことだ。少し落ち着きなさい」

 伯爵は相好を崩しながら身振りで若者たちへ彼女から離れるように指示をするとビクトワールの正面に置かれているソファへと腰を下ろした。

 「さて。皆、新聞くらい目を通しているのだろう?」

 伯爵がそう言いながら周囲に立つ若者たちを見回すと、代表してブリザイユが答えた。

 「勿論です。『レコー・ド・パリ』を購読しております」

 「では知らなくても無理はない。私は『ル・マタン』を読んだのだ。そこには不届き者の〈アルセーヌ・ルパン〉からの脅迫文が掲載されておるのだ」

 「ルパンからの脅迫状ですって? それなら『レコー・ド・パリ』にも載っていましたよ! あれは連載記事の予告だったのではないのですか?」

 驚くブリザイユの横でファロワズも賛同する。

 「私は『フィガロ』でその記事を見ました! しかしルパンはとっくに引退しているではありませんか? 誰だって真に受けたりしませんよ」

 「おやおや! 私は『ル・ゴーロワ』で見たよ! パリの主要紙全てに広告を出すなんて相当な経費が掛かっていますね!」

 グラベレットが茶化すが、グレクールだけは真剣な表情を浮かべていた。

 「『ル・ジュルナル』にも載っていた。いよいよこいつは本当の犯行予告かも知れないぞ」

 「記事の内容を覚えているかい? いいよ、ここに『ル・プチ・ジュルナル』がある。私が読み上げてみよう」

 ジョルジュがテーブルの上に置かれていた新聞を取り上げ、該当の紙面を開いた。

 『大統領閣下、私が国を思う気持ちは紛れもなく純粋な物であります。それ故に先日のボンペイ会議でインド王から贈られたエメラルドの宝冠の行く末が心配なのです。もしこの宝冠がルーブル国立美術館に展示されたら、心無い者に盗まれてしまうのではないかと、その事ばかりが気がかりで落ち着いて夜も眠れず昼寝をしております。そこで、この貴重な宝冠を私がお預かりするべきだと思い立ったのです! 数日中にお伺い致しますので、インドから戻られた外交官と書記官の方へ宜しくお伝え下さい──アルセーヌ・ルパン』

 「何ともふざけた犯行予告ですね! おや? これが作り話で無いとしたらここで言及されているボンベイ会議に出席した外交官と書記官とは──」

 気がついたブリザイユが伯爵とジョルジュを見ると、伯爵が嘆息しながら答えた。

 「その通り。インド王から宝冠を預かったのは私たちなのだよ。当然、宝冠は誰にも見つからないように隠してある。宝冠の存在は国家間の機密で、ルーブルでのお披露目まで関係者以外は知る由も無かったはずなのだ。こうなっては仕方がない。婚約パーティーが終わり次第パリ市警の警護の元、宝冠をルーブルへ移送する事にする」

 「しかしながら、先程から申し上げている通り、それこそが奴の狙いだという気がするのです! もし本当に宝冠が欲しいのならば予告などせずに黙って盗めば良いのです。それをせずに喧伝すると言う事は必ず何かの意図があるはずです」

 伯爵の考えにジョルジュが反対意見を述べる。

 「君の意見はもっともだ。かと言って何もせずに我が屋敷へ置いておき、盗まれてしまっては面目が立たない。だからこそイギリスの友人へ相談して、ルパンを最も良く知る人物を連れて来て貰ったという訳だ」

 「いかがですか、ビクトワール。そろそろ貴方の御意見を伺いたいのですが──」

 ジョルジュから懇願されてビクトワールがようやく重い口を開いた。

 「私に一体何を期待しているのか知りませんけどね。あの子の考えている事は幾つになっても解かりませんよ。引退すると言っては悪さを繰り返して「これこそが生き甲斐だ!」とうそぶくような子だからねぇ。最近は顔も見せないけど一体何をしているのやら──」

 「最近の彼はある事件を追っていますわ」

 突然、ビクトワールの言葉を引き取って話し出したパトリシアへと皆が驚いて注視した。

 「あら、ごめんなさい! でも私の方が最近の彼の動向を知っているように思いましたので──」

 「彼って──アルセーヌ・ルパンの事?」

 グレクールが興味津々な様子を隠さずに問いかけた。

 「ええ。シカゴで一旦は彼に助けて貰いましたわ。その後どうなったかは知りませんけど、私が生きているという事は彼も無事だと思います。やられっぱなしを良しとしない性格ですから、今頃は仕返しする為の算段を立てている事でしょうね」

 「仕返しとは、私たちが一体何をしたと言うのだね?」

 困惑を示す伯爵をビクトワールが窘める。

 「そこのお嬢さんが言いたいのはそういう話ではありませんよ。どうやら今あの子は忙しい様ですから、エメラルドの宝冠には興味が無いという事でしょうね」

 「興味が無いって? だったら何故、新聞各紙に犯行予告なんか──」

 言い掛けたジョルジュが途中で気が付いて言葉を止める。

 「ルパンの名を騙った何者かの仕業か」

 グレクールが納得したかの様に頷いた。

 「なるほど。犯人はこの屋敷の何処に宝冠が隠されているのかも知らないし、盗み出す手段すら無いんだ。だから伯爵の不安を煽る為にわざと騒ぎ立て、宝冠の移送途中を狙って奪い取るつもりなんだな」

 ブリザイユがそう結論付けると皆、得心が行ったとばかりに頷いた。

 「いやはや、やたらと騒ぎ立てて申し訳なかった。パトリシア、ビクトワール、あなた方の助言のおかげです。どうか今日はごゆっくりとパーティーを楽しんで帰って下さい」

 伯爵は立ち上がって目の前に座るビクトワールへと手を差し伸べた。

 その姿を見上げたビクトワールは出来損ないの子供を見る様な顔をしながら首を振った。

 「やれやれ。みんな素直な良い子だね」

 「どういう意味です?」

 握手を拒否された伯爵が不機嫌な表情を隠そうともせずに問い返した。

 「考えても御覧なさい。この家から盗む事も出来ない様な犯人が、警察に保護された状態の貴重品を盗む事が出来ると思いますか?」

 「まあ、そう言われれば確かに」

 老婦人の指摘にジョルジュが頷く。

 「最近の若い子たちはどうか知らないけれど、昔は一番恋しい殿方にはあえて近づかなかったのよ。その方の友人と友達になって、そこから段々と距離を縮めて行くの」

 「まあ! ビクトワールったら、意外と恋愛上手なのね」

 唐突なビクトワールの告白をパトリシアが面白がって茶化した。

 その言葉に対して老婦人が眉を顰める。

 「意外と? まあいいわ──要は私が言いたかったのは、相手の言葉や行動を額面通り受け取らないようにしなさい、と言う事よ。宝冠を手に入れたいのに「宝冠が欲しい!」なんて大声で叫んだら警戒されて当然でしょうから」

 「待って下さい。つまりどういう事ですか?」

 ビクトワールの言葉を呑み込めない伯爵は動揺を隠せずに問いかけた。

 「まだ解からないのかい? 宝冠もルパンも全てが囮だって事よ! 新聞へ一斉に記事を掲載したのはあんたたちに見逃されない為。そこまでした理由として考えられるのは、今日の婚約パーティーへ間に合わせる必要があったからだろうね」

 「パーティーへ間に合わせる、ですって?」

 「そうよ──予告をしました、警戒します、宝冠は無事でした、でも別の物が盗まれました、おのれルパンの仕業か! となるでしょうね。犯人は本職の盗賊では無さそうですから、客人が屋敷内を自由に行き来しているパーティーならば盗人が特定される可能性が低いと考えたのでしょうよ」

 「では犯人は一体何を盗むつもりなのですか? 断言しますがこの婚約パーティーへ招待した方々は皆、昔からの友人知人で有り、資産や名声を保持しています。金庫に仕舞ってあるような貴重品ならいざ知らず、室内に飾られている程度の調度品を欲する様な俗物はいない、と断言出来ますよ!」

 招待客を疑われた伯爵は、半ば憤慨しながら抗議した。

 「それについては一つ考えている事があるわ。例えば──ジョルジュ、上着のポケットに手を入れてみて」

 ビクトワールの指摘を面白がったジョルジュは笑みを浮かべながらポケットへと手を入れるが、次の瞬間その表情が凍りついたかの様に固まった。

 「どうしたんだい? まさか君が犯人だとでも言う気ではないだろうね?」

 グレクールが茶化すと、ジョルジュはゆっくりとポケットに入っていた物を取り出した。

 「翡翠の首飾り! それは私が妻へと贈った物ではないか! どうして君が?」

 驚いた伯爵がジョルジュの手の中から首飾りを奪い返した。

 「パーティーはお開きだ! 娘との婚約は考え直させて貰おう!」

 怒り狂う伯爵は書記官の弁解に耳を貸そうともしなかった。

 「──と、まあこうなる訳ですよ」

 立ち上がったビクトワールが伯爵へ落ち着くように促した。しばらく同じ場所をグルグルと歩き回っていた伯爵は気を静めると、元のソファへとドカッと腰を落とした。

 「あなたは何もかも知っているようだ。説明して下さい」

 「そんなに多くは知りませんよ。何と言ってもあなた方とは今日初めて会った訳ですからね。でも、このお話は簡単ですよ。ルパンに盗まれなかった宝冠、代わりに盗まれた首飾り、当初はルパンの犯行だと思われるも伯爵令嬢の婚約者の部屋から発見され、婚約解消に至る──ほら、目的はハッキリとしているでしょうが」

 「婚約解消させる為にこんなに大掛かりな事を仕組んだって訳ですか?」

 ビクトワールが導き出した結論にパトリシアが呆れた声を上げる。

 「ええ、宝冠の話を持ち出したのは伯爵とジョルジュの注意を逸らす為、ルパンを名乗ったのはジョルジュに逃げ道を与える為ですよ。もしこれがルパンと関係なくジョルジュが盗んだ事になったら、彼は言い訳一つ出来ませんからね。ルパンという存在が彼をグレーにしてくれるという訳ですよ」

 それまで歯を食いしばり拳を握りしめて黙って聴いていたジョルジュであったが、キッと顔を上げると友人を糾弾した。

 「君なんだろう、ジャック! 幼き日から君とジェルメーヌが想いを寄せ合っていたのは知っていたんだ! 親友だと思っていたのに──」

 ジョルジュの言葉に驚いたブリザイユが反論する。

 「やめてくれ、ジョルジュ! 私たちの友情を疑うのか? 私は君ならジェルメーヌを幸せに出来ると信じて身を引いたんだぞ!」

 「では気が変わったのか? 男らしく正面から挑んで来るべきじゃないか!」

 「──はい、そこまで」

 言い争う二人の間にビクトワールが割って入った。

 「二人の会話から察するに、この婚約を決めたのはあなたなのでしょう? 伯爵」

 「そうです。娘はジョルジュと親しかったし、私も書記官としての彼に全幅の信頼を置いていましたから──」

 「それがそもそもの間違いよ。さっきの私の話を聴いていましたか? 考えて御覧なさい。ジャックは宝冠の事を知る立場にありましたか?」

 「いや──」

 「訊き方を変えましょうかね。今日のパーティーの参加者の中で宝冠の存在を知っているのは誰ですか?」

 「私とジョルジュ、それから──いいや、そんなはずはない!」

 自らが導き出した推論を拒否するかの様に、伯爵は頭を抱えながら項垂れた。

 「ジョルジュもジャックも首飾りを持ち出す事は出来ませんよ。娘想いの奥様ですね。これこそが夫の顔を潰さずに婚約を解消できる唯一の手段だと思ったのでしょうよ」

 ビクトワールはそう結論を告げると、皆に伯爵を残して部屋から出るように促した。


 「私たちはどうしたら良いのでしょう?」

 書斎から廊下へと出たところで、ジョルジュとブリザイユが肩を並べてビクトワールへと助言を求めた。

 「若いのだから話し合いなさい! お互いに譲り合っているから周りが勘違いするのよ。この齢になると好きなら好きだと早めに言っておかないと、明日また会えるかも判らないからねぇ。まあ、あの子は「年寄りの恋愛なんて気持ち悪い」と言うけど、感情を殺して後悔するよりも、想いを吐き出し結果を受け入れ先に進んだ方が良いとは思わないかい?」

 老婦人の言葉を聴いた二人は神妙に頭を下げ、連れ立って応接間へと向かって行った。

 彼らの友人たちも居なくなると、パトリシアはビクトワールを褒め称えた。

 「素晴らしい名探偵っぷりでしたわ!」

 「探偵だって? 私が? じゃあ次はアルセーヌ・ルパンでも捕まえようかね」

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